イスラエル国防軍はイランの報復規模が想定を下回る理由について「空爆で弾道ミサイルや発射装置を破壊しているため」と説明していたが、空軍は「常に無人航空機をイラン上空に飛ばして弾道ミサイルの発射を抑制している」「イラン側は上空から常に監視されていることに驚いている」と明かした。
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参考:IDF says some 950 Iranian drones destroyed before being launched at Israel
今のところイスラエル国防軍や空軍の主張や説明は妥当なものだろう
イスラエル国防軍は対イラン作戦計画を立案した際「イランが弾道ミサイルを約2,500発保有している」「イランがイスラエルの攻撃に対する初期対応として数百発の弾道ミサイルを一斉発射する」「イランの継続的な弾道ミサイルによる攻撃で甚大な被害が生じる」と覚悟していたが、イランが初期対応して発射した弾道ミサイルは約100発に過ぎず、13日~19日までにイスラエルに向けて発射された弾道ミサイルも約470発で、イスラエル国防軍は「作戦で想定していた基準を大幅に下回っている」と述べている。

出典:X経由のキャプチャー
米メディアは「イスラエルが保有している迎撃弾が不足する恐れがある」と懸念しているものの、イスラエル国防軍のザミール参謀総長は金曜日「数ヶ月前に準備が始まった作戦計画はイランが保有する弾道ミサイルとドローンを考慮している」「我々は如何なるシナリオにも対応できる準備と用意がある」と述べ、Times of Israelは「これは米メディアの予測を覆すものだ」「イスラエル国防軍は約2,500発の弾道ミサイルに対して事前の準備が出来てたことを意味する」と報じているのが興味深い。
イスラエル国防軍は「我々の防空シールドはイランの攻撃を効果的に阻止できるが、どれほど多層的に構築された防空システムが優れていても完全ではない」と繰り返し表明しており、これは対イラン作戦が始まってから主張し始めているのではなく、ハマスやヒズボラとの戦いから継続して主張している内容で、イスラエル国防軍も「脅威の全てに対処すれば迎撃リソースが枯渇する」と分かっているため「素早く着弾地点を予測して事前のプロトコル=重大な損害をもたらさないものは迎撃しない」と決めている。

出典:X経由のキャプチャー
Times of Israelは軍当局者の話を引用して「イランが発射する弾道ミサイルの5%~10%がイスラエル領内に到達して着弾している」「この数字には『迎撃に失敗したもの』と『事前のプロトコルに従って迎撃しなかったもの』が含まれる」「5%~10%という数字は4月と10月にイランがイスラエルを攻撃した際の迎撃率とほぼ同じだ」と述べたが、防空シールドをすり抜けた23.5発~47発の弾道ミサイルで民間人24名が死亡し、数千名の人々が負傷している。
さらに軍当局者は「イランが発射した約1,000機のドローンのうちイスラエル領空に侵入できたのは200機未満」「侵入できたドローンも目標に到達できたものは1機もない」「全て空軍と海軍によって撃墜された」と述べていたが、21日にShahed-136×1機の迎撃に失敗してイスラエル北部ベト・シェアンの住宅に着弾したことが確認され、Times of Israelは「空軍は20日夜~21日午後までに約40機のドローンを撃墜した発表したが、イランのドローンが初めて物理的な損害をもたらした」「ベト・シェアン以外でもゴラン高原の荒野と南部アラバの90号線近くにドローンが1機づつ墜落した」と報じており、こちらも完璧に防ぐことは難しいようだ。
No injuries were found after medics scanned a two-story home in Beit She’an that was hit by an Iranian drone, Magen David Adom says. pic.twitter.com/l4K0hWI0FP
— Emanuel (Mannie) Fabian (@manniefabian) June 21, 2025
因みにイスラエル国防軍はイランの報復規模が想定を下回る理由について「空爆で弾道ミサイルや発射装置を破壊しているため」「イランは弾道ミサイルを一斉発射するのに苦労している」と説明していたが、空軍のトメル・バー少将は21日「常に無人航空機をイラン上空に飛ばして弾道ミサイルの発射を抑制している」「発射を0にすることは出来ないものの非常に高い効果を上げている」「イラン側は上空から常に監視されていることに驚いている」と、イスラエル国防軍も「イラン軍兵士は無人航空機に追われてと感じ、発射装置を放棄して逃げ出す様子が確認されている」と明かしている。
