モロッコは潜水艦部隊の創設を進めており、スペインのディフェンスメディアは4日「フランス、ドイツ、ロシアなどが潜水艦の売り込みに関心を示している」「トランプ政権誕生でロシア製装備への圧力が無くなればアムール型潜水艦も現実的な選択肢になるかもしれない」と報じた。
トランプ政権誕生で政治的選択肢が広がれば、ロシアがアルジェリアに傾くのを阻止するためアムール型潜水艦を選択するかもしれない
北アフリカのモロッコとアルジェリアは政治体制の相違、西サハラ独立を掲げたポリサリオ戦線問題、イスラエルとの国交樹立問題などの火種が燻っており、2021年にアルジェリアは敵対的行動を理由にモロッコとの国交断絶、F-16V導入への対応策としてSu-57E導入(最近のSu-57E輸出に関するニュースは4年前の続報)を発表し、2010年代に発注したT-90SA、BMPT-72、Iskander-E、Pantsir-S1、Su-30、Mi-28も到着し始めている。

出典:sukhoi
モロッコもAH-64E、M1A2 SEPv3、CAESAR、HIMARS、Barak-8、FD-2000B、SPYDER、FREMM、イスラエル製の徘徊型弾薬、弾道ミサイル、巡航ミサイルを発注済み、F-16C/D Block52+のアップグレード、アラブ首長国連邦からミラージュ2000-9を取得する計画も進行中で、さらにモロッコ国王は軍事協定を締結したイスラエルに「F-35A輸出を実現させるため米国を説得してほしい」と依頼しており、モロッコとアルジェリアの軍拡競争は中東・アフリカの中でも有数の勢いと規模だ。
武器輸出国や防衛産業界にとっても両国は有望な市場の1つで、モロッコ海軍が進める海上哨戒機の調達にはBoeingがP-8A、Lockheed MartinがSC-130J、LeonardoがATR 72MPA、AirbusがC295MPAを提案していると報じられていたが、モロッコ海軍は潜水艦部隊の創設も進めているらしく、スペインのディフェンスメディア=Infodefensaも4日「モロッコ海軍が潜水艦2隻の調達に取り組んでいる」「フランス、ドイツ、ロシアは新規に建造した潜水艦を、ポルトガルとギリシャは自国で運用した中古潜水艦を売り込むことに関心を示している」と報じた。

出典:Naval Group Scorpene Evolved
最も有力な選択肢はフランスのスコルペヌ型潜水艦とドイツの209/1400型もしくはドルフィンII級(イスラエル海軍向けに設計された209型ベースのカスタムモデル)で、ロシアはアムール型(950ではなく1650)潜水艦を、ポルトガルは海軍で使用中のU-209PNを、ギリシャは海軍で使用中の209/1200型もしくは209/1500型を売り込みたいと考えており、非常に興味深いのは「これまでモロッコは米政権に同調していたためアムール型潜水艦の可能性はなかったが、トランプ政権誕生後に形成されつつある新しい国際秩序、特に同政権のロシア接近を考慮すると現実的な選択肢になるかもしれない」と指摘しているところだ。
モロッコはアルジェリアに大量の装備を供給するロシアと対立するのではなく、コルネット、メティス、Msta-Sなどを購入してロシアとの繋がりを維持しており、トランプ政権誕生で政治的選択肢が広がれば「ロシアがアルジェリアに傾くのを阻止するためアムール型潜水艦を選択するかもしれない」という意味で、アルジェリアとしては「潜在的敵対国のモロッコにロシアが装備を売る」というのは面白くないだろう。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Joshua Turner
因みにトランプ政権が「(米国の国益を侵害しないなら)ロシア製装備の取引を妨害しない」という方針を採用すれば、中東、アフリカ、アジア、南米の国々は「安全保障上のバランス」を調整するためロシア製装備の調達を検討する可能性が高く、恐らくロシア製装備は海外市場で中国製装備と競合するはずだ。
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ロシア潜水艦は優秀ですからね
