中東アフリカ関連

Trophyのアップグレード、ドローン攻撃の脅威から戦闘車輌を保護

米陸軍のノーマン准将は「FPVドローンの攻撃を防ぐようにエイブラムスは設計されていない」と明かしていたが、Rafaelは自社製APS=Trophyについて「ソフトウェアをアップグレードするだけで対戦車ミサイルやドローンのトップアタックを防げるようになった」と発表した。

参考:Trophy vehicle-defense system gets top-attack upgrade
参考:Japan to upgrade Type 10 MBT

TrophyもIron Fistも「ドローンの脅威に対抗できる」という点で潜在的な顧客の関心を大いに引き付けるはずだ

米陸軍は10年近くエイブラムス、ブラッドレー、ストライカーへのアクティブ保護システム(APS)統合を研究し、エイブラムスのM1A2/SEPv3パッケージにTrophyを採用したものの、ウクライナとロシアの戦いに安価なFPVドローンが登場し、一部の高価な対戦車ミサイルでしか実行できなかったトップアタックが多用され、米陸軍でNext Generation Combat Vehicle(NGCV)プログラムの責任者を務めるノーマン准将も「FPVドローンの脅威は全ての戦闘車輌にとって現実的な問題だ」と述べたことがある。

出典:Photo by Sgt. Timothy Massey

ノーマン准将はBreaking Defenseの取材に「エイブラムスは敵戦車等からの直接攻撃に対して非常に高い防御力を備えているもの、トップアタック式のミサイル、徘徊型弾薬、FPVドローンを使用した上からの攻撃を防ぐように設計されていない」「エイブラムスが効果を発揮するには機動し続けなければならず静止状態ではあらゆる脅威に対して脆弱になる」「FPVドローンなどの上からの脅威に対してエイブラムスの装甲は薄すぎる」「M1E3では直接攻撃に加えてトップアタックを受ける上面の保護能力の強化に取り組んでいる」「このトップアタック・プロテクションにはアクティブ防護システム(APS)が含まれる」と言及。

Elbit SystemsはブラッドレーのM2A4E1パッケージに採用されたIron Fist Light Decoupled=IF-LD(Iron Fistの米陸軍向けの改良モデル)について「ロケット弾や対戦車ミサイルに対する保護能力を維持したままドローンにも対応できると実証した」と主張し、トップアタックを仕掛けるFPVドローンや徘徊型弾薬にもIron Fistは「対応できる」と示唆していたが、RafaelもTrophyについて「新たなアップグレードによって対戦車ミサイルやドローンによるトップアタックを防げるようになった」と発表。

これは米陸軍協会の年次総会に先立って行われた業界関係者向けミーティングで発表されたもので、DefenseNewsは「このミーティングでトップアタックを仕掛けるドローンの破壊映像(一般公開されている映像と同じかどうかは不明)が公開された」「アップグレードの詳しい内容や導入時期は明かされなかったが、既存のTrophyにインストールされたソフトウェアをアップグレードするだけで対トップアタック機能が利用できるようになる」「Rafaelは来週の年次総会でTrophyを展示する予定だ」と報じており、TrophyもIron Fistも「ドローンの脅威にも対抗できる」という点で潜在的な顧客の関心を大いに引き付けるはずだ。

因みにJanesは「防衛省が10式戦車のアップグレードに関する文書を発行した」「この文書はAPSとRWSの取得に焦点を当てている」「APSは接近する対戦車弾を、RWSは接近するドローンを検出可能なセンサーを備えている必要がある」「未確認ながら防衛省はRafaelのTrophy、Elbit SystemsのIron Fist、RheinmetallのStrikeShieldを検討中していると報じられている」「RWSはKongsbergのPROTECTOR RS6が検討されている」と報じている。

StrikeShieldの採用実績はシンガポール陸軍のLeopard 2SGとハンガリー陸軍のKF41 Lynxのみで実戦経験もなく、米陸軍もストライカー向けのAPSに提案されたものの採用していないため、10式戦車のAPSはTrophyかIron Fistのどちらかになる可能性が高く、Trophyはシステム全体の重量がIron Fistよりもかさばると言われており、10式戦車の特徴=軽さを維持するならIron Fistの方が有利なのかもしれない。

関連記事:BAEがブラッドレーA4派生型を大量受注、APS搭載のM2A4E1か
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関連記事:ブラッドレー向けのAPS、米陸軍がIron Fist改良型の生産に資金供給を開始

 

※アイキャッチ画像の出典:RAFAEL Advanced Defense Systems Ltd

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コメント

    • バンダイは早くジムⅢのMGを作ってくれ
    • 2024年 10月 09日

    パレスチナ人とかどうでもいいから
    日本にもこうゆうのもっと売ってほしいなぁ~
    APS付き10を早よう見たい

    8
    • 名無し
    • 2024年 10月 09日

    流石にプログラムのアップデートだけで対処出来るというのは信じられん
    つかドローンのプログラム変えられたら終わりとかいう落ち?

