中東アフリカ関連

モロッコ海軍の海上哨戒機を巡りP-8A、SC-130J、ATR 72MPA、C295MPAが競合

モロッコ海軍は海上哨戒機を調達するプログラムを進めており、ボーイングがP-8A、ロッキード・マーティンがSC-130J、レオナルドがATR 72MPA、エアバスがC295MPAを提案していると報じられている。

参考:La Armada de Marruecos planea comprar aviones de patrulla marítima armados
参考:Morocco Navy plans two acquire two maritime patrol aircraft to increase its anti-submarine warfare capabilities

高価なP-8Aを調達する資金をモロッコは十分に持っており、F-35A調達のため米国の歓心を買うという選択肢も十分にありえる

モロッコ海軍は国際的に重要なジブラルタル海峡を含む広大な排他的経済水域(81,000平方マイル)を監視・管理するためブリテン・ノーマン製のディフェンダー×14機、ビーチクラフト製のキングエア×4機を海上哨戒任務に使用しているが、より大型な海上哨戒機を調達したモロッコ海軍のためボーイングがP-8A、ロッキード・マーティンがSC-130J、レオナルドがATR 72MPA、エアバスがC295MPAを提案しているとスペインのディフェンスメディア「Defensa」が報じている。

出典:AIRBUS C295MPA

最も性能が優れるP-8Aの調達コストは推定1.45億ドル/167億円(2021年発注額/米海軍は11機を16億ドルでボーイングに発注)もするため高価過ぎ、SC-130Jはモロッコ海軍がキングエア/350ER(AESAレーダーと監視装置を搭載)を選択時に敗れているため中型機で調達コストも6,000万ドル/70億円前後と安価なATR 72MPAとC295MPAが「最も有力な候補だ」とDefensaは説明しているが、提案する国との政治や外交の関係性についても評価の対象になるため「サプライズが起きても不思議ではない」とも主張しているのが興味深い。

AESAレーダーやEO/IRセンサーを使用した海上哨戒任務だけならP-8A以外を選択する可能性が高いが、モロッコ海軍は新しく調達する海上哨戒機には対潜能力も要求しているため最も高価で性能が高いP-8Aが選択される可能性も0ではないという意味だ。

出典:sblanquez / CC BY-SA 2.0オマーン空軍のC-295 MPA

資金的に見てもモロッコの国防予算は隣国アルジェリアとの関係断絶を受けて大幅に増額(2019年/37.2億ドル→2021年/47.9億ドル→2022年/68.3億ドル)されており、2023年までをカバーした装備調達予算の上限は125.2億ドル/約1.45兆円に設定(必ず全額を装備調達に投資するのではなく緊急時の軍事作戦に必要な資金としても活用されるため余裕をもたせているらしい)されているため、高価なP-8Aを調達する資金は十分に持っていると言って良いだろう。

アルジェリアのSu-57E調達に対抗しなければならないモロッコはF-35A調達を希望しているので「米国の歓心を買うためP-8Aを選択する」という選択肢も十分にありえるが、果たしてモロッコ海軍は何を選ぶのだろうか?

関連記事:パトリオットやFD-2000を保有するモロッコ、Barak-8調達をイスラエルと協議中
関連記事:機密と影響力のジレンマ、モロッコがF-35A導入のためイスラエルに米国説得を要請

 

アイキャッチ画像の出典:U.S Navy photo by Personnel Specialist 1st Class Anthony Petry

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コメント

    • 無無
    • 2022年 1月 10日

    4発エンジンは候補にすら上がらないのは何で?

    3
      • 伝説のハムスター☆☆☆
      • 2022年 1月 10日

      単純に企業が提案しにいってないとかじゃないか?

