中東アフリカ関連

イスラエル、ヒズボラに10日間かかったことをイランでは10分で達成した

イスラエル国防軍はイラン攻撃作戦について「我々がヒズボラに対して10日間かけて達成したことをイランでは10分で達成した」「半年前には空想の計画と思われていた作戦結果は非常に印象的だ」と述べ、作戦に参加した航空機も失われることなく基地に帰還したらしい。

参考:Mossad set up drone base in Iran, UAVs took out missile launchers overnight
参考:After years of preparation, Israel launches major offensive against Iran and its nuclear program
参考:Trump says he was fully read in ahead of time on Israel’s plans to attack Iran
参考:Israel’s Operation To Destroy Iran’s Nuclear Program Enters New Phase
参考:Israeli Commandos Attacked Iranian Air Defenses With Drones From Inside The Country: Report
参考:‘Excellent’: Trump lauds Israeli strikes on Iran, says Tehran can still make a deal
参考:Israeli official: We won’t take our foot off the gas; damage from Iranian response won’t be minor

イスラエル人ですら「想像を超える戦果」と「報復攻撃の強度の弱さ」に驚いているのだろう

イスラエルはイランの核開発能力と弾道ミサイル開発能力を標的にした軍事作戦=Rising Lionを開始、13日午前3時頃~夜明けまでに約100機の戦闘機=F-35I、F-15I、F-16Iを含む200機以上の航空機が投入され、イスラエル国防軍は「最初に防空システムや弾道ミサイルを破壊し、イランの重要人物を無力化する広範囲な攻撃が極めて精密なタイミングで行われ、イラン軍参謀本部や核科学者を同時に攻撃した」「もし初日の作戦が成功していれば、我々がヒズボラに10日間かけて達成したことをイランでは10分で達成してことになる」と述べ、作戦に参加した航空機も失われることなく基地に帰還したらしい。

出典:חיל האוויר

この攻撃でイラン革命防衛隊のホセイン・サラミ司令官、イラン軍陸軍のモハメド・バゲリ参謀総長、統合軍司令部のゴラム・アリ・ラシッド司令官、イラン原子力機構のフェレイドゥン・アバシ元長官を含む核科学者6名が排除された。

さらにイスラエルはイスラム革命防衛隊の航空宇宙軍上層部が地下司令センターに集まったところを夜通し攻撃し、カッツ国防相も「航空宇宙軍のアミール・アリ・ハジザデ司令官、無人機部隊の司令官、防空軍司令官を含む上級将校を排除した」と明かしたが、イランが被った物質的損害も非常に甚大だ。

視覚的にもナタンズ核濃縮施設、ノジェ空軍基地、タブリーズ空軍基地、タブリーズ近郊の弾道ミサイル施設、ケルマーンシャーの弾道ミサイル貯蔵地下施設、ハマダーンの防空司令センターへの攻撃が確認され、イスラエル国防軍も「イラン西部に配備されていた数十もの防空システム、レーダー、地対空ミサイルのランチャーを破壊した」と発表、さらに民間車輌に偽装された弾道ミサイルのランチャーを破壊する様子なども登場したが、初日の作戦で異彩を放っているのはモサドによるイラン国内からの攻撃だろう。

War Zoneは「今回の空爆にイランの防空システムが反応した兆候が見られない」と指摘していたが、Times of Israelは国防当局者の話を引用して「モサドの工作員はイラン領内のテヘラン近郊にドローン基地を建設した」「作戦が発動されると基地のドローンが起動して地対地ミサイルを破壊した」「モサドの工作員は兵器を積み込んだ車輌のイラン密輸にも成功した」「このシステムはイランの防空網を破壊してイラン上空を飛行する空軍の戦闘機に自由を与えた」「さらにモサドの特殊部隊はイラン中部に配備された防空システムの近くに精密誘導ミサイルを配備した」と報告。

モサドもイラン国内で実施した作戦の様子を複数公開しており、War Zoneも「モサドの工作員や特殊部隊は自爆型ドローンや対戦戦車ミサイル=Spike NLOSをイラン領内に持ち込んで空爆を支援した」「モサドの極秘作戦はウクライナ保安庁が実施したOperation Spiderwebに類似性がある」と指摘している。

トランプ大統領はイスラエルの軍事作戦について「本当に素晴らしい結果だったと思う」「イランは私が与えたチャンスを逃してしまい大損害を被った」「イランは本当に激しい攻撃を受けた」「考えられる限り最大の攻撃を受けた」「これからも激しい攻撃を受け続けるだろう」と述べ、今回の結果は「核開発計画を巡る合意を拒否した報い」と強調したものの、ルビオ国務長官は「イスラエルの軍事作戦に一切関与していない」と表明済みで、トランプ大統領も作戦への米軍関与についてコメントを拒否している。

因みにイスラエル国防軍は「Rising Lion作戦は1週間~2週間ほど続く」と説明しているため、13日の作戦はイラン攻撃の序章に過ぎないのかもしれない。

追記:イスラエル国防軍は「イラン軍の無人航空機発射装置も破壊している」と報告し、初日の結果についても「半年前には空想の計画と思われていた作戦結果は非常に印象的だ」と述べ、イスラエル人ですら「想像を超える戦果」と「報復攻撃の強度の弱さ」に驚いているのだろう。