米空軍は湾岸戦争時、イラク軍がスカッドミサイルを発射した移動式発射装置の撤収作業に30分かかると考え、これだけの時間があればDSP衛星が発射を検出し、射点の座標を割り出し、戦闘機で撤収作業中の移動式発射装置を破壊できると計算していたものの結果は散々で、計2,493回のミッションで発射装置によく似た燃料補給車輌や囮を破壊することしかできず、本物の移動式発射装置を1基も破壊することが出来なかった。

出典:Photo by Staff Sgt. Taylor Drzazgowski
イラク軍はソ連のマニュアルに頼るのではなく「30分かかるはずだった移動式発射装置の撤収作業を6分に短縮する方法」を発見し、スカッドミサイルを発射して直ぐ逃走したため、当時のISR能力では移動式発射装置の位置を把握するのが困難で、最終的に推定射点や移動式発射装置が隠れていそうな場所をB-52で爆撃してスカッドミサイルの発射を抑制したが、最後までスカッドミサイルの発射を止めることは出来ず、米空軍にとって最大の失策と呼ばれている。
イスラエル空軍がイラン上空に飛ばしている無人航空機が何なのかは不明で、最も可能性が高いのはイラン領空で迎撃が確認されているHermes900だが、テヘランを含むイラン西部上空の安全はほぼ確保されている状況らしいので非ステルスタイプでも許容範囲内の生存性を確保できている可能性が高く、米空軍がスカッド狩りに失敗したのと決定的に異なるは「無人航空機が上空から常時監視し、移動する弾道ミサイル発射装置の捜索ができる」という点だろう。
Video of wreckage of an Isralei Hermes drone shot down by the Iranian air defense in the Isfahan province this morning. pic.twitter.com/JAUpPsJVe7
— Mehdi H. (@mhmiranusa) June 18, 2025
有人機による常時監視など人間には到底不可能で、有人機にとってリスクが高い地域でも無人機なら人的損失を気にすることなく使用できるため、地上配備型防空システムによる上空保護を失えば移動式発射装置の生存性は極端に低下するしかなく、今のところイスラエル国防軍や空軍の主張や説明は妥当なものだろう。
追記:AFPは「今夜(21日午後9時頃)もイランの首都で大きな爆発音が聞こえている」と、国際原子力機関は「エスファハーンの核関連施設=遠心分離機製造工場が攻撃を受けた」と報告し、イラン国営メディアは「2日前にテヘランの自宅で核科学者が攻撃を受けて死亡した」と報じている。
Israeli Air Force fighter jets destroyed three more Iranian F-14 fighter jets in a strike a short while ago in central Iran, the military says. pic.twitter.com/siwEYVfyOp
— Emanuel (Mannie) Fabian (@manniefabian) June 21, 2025
追記:イスラエル国防軍は21日午後9時「空軍の戦闘機60機がイラン中部の空爆を行った」「この作戦過程でイラン空軍のF-14を3機破壊した」と発表、さらに「イランのミサイル発射能力は1週間前と比較して大幅に低下した」「空軍はイランのドローンが発射される前に約950機を破壊した」と発表した。
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※アイキャッチ画像の出典:Israel Defense Forces
ヘルメス900のような時速200㎞程度でゆっくり飛ぶタイプの無人偵察機が、弾道ミサイル運用車両(TEL)の動向を常時監視できるほど、あちこちで飛んでいるとなると、イランの対空能力は多くの地域で壊滅的被害を受けているのは間違いないでしょう。対空ミサイルを撃てば確実に当たるターゲットですから。それがまだ、撃墜したとの報告は僅か1機。
ということは、敢えて撃たずに監視されながらサンドバッグにされる意味はないので、やはり我が物顔でのんびり飛ぶヘルメス900群を撃てる対空ミサイルを撃てるランチャーがかたっぱしから破壊され尽くしたという事ななのでしょう。(少なくとも西部では)
