中東アフリカ関連

イスラエル国防軍、米英仏独伊を招待してUAVを主体とした世界初の軍事演習を実施

無人航空機(UAV)は他の戦力のオマケや脇役といった地位から脱しつつあり、遂に世界で初めてUAVを演習の主体に据えた国際演習「ブルーガーディアン」が実施された。

参考:Israeli Air Force international Blue Guardian drone drill comes to a close

将来的にイスラエルはUAVを主体とした演習の中心地になるかもしれない

イスラエル国防軍によれば空軍が運用する航空機の総飛行時間に占める無人航空機(UAV)の割合は80%に達して中心的な役割を果たしているのだが、UAVを使用した戦術は益々複雑で高度なものに進化を遂げているのにイスラエルからUAVを購入した国は訓練が不十分で「国際な共同演習を通じて経験や運用知識を共有する必要性がある」と痛感、そこでUAVを主体とした世界初の国際演習「ブルーガーディアン」を開催したと説明している。

この演習には米空軍とイタリア空軍からUAVオペレーターが2チーム、英空軍、フランス空軍、ドイツ空軍から1チームがイスラエル中部のパルマヒム空軍基地に集結、イスラエル空軍の指導を受けて1週間で「ヘルメス450」の運用方法を習得して複雑で高度な訓練シナリオやUAVと有人プラットフォーム(F-16、AH-64、UH-60など)の連携訓練に挑み実践的なUAV戦術の腕を磨いたらしいのだが、これまで脇役だった無人航空機が軍事演習の主体として扱われ始めていることに正直驚いた。

出典:IAI 演習に参加したHeron TP

各種UAVが戦力の一貫として演習に参加することはあってもUAVがメインの演習は聞いたことがなく、イスラエル国防軍の主張通り「世界初」の演習だと言っても差し支えがないだろう。

イスラエル国防軍が実戦を通じて積み重ねたUAV運用のノウハウや戦術を惜しげもなく西側の先進国に与えるというのは太っ腹過ぎると思うが、今回参加した国は漏れなくイスラエル製UAVを購入している国なので演習を通じて新しいイスラエル製UAVのアピールや売り込みも兼ねているのかもしれない。

補足:演習参加国が使用した武装可能なヘルメス450は米国、英国、シンガポール、タイ、フィリピン、メキシコ、ブラジル、アゼルバイジャンなど計13ヶ国が採用、イスラエル空軍が演習に参加させた非武装のヘロンや発展型のヘロンTPも米国、カナダ、フランス、ドイツ、ギリシャ、トルコ、インド、韓国、ブラジルなど14ヶ国が採用している。

因みにイスラエル製UAVを購入している国は非常に多いので、この取り組みを継続すれば将来的にイスラエルはUAVを主体とした演習の中心地(国防軍関係者もUAVの世界的なリーダーとしてイスラエル軍が位置づけられることを狙っていると述べている)になる可能性を秘めている。

 

※アイキャッチ画像の出典:Zachi Evenor / CC BY 2.0 ヘルメス450

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 7月 24日

    単に国産化すればいいって話ではない、こうやってトップ集団に参加してない国は世界潮流から取り残される可能性高い
    海自掃海部隊が第二次大戦後処理の掃海レベルのまんまで世界最高峰って自負してたら、湾岸戦争の後始末に参加してとっくに世界から取り残されてた現実を知らされた、あの禍根を忘れるな

    27
      • 匿名
      • 2021年 7月 24日

      周辺国(米露中)に対する長年の数的劣勢から生まれた
      質的優勢に対する異常なまでの拘り
      兵士個人の練度の高さに対する異常なまでの拘り
      このあたりの思想が無人機や省力化と相性が悪すぎる

      無人機である以上は単機の性能としてみれば有人機より質は落ちるし兵士の練度の影響もなくなるけどそこを受け入れないと時代に取り残される

      14
        • 匿名
        • 2021年 7月 24日

        イスラエルこそ
        >>周辺国(米露中)に対する長年の数的劣勢から生まれた
        >>質的優勢に対する異常なまでの拘り
        >>兵士個人の練度の高さに対する異常なまでの拘り
        が顕著ではないですかね?(米露中の部分を周辺アラブ諸国と置き換え)
        少なくとも数的劣勢への対処としての無人機活用は有効でしょうし。

