イスラエルが開発したIron Beam=レーザー兵器は有効性が高く迎撃コストも低いと評価されているが、実際には地上の大気条件に起因する問題に直面しており、Elbit Systemsは「イスラエル空軍向けに航空機搭載レーザー兵器を開発する」「これで地上の課題のいくつかを克服できる」と発表した。
参考:Israel to mount lasers on fighter jets and helicopters
有効性が高く迎撃コストも低いと言われるIron Beamだが、実際には地上の大気条件に起因するいくつかの障害に直面している
イスラエル国防省は2020年8月「弾道コースで飛翔する脅威、対戦車ミサイル、小型航空機を迎撃するための高出力レーザー開発を可能にするブレイクスルーを達成した」「この画期的な成果を受けて国防省はRafaelやElbit Systemsと共同で高出力レーザーのデモンストレーター開発を開始する」と発表。
מפא”ת במשרד הביטחון, חיל האוויר וחברת רפאל חושפים: במהלך מלחמת ׳חרבות ברזל׳ בוצעו לראשונה עשרות יירוטים בעזרת מערכות הלייזר.
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— משרד הביטחון (@MoDIsrael) May 28, 2025
このシステムは「Iron Beam」と呼ばれており、2022年4月のテストでドローン、ロケット弾、迫撃砲弾、対戦車ミサイルを迎撃することに成功、当時のベネット首相は「年内にIron Beamを配備する」と述べ、国防省とRafaelは2023年10月に始まったハマスとの戦争中「ロケット弾の集中砲火下でテストするためのガザ地区と南部国境地域にIron Beamを配備する」と明かしたが効果は不明で、国防省は2025年5月「高出力レーザーを使用して敵の脅威を破壊することに成功した」「今回配備されたレーザーシステムはRafaelの製品で、より強力なIron Beamシステムを補完するものになり、今年中に国防軍へ引き渡される予定だ」と発表した。
イスラエルメディアは「2024年に空軍は新型レーザーシステムを使用して敵が発射したドローン数十機を迎撃したと国防省が明かした」「この戦闘で使用された新しいシステムはIron Beamの低出力版だった」と報じ、War Zoneは「Iron Beamと低出力版の違いは不明」「最終形態のIron Beamはトレーラーに搭載され、過去の報道では100kW~150kWの固体レーザーを発射すると説明されていた」「防空用のレーザー開発と配備は多くの国にとって長年の課題だった」「従来システムと比較してレーザーの利点は明白だ」と指摘したが、レーザー兵器には技術的限界があるため従来の防空システムを置き換える存在にはなれない。

出典:Israel Ministry of Defense
レーザー兵器の連続照射能力は発生する熱を冷却しなければならないため制限があり、さらに分厚い雲や悪天候下では設計通りの性能を発揮できず、このプログラムを主導しているロテム准将も「レーザーシステムは電源に接続している間は弾切れを起こす心配はないものの撃ち落とせるのは目視できる標的だけ」と述べているため、War Zoneも「この種のレーザーシステムは拠点防衛向きの兵器で、射程も短いため広範囲をカバーするには複数のシステムが必要になる」「そのためIron BeamはIron Domeなどの既存システムを置き換えるものではない」「従来システムの能力を補完するシステムだ」と指摘している。
さらに問題なのは「脅威と実際に向き合う兵士がレーザー兵器を信頼するかどうか」で、米陸軍もパレット化された10kWのシステム、小型戦術車輌に搭載された20kW~30kWのシステム、ストライカーベースの短距離防空システム=M-SHORADに搭載された50kWのシステムなど様々なプロトタイプ(計11種類)を開発し、運用試験を通じて「1回あたりの迎撃コストが極めて安価だ」と実証され、軍上層部は「弾薬補充が不要な夢の兵器だ」と喜んでいるが、実際の脅威と対峙する兵士らはレーザー兵器を信頼していない。