しかしモロッコが買うというのであれば、その用途は対アルジェリアより対スペインと思われます
ロシア、ソ連製の軍用車両は脆弱とされてましたが、ふたを開けてみれば、ロシアの軍用車両も欧米の車両もドローンには耐えられませんでしたからね。
生存率は上がるけどバカ高いし、メンテナンスも手間のかかる欧米兵器と、安いし数十年単位で野晒しにしてたのに整備したら動くロシア、ソ連製兵器。
質と量の争いで量を選ぶ国もあるでしょう。
ロシアはウクライナとの戦争、将来のNATOとの衝突に向けて軍事産業基盤に投資して生産力を大きく強化したからドイツ兵器アメリカ兵器の様な長蛇の列に並ばずに装備の調達&支援体制を確立出来る様になってるからそこも魅力的だよなぁ
どんなに高性能でも数が揃わない、弾がない、整備が間に合わない装備なんか役に立たない訳で
機銃しか装備してないMiG-21でも離陸出来ないF-35なら一方的に破壊出来ちゃうのよね
運用体制って大事だね
ヨーロッパのエネルギー安全保障にとって、北アフリカ~地中海は、脱ロシアの要にもなりますからね。
北アフリカも、ロシア・トルコなどが介入化して複雑化していますから、欧州も東欧にばかり目を向けていられない難しい情勢です。
戦時生産を円滑にするためには、平時に海外輸出をして、生産基盤を残すことが大事になりますからね。
ロシアが、ウクライナ戦争の停戦も見据えるならば、戦時経済から平時経済への移行をゆるくするためにも武器輸出に力を入れていく可能性は高いです。
F-16が運用できるなら、チェックメイトだって買えるかもね。Su-57とのロシア機同士の対決なんて見てみたいような。
特定の陣営の兵器に偏ってしまうとその陣営にそっぽを向かれてしまうと途端に運用に困る事になりますからね。
兵器を購入=有事に支援が期待できるというのもあります。
どこかの国から買うと、これからはそうではなくなる場合もありそうですが。
ウクライナ侵攻当初はロシア製兵器が(特に装甲車両)が役に立たないのでもう売れないと言われていましたが、ウクライナへ供与された西側製もドローンにやられました。
どっちもどっち、やはり戦いは数だよという事で安価でタフなロシア製も見直されるのではないかと思います。
特に戦車や自走砲はステルス機ほど西側製兵器の優位性は無くなりましたので。
「百発百中の一砲能く百発一中の敵砲百門に対抗し得る」的な考え方の西側製兵器は非対称戦では少ない兵力で目的を達成できますので効果的ですが、お互いが拮抗した勢力同士の総力戦となると間違いとなります。
「百発百中の一砲能く百発一中の敵砲百門に対抗し得る」
よく言われるけど。
最初の一発目で、1砲の方が破壊されて。一方は99砲残りそうなんだけど。
対抗するためには9砲か10砲必要そうなんだよな。
もちろん、比喩なんだろうけど。 人件費もバカにならないから。結局、システムとしてのコスパだよな・・・
仮想敵国はアルジュリアのはずだよな、西サハラで対立してるから
潜水艦いる?
グーグルアースとか見ると顕著ですが、アフリカの地中海沿岸諸国は砂漠の方は点々と町がある以外、ほぼ何も無いんですよ。なので係争地への陸路の輸送は止められずとも、本体とも言える沿岸部・港湾部への攻撃は間違いなく痛手です。
特に石油・天然ガスの輸出港のアルズー港とベジャイア港への攻撃ないし、イタリアへ伸びるパイプラインを攻撃されると外貨獲得手段が大幅に無くなります。
北朝鮮も、潜水艦の所有は、工作員の運送手段くらいに使うのかなーとか思っていたら、SLBMが最終目標だったわけで。モロッコとが何を企んでいるのかはなかなかわかりません。
陸路より海路なわけね、大航海時代だなあ
モロッコは地中海側にもかなり広大な領土があって、主な輸出入相手はスペインフランスイタリア等南欧諸国。大事なんじゃないかな地中海航路?
アルジェリアはキロ級6隻もってるし
ロシア製は安くて性能そこそこのイメージがありますけど
ソ連から伝統のある潜水艦は一流なんでしょうね
TYPEアムールは初期型が散々で改良されたタイプもロシア本国ですら本腰を上げないのでどうですかね…ワルシャワンカが万能すぎるのがいけないのか…