    8
      • 理想はこの翼では届かない
      • 2024年 10月 09日

      Y軸制御(仰角)の角度制限(60度ぐらい?)を85度ぐらいまでにするんじゃないですかね?
      それならソフトウェアのアップデートで対応可能なのだと思います

      5
    • ak
    • 2024年 10月 09日

    一方、ロシアは亀戦車を使った

    9
      • 田舎者
      • 2024年 10月 09日

      TrophyかIron Fistの2択ではなく、実戦で活躍中の亀戦車も選択肢に入れて欲しいものです。模倣も検証も可能でしょうし。

      金属はもちろん、高強度繊維など素材を駆使して軽量化したり、色々と工夫の余地がある防御技術に思えてなりません。

      9
        • ak
        • 2024年 10月 09日

        別に亀戦車をバカにしている訳では無く、アメリカ式の大金と高度な技術によるやたらと高価な高性能兵器ではなく、シュルツェンやスラット装甲のようにありあわせの物で即応性のある有効な対抗策が取れる柔軟性は、やはりもっと評価するべきだと考える次第です。

        古タイヤを被せてのイメージセンシング防御策、なんていうのも有りましたし。

        6
          • 田舎者
          • 2024年 10月 10日

          亀戦車に関しては、露が継続して投入していますので、ある程度の効果は認めざるを得ないと考えています。他の人が仰る通り、視界不良や重量増加だったり隙間に入り込んだりと、欠点も既に露呈はしていますが、基本的な発想が優れた兵器は改良を加えて発展存続するものだと思います。

          亀スタイルだけを発展応用して巨大ポリカーボネートを被せるとか、甲羅に隠せる短主砲が流行するとか、色々な未来戦車の形を想像するのも楽しみではあります。

          1
        • hoge
        • 2024年 10月 09日

        成形炸薬にしか効果がないので、相手が十分な数のMBTを持っていたらむしろ限られた視界と発見のしやすさ、重量から生存性が下がるまであると思われ。

        3
          • イーロンマスク
          • 2024年 10月 09日

          高価になると調達性が悪化するので一長一短かな

          2
      • k.ziro
      • 2024年 10月 09日

      亀戦車の装甲の隙間に潜り込むという対抗策もあるけどね

      3
    • 無印
    • 2024年 10月 09日

    プロテクターRS6って30mmチェーンガンも使えるじゃないですか~
    10式のカウンタードローンに、30mmRWSが使われるって話は本当だったのか

    2
    • 58式素人
    • 2024年 10月 09日

    どうなのでしょう。
    イスラエルのAPSは、素人にはクレイモア指向性地雷の逆使いに見えますが(笑)。
    ショットガン形式の物はないのでしょうか。機関砲の薬莢を再利用する形で。
    たとえば、M61バルカンの砲弾は20×102ですが、薬莢のネックの始まる部分の
    直径は約27mmで、ネックを除いた長さは約85mmです。これを薬莢として(笑)。
    これにBBB規格(4.83φ)の軟鉄弾とショットガン用の火薬を詰め込んで(笑)。
    内径30mmの滑空式短銃身で(笑)、これを吹き戻し式のフルオートで(笑)。
    弾倉は200発くらいで(笑)。
    最近出てきたドローン用のレーダーと組合わせて、IFF無しの全自動砲塔で。
    そもそも、APSが必要な場面でIFFは必要無いだろうし。
    言わば、戦車用CIWSですね。これを戦車の機関部のケージ装甲の無い部分に(笑)。
    以上、妄想/冗談として(笑)。

    2
      • NHG
      • 2024年 10月 09日

      味方への巻き込み被害を抑えようとすると逆クレイモアタイプにならざるをえないのでは
      戦車用というか歩兵随伴用CIWS車両(ドローンとか戦車のようなデカブツではない)は可能性として結構あると思う

      3
    • まる
    • 2024年 10月 09日

    既存のAPSそのままであるなら、RPG-30のような先行囮弾の間隙で主弾頭を当てるような攻撃に対してはなすすべもなく無力化されてしまうのではないでしょうか?ドローンにATGMを搭載するテストも行われていますし、小型の囮ロケットを装備するのは技術的にも難しくないと思われます。

    2
    • kitty
    • 2024年 10月 09日

    トロフィーって現場で再装填できるものなんですかね。
    ウクライナ戦争での戦訓で、FPVドローン1機だけで戦車を襲ってくるとは限らないとも、わかっているはずですが。

    7
    • うくらいだ
    • 2024年 10月 09日

    素晴らしいですね
    アメリカは戦死者をださずに現代戦の経験を着実に積んでいけてますね

    2
    • nimo
    • 2024年 10月 09日

    攻撃防御共に進歩が速い分野だから導入した頃には微妙な性能になってそうで
    導入のタイミングが難しいところ

    3
    • bbb
    • 2024年 10月 10日

    陸自のTKも本格戦争仕様のでも対空はRWSになるわけですが対ドローンができるRWSというのはつまり対空用の自爆弾薬を使うという事です。それか訓練徹甲弾に同じく自壊するHMG弾頭を作る他ありません。
    しかし自壊しようが銃弾で落とすのはかなり困難です。対戦車自爆ドローンが相手ならエアバ砲弾が必須。つまり軽量なアパッチの30mmです。あれで多砲塔化ですね。
    10式の次はMCVで、ということになるがその前に新型IFVでやれよって話です。10式優先なのは第7師団のFVが数でも能力でも機能付与が無理だからに他なりません。西部戦車隊なら対空機能付与の24式IFVを運用すればよい。
    それこそCV90カメレオンに同じく低空レーダー追加でです。
    7Dの編成を変えないのならば対ドローンはTKの役割にならざるを得ない。しかもAWが近距離SAM化される既定路線も変わりなければ尚更そうなる。ドローン影響で7Dは変わる他無いというのがなんとも。

    • 田舎者
    • 2024年 10月 10日

    ドローン対策と言えば、ドラゴンドローンによる戦車破壊動画が公表されていますね。

    今回は停止してからの介錯担当のようにも見えますが、いずれは作戦行動中に追尾して上空からバラまく技術になるだろうと予想されます。TrophyやIron Fistはそういう攻撃を想定しているのか、対応出来るのかが気になります。

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