中東アフリカ関連

アイアンドームの限界を認めたイスラエル、1年以内にレーザーウォールのテスト開始を約束

イスラエルのベネット首相は1日、ミサイル防衛シールドを構成するアイアンドームの費用対効果が悪いことを認め「ロケット弾攻撃から国を守るためレーザーベースの防衛システム“レーザーウォール”を1年以内に公開する」と約束した。

参考:Israeli PM to speed up rollout of lasers for missile defense

1年以内にレーザーベースの防衛システム“レーザーウォール”のテストを開始すると約束したベネット首相

イスラエルはミサイル防衛シールドの最下層迎撃を担当するアイアンドームを10年前に実戦配備、ガザ地区のイスラム原理主義組織ハマスが使用する大部分のロケット弾攻撃を阻止(平均迎撃率90%)することに成功して国民と資産を保護してきたが、ベネット首相は「敵がイスラエルに向けた発射するロケット弾のコストは数百ドルなのに対し、これを迎撃するアイアンドームのコストは何万ドルもかかるため現在の方法でガザ地区からの攻撃から国を守るには限界があり非論理的だ」と明かした。

出典:Israel Defense Forces

そのためベネット首相は「1年以内にミサイル、ロケット弾、ドローンを迎撃するため設計されたレーザーベースの防衛システム“レーザーウォール”のテストをイスラエル南部で開始する」と述べ、迎撃側のイスラエルが不利な状況を覆すと約束したため注目を集めている。

イスラエルが開発を進めている無人航空機搭載のレーザーシステムは高高度を飛行するため天候に左右されることなく長距離で目標を無力化することに成功しているため、レーザーウォールとは「地上ベースのレーザーシステムではなく現在のミサイル防衛シールドを補完する空中ベースのレーザーシステムではないか(以前公開されたレーザーシステムのイメージには地上ベースも含まれている)」と予想されているが、ベネット首相は次世代のレーザー技術“レーザーウォール”について詳細を明かしていないため実際にどのようなものなのかは謎だ。

因みに1年以内にイスラエル南部でテストを開始する“レーザーウォール”の様子は「公開する」とベネット首相が述べているので、ガザ地区のイスラム原理主義組織ハマスやこれを背後で支援するイランに「従来の方法で攻撃してもイスラエルに経済的なダメージを与えられなくなる」というメッセージが込められているのではないかとAP通信は報じている。

 

※アイキャッチ画像の出典:Photo by David Huskey Iron Dome

お知らせ:記事化に追いつかない話題のTwitter(@grandfleet_info)発信を再開しました。

米メディア、なぜエジプトは複数の提案から韓国のK9を選んだのか?前のページ

イタリア陸軍、アップグレードされた主力戦車アリエテのプロトタイプが完成次のページ

関連記事

  1. 中東アフリカ関連

    奇襲攻撃で1,000人以上が死傷、イスラエルにとって今回の攻撃は9.11に匹敵

    まだハマスによる前例のない奇襲攻撃の全容は不明だが、今回の攻撃は地中海…

  2. 中東アフリカ関連

    週末に計画されていたイスラエル軍のガザ侵攻、天候不順で延期の可能性

    ニューヨーク・タイムズ紙は14日「イスラエルはハマスを一掃するためザガ…

  3. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露

    アラブ首長国連邦で開催中の防衛展示会「IDEX」でEDGEが無人戦闘機…

  4. 中東アフリカ関連

    難民キャンプへの空爆、イスラエル軍は南へ逃げるよう警告したと攻撃を擁護

    イスラエル軍によるガザ北部への空爆で多数の市民が死傷し、国際社会から非…

  5. 中東アフリカ関連

    エジプトと韓国がT-50/FA-50の現地製造契約を締結、調達規模は約100機

    英国のジェーンズは18日「エジプトが韓国航空宇宙産業(KAI)とT-5…

コメント

    • もり
    • 2022年 2月 02日

    やはりレーザー…!
    レーザーは全てを解決する…!!

    11
      • 無無
      • 2022年 2月 02日

      んなはず無いだろ(笑)レーザーは弾道を描けないから、水平線下への攻撃ができないし、気象による減衰だってまだまだ解決はしていない
      砲弾とミサイルの時代はまだまだ続いてしまう

      7
        • 戦略眼
        • 2022年 2月 02日

        そこは反射衛星で。

        9
          • 匿名
          • 2022年 2月 04日

          空間磁力メッキで撃ち返す

        • もり
        • 2022年 2月 02日

        だから航空機搭載型が検討されてるんだよなぁ

        5
          • 無無
          • 2022年 2月 03日

          とくに解決にはつながらない、なんとなれば敵もレーザーでその飛行機を墜すぞ

          2
    • 774rr
    • 2022年 2月 02日

    1年後に発表って凄いスピード感
    日本とは危機感が違うね

    16
      • G
      • 2022年 2月 02日

      今問題が発覚して今から対処し始めるというものではなく、長年実際に攻撃を受け続けており、加えてアイアンドーム配備当初から言われ続けていた問題なので、レーザーを含めすでに長年代替・補完迎撃装備に関して研究され続け、その目途が立ったたったからこその一年以内の発表予定では

      43
        • TT
        • 2022年 2月 02日

        米国と一緒に戦術高エネルギーレーザーをやり始めたのが90年代からですからね。
        2000年頃には既に迫撃砲弾やロケット弾の迎撃に成功していますし、弊害も多い弗化水素レーザーを放棄して半導体レーザーに切り替えてから(記憶では2007年頃媒質にブレイクスルーがありました)ようやく目処が立った感じ。30年近い努力が漸く結実する感じで、米軍の海上配備型と合わせ感慨深いです。