      14
        • 無無
        • 2022年 1月 10日

        提案してもバチは当たらないんだがな
        少々気後れすぎではないか

        7
        • 名無し
        • 2022年 1月 10日

        要はやる気と覚悟なんですよね
        国ぐるみで何ががなんでも国産兵器を海外に売るんだ!って覚悟とやる気が無い
        海外の航空ショーへ出展はしていても、国内の目を気にしてどこか腰が引けてる
        隣の韓国はそんなへっぴり腰なセールスは微塵もして無いから今の地位を獲得出来た
        かつての欧米に劣る国産車やテレビや冷蔵庫を必死に海外へ売り込んだ猛烈セールスマン
        達の姿は今の国産兵器にはない

        長い間の武器輸出三原則の悪弊もあるけど、既に60代までが戦後世代に置き換わって
        戦後教育の中で延々と脳内へ擦り込んで来た軍事=悪って忌避意識が無意識にでも
        影響してるんだろうか

        26
          • 24時間戦えますか?
          • 2022年 1月 10日

          昭和の時代のことわざだけど、「24時間戦えるのがビジネスマン。サラリーマンは8時間戦えればいい」というのがあった。

          時任三郎が演じる「牛若丸三郎太」と植木等が演じる「無責任男」の対比だけど、今の時代、海外ビジネスの最前線に時任丸三郎太はいないのだろうか。

          4
      • 名無し
      • 2022年 1月 10日

      その肝心の4発エンジンが国産のガラパゴス・エンジンなのがP-1輸出の一つのネック
      本気でP-1を輸出する気なら顧客が選べる様に民間機エンジンのオプションがあっても
      良いのだが、当時は適当なエンジンが無かったが国産選定理由になってはいるが
      (実際は国産エンジン使いたかっただけだろう)今ならMRJ(現SJ)のPW1000G系が
      サイズ、推力ともほぼ同等で代替エンジンとして検討は出来る筈
      申し訳程度に国内で武器展示会を開いても、C-2にしろP-1にしろ「なぜ海外に売れな
      いのか」を官民で真剣に協議している様に見えない、そこに官民で予算を割こうって
      気配も無い、これじゃ売れない

      16
        • おわふ
        • 2022年 1月 10日

        最初は政府が予算訓で、費用を貸してやるくらいの覚悟が必要ですね。

        2
      • 名無し
      • 2022年 1月 10日

      自分で「国産のガラパゴス・エンジン」と揶揄っておいてなんだが、P-1がエンジンまでも
      国産である事は、見方を変えれば輸出に際してエンジン原産国の顔色を伺う必要は無い
      一部搭載品に米国製があったとしても、エンジンについては米国の輸出許可を貰う必要が
      無いのはアドバンテージにはなると思う
      海外実績の無い国産エンジンがネックなら、それを逆手に取る様なセールスも出来ない
      まして国内や米国の顔色を伺いながらの腰が引けた武器セールスでは、コスト伝々以前の
      問題としてやはり売れない、輸出は根本的な意識改革が出来なければ無理でしょう

      17
        • 幽霊
        • 2022年 1月 10日

        日本がアメリカに売るなと言われて断れるとは思えないけどね。

        2
      • 匿名
      • 2022年 1月 10日

      インドですら双発で十分だし4発必要なほど過酷な哨戒をやらないといけない国ってあるんだろうか

      3
      • あばばばば
      • 2022年 1月 10日

      そもそも4発エンジンを搭載したベースとなる航空機がないからでしょ。

      日本のP-1が候補に挙がってないのは、
      1.コンペの招待が送られてこなかったか
      2.送られてきたが、返答しなかったか
      3.武器輸出三原則に抵触しそうだった
      のいずれかでしょ

      2
    • 2022年 1月 10日

    売れなくても良いからP1アピールしよう!

    14
    • すき焼き書房
    • 2022年 1月 10日

    日本政府と企業は、契約を勝ち取れんでもP-1をセースルしてほしいけど難しそうかね?

