モロッコは国交を樹立したイスラエルとBarak-8調達に関する協議を進めていると報じられており、安全保障分野における両国関係が急接近している。
参考:Morocco in talks with Israel to buy air defence system
果たしてイスラエル製兵器を買い漁ることでモロッコはF-35A輸出を実現することが出来るだろうか?
フランス支配から独立した北アフリカのモロッコとアルジェリアは政治体制の相違(立憲君主制と共和国制)、モロッコが領有権を主張する西サハラの独立を掲げたポリサリオ戦線へのアルジェリア支援、モロッコの西サハラ領有承認と引き換えにパレスチナと対立関係にあるイスラエルと国交樹立した問題など両国関係には幾つもの火種が転がっており、遂にアルジェリアはモロッコが敵対的な行動を続けていることを理由に国交断絶を今年8月に発表した。
つまり両国関係は極度に悪化しているという意味でF-16Vの調達を進めているモロッコに対抗してアルジェリアはSu-57を14機導入(時期未定)すると発表、これに対抗するためモロッコ国王のムハンマド6世は2ヶ国間の安全保障分野に関する軍事協定(アンチドローンシステム/Skylock Domeや徘徊型UAV/ハロップの売却、両国が共同で徘徊型UAVを開発してモロッコ国内で製造する協定など)を結んだイスラエルに「モロッコへのF-35A輸出を実現させるため米国を説得してほしい」と依頼したと噂されていたが、今度はBarak-8/バラク-8の調達に関する協議が進んでいると報じられている。
イスラエルとインドが共同で開発したBarak-8(交戦範囲100km)は終末段階の弾道ミサイル迎撃にも対応した艦対空ミサイル(交戦範囲を150kmに拡張したBarak-8ERの開発も進められている)で開発国のイスラエル海軍とインド海軍が採用、これを転用した陸上配備型の防空システムをインド陸軍とアゼルバイジャン陸軍が採用しているのだがモロッコ陸軍もBarak-8調達を希望しているらしい。
モロッコ陸軍は米国製のPAC-3対応のパトリオットシステム、S-300を参考に開発された中国製のFD-2000(HQ-9の輸出モデル)、空対空ミサイルPL-12をベースに開発された迎撃ミサイルを使用する中国製のDK-10、空対空ミサイルMICAを転用したMBDA製のVL/MICAを既に保有しているのにイスラエル製のBarak-8まで導入するというのだから驚きだ。
恐らく防衛装備品の調達先(米国、フランス、イタリア、オランダ、スペイン、ロシア、中国、トルコ+イスラエル)をモロッコが分散しているのは武器購入と引き換えに「領有権を主張する西サハラ問題」への支持固めである可能性が高く、モロッコにとって導入した兵器の運用効率や兵站にかかる負担などは二の次なのだろう。
果たしてイスラエル製兵器を買い漁ることでモロッコはF-35A輸出(飽くまで噂だがモロッコがF-35Aを調達するための費用をUAEが負担するという話がある)を実現することが出来るだろうか?
関連記事:機密と影響力のジレンマ、モロッコがF-35A導入のためイスラエルに米国説得を要請
※アイキャッチ画像の出典:Lolagpk35 / CC BY-SA 4.0
背後にうごめくUAE、本当ならばアラブ諸国の不協和音につけこんでイスラエルが理を得ているという構造に。
サウジアラビアとイランもそうだけど、本質は利害得失で争ってるのに建前として宗教対立を持ち出してるとしか見えない