        結論には同意しないでもないけど理由付けは違う気がする。

        17
        • 匿名
        • 2021年 7月 24日

        よくわかんない部分はあるけど、数的な劣勢を前提として対応さぜるを得ない状況はこちらのほうがさらに厳しいかもよ
        数と質を兼ね備えた連中が、台湾の次にはこちらに向かってくる

        9
    • 匿名
    • 2021年 7月 24日

    ノウハウ教えてほしかったらうちの買ってね!ってことか
    日本もイスラエル製UAVを検討するいい機会じゃないかね
    なにが正解かわからない現状UAVに投資しすぎるのも考えものだが、選択肢はある程度確保しておきたいところ

    25
      • 匿名
      • 2021年 7月 24日

      製造より先に運用のノウハウは学んでおきたいからね
      それがトルコでもいい、実戦に近い国から得るものは大きいはず

      15
      • 匿名
      • 2021年 7月 24日

      この掲示板のドローン不要論者も、まず研究用に買う位なら文句言わないでしょう?

      4
        • 匿名
        • 2021年 7月 24日

        もう不要論だのはガラパゴスの老害と断じるしかない、
        渡洋型の高性能UAVがいつ出現してもおかしくない状況、
        中国をちゃんと見ろって話

        9
          • 匿名
          • 2021年 7月 24日

          不要論は寡聞にして知りませんが、今すぐ日本がドローンで落とされることはないでしょう。ただ将来的にはあり得るでしょうね。

      • 匿名
      • 2021年 7月 24日

      ノウハウ教えてほしかったらうちの買ってね!って言うのは正解
      只、イスラエルは中国にもUAVを含めた兵器技術を中国へ輸出していた事が幾度も有り、下手にイスラエル製UAVを導入すると中国に手の内を知られる可能性はあるから、自衛隊としては例え米軍が採用していても手を出し辛いんじゃないだろうか?
      但し、日本の防衛装備庁はイスラエルとの共同研究を考えていた事が有り、令和元年9月には「防衛装備・技術に関する秘密情報保護の覚書」の署名も行っているので、何もしていない訳じゃ無いらしい

      1
      • 匿名
      • 2021年 7月 24日

      ま、防衛省が6年前にヘロン欲しいって言って、断念してるんだけどね。

      1
        • 匿名
        • 2021年 7月 24日

        やはり自衛隊最大の敵は財務省か・・・

        6
        • 匿名
        • 2021年 7月 24日

        調べたら、高価なグローバルホークの代替案としてヘロンTPに国産のセンサー等を搭載したUAVを共同開発する構想があったみたいだな
        多分イスラエル側から断られたか、グローバルホークの代替にはならないと判断されたんだろう

        5
    • 匿名
    • 2021年 7月 24日

    イスラエルとトルコで二分してるイメージあるけど翼竜ってどのくらい使われてるんだろ

    • 匿名
    • 2021年 7月 24日

    UAVって海上兵力より広範に低密度に広がる陸上兵力向きなきがする
    しかも出撃地までの搬送のこと考えると防衛よりも攻撃向き

    1
    • 匿名
    • 2021年 7月 24日

    日本だと伝統的な親日国のポーランドが開発し、トルコがリビア内戦で使用したUAVを採用するのも手ではないだろうか。
    リンク

    • 匿名
    • 2021年 7月 24日

    航空作戦の8割って…
    完全に主要装備になってるんですね、もう銃火器レベルだなこれ

    2
    • 匿名
    • 2021年 7月 24日

    飛行時間で8割無人機というか無人機は数増えまくって行動時間も桁違いだから
    そりゃそうだろうなと。
    無人機による投射弾薬量の比率のほうが戦力割合の実態に近いし、火力投射手段で考えると依然として有人機と砲兵が主力には違いない。
    イスラエルの地形で考えると使い捨てれる小型無人機で捕捉し砲兵ロケットで狙うほうが効率いいと思う。

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