出典:צבא ההגנה לישראל

追記:イスラエル国防軍は「エスファハーン近郊の核施設を攻撃した」を発表、Times of Israelも「フォルドの核施設攻撃に関する報告や映像も増加している」と報じ、さらにイスラエル国防軍のデフリン准将は「13日の攻撃で最低でも6人の軍司令官と9人の核科学者を排除した」と報告した。

追記:イスラエル国防軍は「イランのミサイル攻撃を検出した」「通知があるまで民間人はシェルターの中に留まってほしい」と発表、ネタニヤフ首相も「イランのミサイルはここに到達するだろうし、その結果も軽微なものにはならないだろう。だからこそ攻撃の手を緩めてはならない。我々は長期戦に備えている」と述べて、13日の攻撃成功に対する陶酔感を警鐘を鳴らした。

さらにネタニヤフ首相は「閣僚に提示された最も可能性の高いシナリオは『イランが段階的に計600発の弾道ミサイルをイスラエルに向けて発射する』というものだ」と付け加えている。

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※アイキャッチ画像の出典:חיל האוויר

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コメント

  • コメント (15)

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    • トクメイキボウ=サン
    • 2025年 6月 14日

    報復強度が弱い理由は多分3、4ヶ月後くらいに月刊軍事研究で解説されるんじゃないかな

    7
    • あばばばば
    • 2025年 6月 14日

    イスラエルが先制攻撃と称する攻撃は、国際法から逸脱した行為であるとされる。
    そしてイランはイスラエルから受けた攻撃を国連安保理に対応を要請しアピールする。
    アメリカ(トランプ)がかばってくれるとはいえ、イスラエルの状況は悪化すると見た。

    14
    • paxai
    • 2025年 6月 14日

    イスラエル空軍が悠々と飛んで爆撃を続けてる状況では大規模な反撃も立て直しも難しいな。
    あの力の入れようを見るに部分的な地上部隊の派遣すら考えてそう。

    4
      • 朴秀
      • 2025年 6月 14日

      核施設の上を白昼堂々F-15が飛んでいましたからね…
      (本国中枢の)航空優勢を取られてますから
      何かやろうとしてもすぐに察知されてまともに反撃するのは難しいと思います

      7
    • 2025年 6月 14日

    見事な成果だと思うけど、工場を作ってたりだのまでばらしてよかったのか?
    Rising Lionで本当にイラン全土から弾道弾発射、開発拠点を殲滅できるんなら凄いが、撃ち漏らしがあったら、下手したら宇露や印パより核報復の危険高いと思う
    一寸本気でビビってきた

    5
    • ムスリムーバー
    • 2025年 6月 14日

    ムシ身中の獅子ってか

    2
    • tom
    • 2025年 6月 14日

    いまだに国際法に意味があるって思ってる人ってある意味おめでたいよね

    24
      • もへもへ
      • 2025年 6月 14日

      最早万人に平等の基準で適用されるものでは無くなりましたね。。。。国際法。
      西側が敵対国を攻撃や制裁する為にしか使ってないのではと思えるくらいに二重基準が横行し過ぎてる。

      27
    • 野良猫
    • 2025年 6月 14日

    万年平穏無事な地域ならともかく紛争なんて日常茶飯事な地域でなんでこうガバいんだろう
    これでよく狂犬イスラエルと敵対姿勢続けてるね
    北が最初に核実験やった時のアメリカと韓国にこれくらい根性があったら面倒な状態にならんで済んだのに

    17
    • m
    • 2025年 6月 14日

    正規軍相手には事前に潜入させた工作員、特殊部隊と持ち込んだドローンで防空網、長距離攻撃能力を無力化、航空攻撃で指揮系統を麻痺させ軍事施設に大打撃を与える…技術の進歩でますます防衛側が不利になりますね。潜入工作を完全に防ぐには北朝鮮みたいな超監視社会にするくらいしか思い浮かばないので、これからの防衛戦略が一層困難になった印象です。

    9
    • たむごん
    • 2025年 6月 14日

    先制攻撃が、今までよりもさらに、圧倒的に有利になったということですね。

    潜入され放題、スパイ防止法すらない国となれば…日本の専守防衛かなり危ないなと。

    もしくは、ロシア・イランですら攻撃を受けるのだから、初撃の大ダメージを受け入れるのかでしょうか。

    11
    • kitty
    • 2025年 6月 14日

    他のスレッドにも書きましたが、これを防ぐには中国以上の監視社会、公安関係への権限、予算措置を行っても完全には抑え込めないでしょうね。
    輸入コンテナを全数検査しろとかいう方もいましたが、現実を無視した理想論を言うだけなのは不毛だと思います。
    防げないなら現実的に被害を最小化する方法を模索するしかありません。

    4
      • kitty
      • 2025年 6月 14日

      ああ、レスアンカーミスったけど直上のコメントへのレスです。

      1
      • たむごん
      • 2025年 6月 15日

      仰る通りです。

      輸入コンテナ全数検査はさすがに…国際ハブ港としてトップ級の地位を失ったわけですが、相対的にさらに港湾が過疎になるだけでしょう。
      国際航路が、さらに減少することに繋がりますから、輸出製造業の立地競争力が低下・無駄な運転資金を増やすことにもつながってしまいます。

      まずは被害の最小化を模索するために、立地の検討や分散配置を実行するのが、現実的になりますね。

      1
    • Natto
    • 2025年 6月 15日

    虎の子のトムキャットとフェニックスで反撃に出ないかな。

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