出典:U.S. Army photo by Venetia Gonzales
米陸軍がテストしたレーザー兵器も「有効射程の短さ」「故障率の高さ」「大気の状態に左右される効果」「クリーンルームが要求されるメンテナンス環境」など幾つもの課題を抱えており、2024年夏の運用試験でM-SHORADを操作する兵士は「50kWのレーザーシステム」と「小型ミサイル」を駆使して脅威を迎撃したが、兵士は迎撃手段に「実績があるミサイルを好む」と判明し、陸軍早期能力重要技術室のラッシュ中将は「レーザー兵器の価値を真に判断するのはコンソールの後ろに座っている二等兵やスペシャリストだ」「彼らが多層式防衛シールドの一部としてレーザー兵器を認めるかが重要だ」と述べた。
レーザー兵器は出力、射程、大気の状態で得られる効果が変化し、この課題をもっとシンプルに解決する方法は「目標への接近」だが、ラッシュ中将は「このアプローチは人気がない」「仮に目標へ接近しても『レーザー兵器に頼る自信』がなければ意味がない」「この課題をカバーするのは無人車輌=UGVかもしれない」「UGVにレーザー兵器を搭載して前線近くに配備すればレーザー兵器の射程を拡張するのに費やす莫大な費用が不要になり、兵士は安全な後方からUGVに搭載されたレーザー兵器を操作でき、効果が劣化する射程距離も短くできる」と指摘している。
イスラエルや米国以外でも「レーザー兵器が完成した」「テストで良好な結果を収めた」「もうすぐ実用化できる」というニュースが幾つも登場しているが、レーザー兵器関連の技術が成熟して信頼性を獲得するには時間と結果が必要で、仮にレーザー兵器が信頼できる迎撃手段と認知されても「特性上の課題」があるため、レーザー兵器が短距離防空の主役になるかは何とも言えず、現段階では「多層式防衛シールドを補完・強化する一手段に過ぎない」といったところだろう。
Elbit Systemsのベザレル・マクリス最高経営責任者も2025年の決算発表の中で「イスラエル空軍向けに戦闘機やヘリコプターに搭載するレーザー兵器を開発する」「これを空中配備することで天候、粉塵、大気の乱れといった地上の課題のいくつかを克服できる」「雲の上を飛行することでより長い射程を確保して効果を高め、国境からはるか遠くの脅威を排除することも可能になる」「この技術を航空機に搭載するための必要なエンジニアリング作業は進んだ段階にある」「このソリューションが成熟し運用可能になれば各国がスウォームやその他の脅威を無力化する手法においてブレークスルーになると確信している」と言及。

出典:Lockheed Martin
戦闘機やヘリコプターに搭載するレーザー兵器の技術的詳細や具体的な開発スケジュールについては言及しなかったものの、Defense Newsは「有効性が高く迎撃コストも低いと言われるIron Beamだが、実際には地上の大気条件に起因するいくつかの障害に直面している」と指摘し、まだまだ実用に耐えうるレーザー兵器の登場には相当な時間がかかる。
ちなみに艦艇搭載型のレーザー兵器についても不吉な戦訓がある。米海軍は2023年11月以降、フーシ派が発射するイラン製無人機から紅海を航行する船舶を保護するため高価な迎撃ミサイルを使用したため、ハドソン研究所のブライアン・クラーク氏「紅海作戦は高価な兵器システムに依存している米海軍に持続可能性の面でストレスをもたらすだろう」と指摘。

出典:Photo by Petty Officer 1st Class Ryan Seelbach
“米海軍が紅海で実施している作戦はSM-2の在庫を消耗させるだろう。海軍の艦艇には127mm砲、CIWS、ESSM、SeaRAMといった安価な迎撃手段も搭載されているが、これによる対処は射程距離がSM-2よりも短いため高価なプラットフォームと乗組員にとって大きなリスクが伴う。海軍の多層式防衛に対する概念や『できるだけ遠くから脅威を排除したいという願望』を考えれば、SM-2以外の迎撃オプションを選択する可能性は低い”
“艦艇は将来的に現在よりも多くの脅威と対峙する可能性が高く、これへの対処能力は「安価な攻撃手段の登場に関連した迎撃コスト」と「艦艇の物理的なサイズと洋上で再装填できない垂直発射システムセルに関連した弾庫容量」の問題に直面し、もはや高価な迎撃手段だけではどうにもならない”