そして、西部から撃たないとイスラエルに届かない弾道ミサイル(射程距離1000㎞程度)はこれで、事実上、意味を失いました。東部地域からでも届く弾道ミサイル(2000㎞級)の数はそう多くないでしょう。
外交見てるとイランも「同盟国から参戦の申し出を受けたが、まだ必要無いと答えた」とか言ってて余裕装ってるんですよね
イスラエルも当然余裕を装ってますが、アメリカの参戦を心待ちにしているようなので実情はどうなのか
空爆だけで戦争が決まらないのはベトナムで立証されてるようなもんですが、ここにモサドの諜報網と斬首作戦が加わった今回はどう転びますやら
ベトナム戦争ではアメリカ軍は200万トン以上の爆弾を北ベトナムに投下しましたが、それ以外には勝てる要素がなかったと思います
①ソ連、中国が北ベトナムを支援したこと
②物資輸送のホーチミン・ルートはラオス・カンボジア領内を通っていたこと
③アメリカが支援した南ベトナム政府の腐敗が酷く、アメリカの世論が反戦に傾いたこと
など
興味深いニュースですけど
ドローン化を怠ってきた日本は有事の際は監視される側だって所が悲しい
いや、これ本当勘違いされがちですけど日本はドローンに関してはそれなりに先進的だったんですよ
ただ金と周波数が足りなくて……(それを怠ったと言われればそう)
それはアップルやサムスンやファーウェイに対して、
「携帯電話の元祖は日本なんですよ」と自慢するくらい虚しい話。
少子化で自衛隊員の確保が難しくなっている&シーレーン防衛のためにも
無人機による洋上&海中監視すべきだと思うんですけどねぇ
本来イランは米軍のリーパー?の通信指令をジャックして、拿捕するくらいにはこの分野に強かったはずだが、無人機で監視されてる+有人機からのスタンドオフで何時でも狙われてるせいで悠長に電子戦攻撃もできないんだろう。
防空分野や対地攻撃では多層化が進んでるが、空軍側でも無人機、有人機の多層化が大きく進んだのかもしれないな。
イスラエル国防軍はそう主張するしかないわな
イランのAH-1が空爆で破壊されたニュースで「AH-1はイラン領空で作戦中のイスラエル軍航空機に打撃を与えることを目的としていた」というイスラエル軍のコメントに、対空ミサイルを積めるとしてもヘリで対空戦?ミサイル艇的なアンブッシュ攻撃にでも使わない限りは無理過ぎて訳が分からん、と思いましたが。
仮に対象が軽飛行機並みの速度で飛ぶ無人機であれば、ヘリでも充分に役に立つのかなぁ?飛行高度差的に機銃では無くミサイル使うんだろうけど、と一応は思える話ではあります。
もっとも、のこのこ飛んでる所を逆にイスラエル空軍機に堕とされそうでもありますけど。
ついにアメリカが今回の戦争に参戦したみたいですね。
B2が3箇所を爆撃したそうです。
せっかく足抜けできた中等の泥沼に再度引き込まれるか、はたまた偉大な勝利に終わるのか。
どちらでしょうね。
西側は2正面作戦になりましたがロシアにはウクライナ先頭に欧州が当たり、イランにはイスラエル先頭にアメリカが当たるということでしょうけど西側の思惑通りに上手く行く様に見えないのと万一中国が動いたらどう対処するのか、すでに対抗策あるのかまたはそんなことは起きないに賭けているのか気になる所です。
ロシアには失敗しましたがイランにも短期で決着付ける思惑だとは思いますが、泥沼な戦いになる様にしか今の所は見えないですね。
アメリカが、イラン攻撃に参加したようですね。
イスラエルの攻撃があまりにも成功して、イランんが弱体化したと判断されたのかもしれません。
ディエゴガルシア島に、B2配備のニュースが少し前にでていましたが、ここから発進したのであればイギリスに通知されるためイギリスも知っていたことになります。
米国がイランの核施設を攻撃。今の段階の情報では狙われたのは出入り口とのこと。
極度の情報戦が双方から発信されます。冷静になって、何が起こるかを様子を見る必要があります。
最良のシナリオはトランプは化学兵器疑惑のシリアで過去に行った攻撃を再現した。これは象徴的攻撃にとどまりイスラエルを宥め、イランには事前に通知していたもの。イランの抑制された報復ののち、交渉と停戦が行われる。
最悪のシナリオは核施設を中途半端に破壊し、地上侵攻を含んだ全面戦争へと突入する。米軍はイラン戦争にかかりきりとなり、大損害を被り世界は急速に不安定になる。核兵器も使用される。
こないだUCAVの重要性を確認する記事があったけど、それを追認するような出来事やね
我が国にも欲しい
F-14もったいない、、、