        8
          • TT
          • 2022年 2月 02日

          半導体レーザーって言うのは、固体レーザーの書き間違いです。

          4
    • 折口
    • 2022年 2月 02日

    ハマスがミサイルをヤスリで磨いて鏡面仕上げにする日が来るんですね…?
    冗談はさておき、無誘導ロケットや迫撃砲弾の迎撃まで視野に入れているC-RAMである以上は米海軍のODINシステムのようにシーカー部分だけを焼ききれる程度の低出力レーザーではなく、本格的な大出力が求められるように思います。昨年の空襲並の飽和攻撃への対処を例に取れば1目標あたりに費やせる時間は数秒程度でしょうし、その時間内に目標を熱損壊させる出力、さらにそれを連射するとなると全体の系統は動画にあったような装甲車程度ではおさまらないのでは。

    16
    • トーリスガーリン
    • 2022年 2月 02日

    PVでブースト段階のスカッドも破壊してるけど結構でかい機体なのかな?

    2
    • ブルーピーコック
    • 2022年 2月 02日

    矛と盾の戦いは永遠に終わらないんだ・・・

    てかロケット弾すら撃ち落とせる熱量を出せるんだろうか。それとも炸薬か推進剤を誘爆させる方式なのか。とりあえず公開されるらしい実機と映像待ちかな

    6
      • tarota
      • 2022年 2月 02日

      ヒートシールドなど搭載しそうですよね
      大気圏突入時の加熱を思えば対処は楽そう

      2
        • ブルーピーコック
        • 2022年 2月 02日

        攻撃側にも出費を強要できるならやる価値はありそうですけどね。ハマスみたいに支援国がいる場合はなおさらに。
        テロ組織に安いロケット弾を与えてイスラエルに経済的なダメージを与えようとしたら、レーザーでブロックされたので対抗策を講じた結果、出費が嵩んで自らが経済的ダメージを負ったら本末転倒なので。

        3
        • 匿名
        • 2022年 2月 02日

        サーマルキルなタイプのレーザーだろうから、耐熱性を向上させたら、
        →照射の所要時間の悪化
        →対象可能数の低下
        →飽和攻撃の閾値低下
        →「ウォール」を抜ける可能性up
        といった流れを連想しますよね。

        1
    • 匿名
    • 2022年 2月 02日

    >イスラエルが開発を進めている無人航空機搭載のレーザーシステムは高高度を飛行するため天候に左右されることなく長距離で目標を無力化することに成功しているため

    雲の上に搭載機が居るから「天候に左右されることなく」としているのだろうけど、
    低い軌道の標的﹙含む比較的低高度を飛ぶUAV﹚相手だと、雲越しとかになるから結局「天候に左右される」様な気がします。

    6
    • 無明
    • 2022年 2月 02日

    レーザーは電力消費が凄そうだしデコイ撒くことで本命のロケットがすり抜ける可能性高くなりそうだけどどうなんだろう

    1
      • ダヴー
      • 2022年 2月 02日

      無誘導ロケットのデコイ用意するくらいなら、撃つ量を増やした方が早いと思うのと、
      そうやってハマス側にコストをかけさせ、イスラエル側がコスト削減できるのなら成功と言える。

      10
        • バーナーキング
        • 2022年 2月 03日

        デコイっつーか弾頭代わりに鉛や鉄みたいな安い金属(必要なら酸化させて)雑に詰め込んどけば、
        安上がりでちっとやそっと加熱しても爆発もしなきゃ蒸発もしない、それどころか半端に加熱されて溶けた金属が着弾で飛び散って市街地に火災を撒き散らす厄介な兵器になりかねんよーな。
        しかも攻撃側としてはただの金属塊を軍事施設に撃っただけで非人道的でも無差別殺傷でもない、加熱し(て火災を招い)たのも軌道を変えて市街地に落としたのも防御側だ、という言い訳も出来るし。

        2
    • 無印
    • 2022年 2月 02日

    濃霧、豪雨、豪雪、台風時でもちゃんと機能するのかが気になる所
    攻撃側は天気予報を気にしながら攻撃する事になるのかな?

      • TT
      • 2022年 2月 02日

      電中研の報告だと、通常の雨天くらいなら8割くらいまでの減衰で済むようなので、相当の悪天候じゃ無ければ無力化されないと思われます。

      1
        • 匿名
        • 2022年 2月 02日

        エネルギー8割だと、単純計算で有効射程は9割といった所ですね。

        3
    • 2022年 2月 02日

    イメージ的にはまだまだレーザーに高出力は出せないって考えてたけど、砲弾でも迎撃できるレベルまで高出力にできるのか?
    イスラエルが言うなら信憑性は高そうだから、どんな物ができあがるのか楽しみだ。

    2
    • 匿名希望
    • 2022年 2月 03日

    航空機搭載型なら、常に飛ばす必要があるけど維持費はどうなんだろ?

    1
    • (´・ω・`)さん
    • 2022年 2月 03日

    ミサイル側 鏡面にしたら耐えられるんか

    • うた
    • 2022年 2月 03日

    そこでレールガンですよ!

    • 匿名
    • 2022年 2月 04日

    500万でダメならサイドワインダー転用で一発5000万のアメリカさんのあれどうなんねん
    レーザー併用の最大要因はコストよりラジコン爆弾対応の為だろうと思う

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  2. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  3. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  4. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  5. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
PAGE TOP