    8
    • nmo
    • 2022年 1月 10日

    前記事に続いて、装備調達と政治は切り離せないというお話ですか

    2
      • 無無
      • 2022年 1月 10日

      軍備のキモになるような主要兵器を政治抜きで選択だの考えるほうが無理
      我が国がスホーイを買えないのはそこに尽きる

      11
        • 匿名
        • 2022年 1月 10日

        買えなくはないと思うぞ。
        きちんとアメリカかヨーロッパの兵器バイヤー経由でならって前提がつくが
        韓国のF-15Kの時にSU-35があげられていたしな

        少数のアグレッサー導入なら向こうのラインの都合と予算の都合がつけば行けるとは思うぞ。

          • 無無
          • 2022年 1月 10日

          アグレッサーと主力戦闘機は別だし
          それにどこのバイヤーが日本のためにロシア兵器を引き受けるのか
          アメリカからにらまれるリスクがあるのに
          そのようにうごめいていると、日本が安保体制に不満があるのかと勘ぐられたり因縁つけられるのがオチ
          明白な長期戦略無しに東側から武器は買えないよ

          6
          • バーナーキング
          • 2022年 1月 10日

          > 少数のアグレッサー導入なら

          1行目くらいはちゃんと読んでやろうよ。

          >軍備のキモになるような主要兵器

          1
      • ブルーピーコック
      • 2022年 1月 10日

      そもそも戦争も政治に含まれるので、戦争の準備も政治の範疇です。いまいちピンと来ないのは分かりますが。

      一例ですが、日露戦争はロシアの南下と朝鮮半島への影響力排除が目的(国家戦略)でした。そのためにイギリスから軍艦を買ったりしました(三笠とか)。
      勿論、ディベートや政治的得点のためだけに現場を無視して兵器調達するのは愚策です。昨日の共同通信の記事はそんな論調でしたが。

      9
    • NHK
    • 2022年 1月 10日

    やっぱりP-1はいないのか。
    日本製兵器で費用対効果が良いのって哨戒機ぐらいじゃないのかね。
    売れないと端から決めつけて提案すらしないのに、国内のサプライチェーンがやばいって騒ぎ立ててるのはちょっとねぇ。
    政府も防衛省も、本気で防衛産業を守る気あるのかな。
    それともドイツとフランスの選定から外れて自信とやる気を失ったか。

    8
      • ブルーピーコック
      • 2022年 1月 10日

      アルジェリアの石油プラントなどに日本人技師を派遣したりしているので、武器輸出がしたいがためにモロッコに肩入れしてアルジェリアとの関係悪化とか、それこそバイデンを笑えないのでは(数年前、テロリストの人質になったりしたが)

      2
        • 伝説のハムスター☆☆☆
        • 2022年 1月 10日

        顔色うかがってたら一生武器売れないよ

        世界の外交を見てるとある分野では反目するけど利害が一致する分野では手を結ぶ外交がスタンダードだから武器を売っても問題ない

        8
    • クローム
    • 2022年 1月 10日

    C-130の対潜仕様があったのか、知らなかった。

    ロッキードの説明だと競合機より厳しい環境で運用できるのが長所。
    今回のモロッコの件ではないけど、競合機としてP-8と共にP-1が挙げられてるのが嬉しい。

    1
    • 無題
    • 2022年 1月 10日

    何かあってこじれない限りはP-8で決まりかな

    1
      • 匿名
      • 2022年 1月 10日

      F-35とのオフセットでC-130の可能性

    • たこ焼き食べたい
    • 2022年 1月 10日

    モロッコと言えば数年前に「日本向け輸出用の蛸の乱獲で漁獲量が減ってる」(なのでたこ焼きの値段が上がっている)ってニュースで見たくらいしか印象にないな
    P-1輸出して代金は蛸で支払ってもらうか…

    3
      • ブルーピーコック
      • 2022年 1月 10日

      2019年のJETROの報告だと、日本からの進出企業はエジプトに進出した企業の2倍弱の110数社もあるとか。(アルジェリアは6社)

      北アフリカにおいては最も経済関係の深い間柄だったりするようです。(アフリカ全土だと南アフリカ共和国の方が縁深かったりする。さすがは名誉白人)

      1
    • Xyz
    • 2022年 1月 11日

    > 推定1.45億ドル/167億円
    P-8の価格前より下がってきてるんじゃないか?
    P-1とどっちが安いんだろう?

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