中東アフリカ関連

砲弾需要の恩恵を受ける南アフリカ企業、米企業とも共同で新型155mm砲弾を開発中

南アフリカ企業のRheinmetall Denel Munitionには「NATO加盟国の受注が舞い込み続けてバックオーダーが積み上がっている」と報じられており、爆発的な砲弾需要の恩恵を受けているらしい。

参考:RDM nets two new contract for Assegai artillery ammunition

砲弾需要に影響を受ける形で火薬工場の新設計画も好調、技術移転を行ってくれる韓国や南アフリカに関心が高まる

NATO加盟国はロシア軍と戦うためウクライナ軍に大量の155mm砲弾を供給しており、その殆どは軍の備蓄分から引き出されているため早急に埋め戻さなければならず、欧米企業は砲弾の増産に取り組んでいるものの圧倒的な需要を直ぐにカバーすることは不可能で米国は韓国企業から砲弾を入手する計画だ。

ラインメタルとデネルが共同保有する南アフリカ企業のRheinmetall Denel Munition(株式の51%はラインメタルが保有)も155mm砲弾などを製造しており、親会社のラインメタルは主にNATO加盟国、子会社のRDMはアジア、中東、南アメリカ、アフリカ諸国の需要をカバーするよう棲み分けていたのだが、NATO加盟国の受注が舞い込み続けてバックオーダーが積み上がっていると報じられている。

NATO規格と互換性のある155mmのM2005V-LAP弾には複数のNATO加盟国(最低でも3ヶ国以上)から、40mmグレネード弾にはスペインとアジアの2ヶ国から発注があり、ハンガリーが建設中の火薬工場に必要な生産整備の供給と技術移転を行う契約も締結、米ノースロップ・グラマンはXM1156精密誘導キットとM2005V-LAP弾を組み合わせた新しい155mm砲弾(射程延長弾)を開発中で最終的に米軍採用を目指しており、爆発的な砲弾需要の恩恵を受けているらしい。

出典:Rheinmetall Denel Munition

因みに欧州では弾薬製造に欠かせない火薬工場の新設計画が次々と立案されており、製造技術やノウハウを持たない東欧諸国は技術移転を行ってくれる韓国や南アフリカに目を向けている。

関連記事:米陸軍は155mm砲弾の生産量を朝鮮戦争の水準に戻す、2年以内に月産9万発
関連記事:独ラインメタル、155mm砲弾を年間45万発~50万発まで生産が可能
関連記事:ルーマニアと韓国が地上装備の現地生産に向けMOU署名、韓国版HIMARS導入も視野に

 

※アイキャッチ画像の出典:Rheinmetall Denel Munition

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コメント

    • マルチカム
    • 2023年 2月 09日

    しかし改めて思うけど21世紀の国家同士の戦いはミサイルやドローン、サイバー戦が主体で大規模な砲撃戦なんて過去の遺物だと思ってたけど全然違ってたね。

    32
      • ブルーピーコック
      • 2023年 2月 09日

      レールガン装備の戦車、デジタルカモフラージュによる見えない兵士、マッハ6の戦闘機、衛星軌道からのレーザー、アーセナルシップ・・・うっ!封じられた記憶が・・・

      15
    • ななし
    • 2023年 2月 09日

    わが国も砲弾やミサイルの製造を大企業の一部門ではなく専門企業として独立させ、
    設備投資について補助金の支出や税制面での優遇措置を講じるべき
    (財務省に愛国者がいれば可能)

    8
      • アマゾン
      • 2023年 2月 09日

      財務省に愛国者がいればは別にするとして、武器製造専門の企業として独立させて優遇しても結局は需要=戦争もしくは軍事的な緊張状態が長続きしなければ迂闊に設備投資も行えず無理にやったとしても突然需要が無くなりました、需要が無ければ大規模な設備投資に回した資金が回収できず倒産するしかありませんになりますから財務省の壁だけクリアすれば良いという訳では無いでしょう。
      今日の安全保障環境ならばしばらくは長続きするでしょうけど、日本はまず武器を外国にきちんと販売出来るようにしないと話にならないですからね。
      国内需要だけでは採算が取れず防衛事業から相次いで撤退していく企業の二の舞です。

      30
        • のー
        • 2023年 2月 09日

        戦争も永遠に続くわけでもないだろうから。弾薬工場が出来た頃には特需も終わって世界中で砲弾が余りそう。
        コロナの影響で世界中が半導体不足に陥って、慌てて増産したら余って困ってるのと同じ。
        マスク工場なんかもそうだった。
        ウクライナの戦後には海外に販売どころか、余った兵器が値崩れして大変な事になりそうな予感。
        まあ戦時に備えて兵器の生産余力が十二分にあること自体が抑止力の一環で、結果的に戦争を防ぐ面もあるから判断が難しいよね。

        19
    • ぱんぱーす
    • 2023年 2月 09日

    大昔から戦争当事国は儲からないけど、そこへ物を売る第3国は大儲けしますね。
    砲弾以外にも必要なものは沢山ありますし、特需で儲かっている国は他にもありそうです。
    ウクライナへの様々な支援は無償の持ち出しばかりですし、支援国の方は当事国と同じく懐事情が長引くほどに厳しくなって来そうなのが心配です。

    19
    • kitty
    • 2023年 2月 09日

    「爆発的な砲弾需要」って親父ギャグ…。

    11
    • 折口
    • 2023年 2月 09日

    今週のForgotten Weaponsが「大英帝国が輸入してロシア帝国に提供されフィンランドで使われた後エストニアに供与された有坂銃」の話でしたけど、戦争当事国とその周辺国が武器をかき集めるために域外の軍事産業に買いが殺到するというのは今も昔も一緒なんですねえ。

    8
    • ブルーピーコック
    • 2023年 2月 09日

    これを機にG6ライノとか南アフリカの兵器が注目されたり新規開発されたら個人的に嬉しいが、さすがに砲弾特需だけじゃ厳しいかな。

    • 58式素人
    • 2023年 2月 09日

    ラインメタル社は色々な所に顔を出してきますね。
    まるで、ロッキード/マーティン社みたいですね。
    良く監視していないとですね。
    そうでないと、自社の規模の大きさに物を言わせて、
    自社以外の同業他社を吸収・合併・合理化とやらで滅ぼし、
    結果、各国の防衛産業の基盤を破壊しそうで怖いです。
    その復興には各国の政府資金を使わさせられそうですし。
    考えすぎかな。

      • ブルーピーコック
      • 2023年 2月 09日

      考え過ぎですね。ラインメタルは2020年の段階でドイツ最大の軍事企業ですが、ディフェンスニュースの世界の防衛産業ランキングで27位。主力事業である防衛(比率6割)と自動車部品(4割)を足しても売り上げ高が約8300億円(当時)の企業です。確かに色々とやってはいますが、アメリカ企業はおろか、BAEやレオナルドにも遠く及びません。
      ちなみに三菱重工は2020年の軍事産業ランキング26位でグループ全体の売り上げ高が約3兆6000億円です。

      7
        • 58式素人
        • 2023年 2月 09日

        そうでしたか。
        ありがとうございます。

        • ザコ
        • 2023年 2月 09日

        武器輸出大国なのに企業の1つ1つはそんなに売上が高いわけではないってのも面白いですねドイツ。有名どころの企業も多いのに。

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