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Aaron Lau
艦艇搭載型のレーザー兵器が実用化したところで「有効射程の短さ」と「大気の状態に左右される効果」に悩まされることに違いはなく、さらに高価な艦艇はレーダーアレイや通信アンテナが損傷するだけでプラットフォームとしての能力が大幅に低下する脆弱性を抱えているため、SM-2での迎撃を捨てて艦艇の最終防衛ラインまで無人機を引き付けて迎撃するという選択肢はリスクが高いので、レーザー兵器を艦艇の弾薬庫問題を解決する夢の兵器だと考えない方がいいだろう。
レーザー兵器はカウンタードローン対策の短期的な解決策にはならない可能性が高く、どれだけ楽観的に見ても現行の短距離防空システムを補助する手段の1つに過ぎず、艦艇の弾薬庫問題もレーザー兵器で解決するとは到底思えないが、それでも中長期的に何らかのブレークスルーを達成すれば夢の兵器になるかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:Israeli Air Force





















雨・雪・曇り、湿度・砂(砂漠のため)などがどういった影響を及ぼすのかなと。
攻撃型無人機への対抗手段として、安価に迎撃出来る事は素晴らしいことですから、(射程含めて)メリット・デメリットを考慮して組み合わせていくのでしょうね。
ドローンの表面を、鏡張りにしたり、鏡面仕上げやミラー加工にしてレーザー反射させられたらどうすんの?
それこそ大戦機のジュラルミンやアルミのベアメタルとか跳ね返されるでしょ。
これの開発にどれだけ莫大な資金をつぎ込まれてるのかしらないし、対艦船とか対ミサイルならまだしも、安価で小型の無人機ドローンくらいなら表面のレーザー反射加工の施工とかされて安価で簡単に対策とられそうだけど…。
雨も気になるけど、あの辺は砂漠の乾燥地帯だからあんま気にしなくていいのかもね。
効果が皆無とはいいませんが、反射率99%でも鏡面加工が即劣化して突破されるのでうまく言っても1,2秒とかでしょう
そもそも波長が合わなければなんの意味もありません
鏡面にするとステルス性は犠牲になりそうですけど。
それに動画とか見る限り、本体よりプロペラとか繋ぎ目が破損して落ちているように見えます。
鏡面加工でどれぐらい効果があるか不明ですね。
しかしそれより冬の日本海側では連日雨か雪ばかりなので、レーザーがあまり届かなさそうなのが気になります。
ドローン側の新たな加工工程が増える事で価格が上がる。これが一番のレーザーの効果かもしれません。
>UGVにレーザー兵器を搭載して前線近くに配備
そうすると、レーザー兵器を捨て石に出来るぐらい安価に出来ないと、完全にコスト負けする気ががが…
いくらレーザー兵器の能力が上がっても、「SM-2で遠くで安全に処理したい」精神の克服は難しいのでは。
日本ならモッタイナイ精神でどうにかなるかもw。
マブラヴだったかな?レーザー使う飛翔体絶対撃墜するエイリアン?がいましたが、あれの設定で地球は丸いから地面が凹凸がないと仮定した場合、10キロ圏内?に飛行状態で侵入できないという設定がありましたが、あれを思い出しました。
減衰は無視したとして、光源の位置が上がれば上がるほど射程は伸びるので、航空機に搭載するというのは射程に対する解決策なのでしょう。重力偏向で曲げれば地表をはわせられますが、向こう100年できそうもないので、光学兵器も分散シューティングが当面の間最適解になるのかな、と思いました。
<『できるだけ遠くから脅威を排除したいという願望』に屈するのか
よし精神力を鍛えよう
兵器の射程は有限であるが、精神力は無限である!
まあ実際、飛行機に大出力レーザーを載せて、天候の影響も無く空気も薄い航空に持っていくABL計画はとても筋が良かったんですよね。弗化水素放出しちゃう以外は。
新技術なんてものが成熟するまでは10年単位の時間が掛かるものなので長い目で見ましょうと個人的には考えます
今でこそ多大な信頼を得ているミサイルであってもベトナム戦争の頃の一世代、二世代型は戦果があるとの同じくらい問題も山積みでしたからね
寧ろ実用化直後に実戦投入の機会が得られ問題点がすぐに発覚したというのは今後のレーザー兵器開発には明るい展望かと思います
そう考えると、日本が開発している40㎜レールガンは、弾の精密加工が可能、出力制御が火薬と違い安定、という狙撃砲として使える特性があるので、良い選択をしたと言えそうですね。弾幕を張る必要がない、弾倉にあるのはサボ付弾体だけで、搭載量も多くできると良い事が多い。イスラエルがアイアンビームを配備した時にはついにこの時が来たのかと喜んだものでしたが。まだまだ実体弾の時代は続くということでしょう。