日本とアラブ首長国連邦は2023年5月「防衛装備品・技術移転協定」に署名、外務省は今年1月「同協定が正式に発効した」と発表していたが、Tactical Reporは今月16日「UAEは日本と最先端軍事技術の移転と現地化について協議中だ」と報じている。
参考:UAE to expand strategic defense cooperation with Japa
日本は防衛装備品・技術移転協定を通じて何を狙っているのか興味を惹かれる
日本とアラブ首長国連邦(UAE)は2023年5月「二国間で防衛装備品の輸出入を可能にする防衛装備品・技術移転協定」に署名、外務省は今年1月「両国は昨年5月に署名された防衛装備品・技術移転協定の国内手続きが完了を通知する外交文書を交換し、同日、同協定が正式に発効した」と発表。
日本は防衛装備品・技術移転協定を通じて何を狙っているか不明で、数年前から取り沙汰されているC-2の輸出は続報が全くなく、韓国とUAEは2023年1月「多目的輸送機の共同開発に関するMOUに署名した」と発表しており、現在もC-2の取得に興味を持っているのかは謎に包まれているが、Tactical Report(MENA地域をカバーする業界紙)は16日「UAE国防省は日本と最先端軍事技術の移転と現地化について協議中だ」と報じている。
Tactical Reportのレポートは有料(非常に高額)なので中身を見ることは出来ないが、UAEに関連したレポートの見出しには「短距離および中距離の防空システムに関する国際競争」「軍事用途の衛星購入」「軍事衛星技術の獲得」「EWシステムの国産化に対する海外企業の提案」といったものが並んでいるため、もしかすると日本政府や日本企業は防空システム、軍事衛星、EWシステムのUAE輸出を模索している可能性があるものの、UAEが日本に何かを売り込んでいる可能性も否定できない。
#陸上自衛隊 は、#防衛力の抜本的強化 のため、人的損耗を局限しつつ、空中・地上において非対称的な優勢を獲得するための無人アセット防衛能力の強化の取組として、偵察や輸送等の任務において長期連続運用可能な #UAV #UGV を用いた実証を行い、その本格導入に向けた検討を加速していきます。 pic.twitter.com/jpNHf23ynF
— 陸上自衛隊 (@JGSDF_pr) March 26, 2024
陸上自衛隊は4月末「空中や地上における非対称的な優勢を獲得するための無人アセット防衛能力強化として、偵察・輸送任務に使用でき長期連続運用が可能なUAVやUGVの実証を行い、本格導入に向けた検討を加速していく」と表明、実証に使用する装備にはFuji imvac製のE-5L、Milrem Robotics製のTHeMIS、Rheinmetall製のMission Master SP、Ghost Robotics製のVISION 60が含まれており、THeMISを供給するMilrem RoboticsはUAEのEDGEグループの企業だ。
UAEはMilrem Roboticsを買収することでTYPE-XやTHeMISを手に入れ、既にTHeMISにEDGE製の徘徊型弾薬を統合した製品が登場するなど大きな注目を集めている。特にEDGEは徘徊型弾薬、無人機、精密誘導兵器分野に強みがあり、欧米企業との幅広い協力関係を構築することで艦艇輸出や海外プログラムへの参加も積極的に取り組んでいる。
米陸軍は昨年12月「2029年度までにCoyote Block2とCoyote Block3を計6,700発調達する」と発表、これはRTXが開発した「小型ドローンを小型ドローンで破壊する」というカウンタードローンシステムの一種で、RTXと提携したEDGEはCoyoteの米軍調達に部品供給という形で食い込んでおり、FincantieriとEDGEは今年2月「合弁会社を設立して艦艇の共同建造を行う」と発表、アブダビに設立される合弁会社はUAEのG2G協定や輸出向け信用融資パッケージを活用してNATO加盟国以外からの受注獲得を目指す予定だ。
Indraとはレーダー生産に関連した合弁会社設立で合意しており、Indraは「今回の合意によってEDGEは非NATO諸国から受注した300ものレーダー製造に関与できるようになる」と、EDGEも「合弁会社を通じて関与できるレーダー生産の価値は22億ユーロ相当だ」「この合弁会社は非NATOの未開拓市場をターゲットして受注拡大を目指す」と述べており、IndraとEDGEはUAE、アフリカ、南米、東南アジアへのレーダー売り込みで手を組んだと評価されている。
もはや防衛装備品も一方的に売りつける時代ではなく「双方が利益を分け合う時代」になっているため、日本がUAEに防衛装備品を輸出するなら「見返り」や「協力」を求められる可能性が高く、防衛装備品・技術移転協定を通じて何を狙っているのか興味を惹かれる部分だ。
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※アイキャッチ画像の出典:首相官邸
これは多くの日本市民から支持を得られないでしょう。国会でも全ての野党が反対すると思われます。現在、中東諸国は欧米製戦闘機でイエメンの市民を爆撃したりイランと戦争をしようとしています。そんな紛争地帯への軍事輸出や協力は日本の平和国家としての良いイメージを壊し対日警戒感を呼び起こすだけで日本の利益になりません。一部の軍需産業が喜ぶだけの馬鹿げた政策だと私は断言します。冷静な議論をお願いします
君らって常に日本市民って言うよね。なんで国民と言わないんだい?日本国籍持ってない人も含んだりしてるのかい?
それはさておき、UAEは中東の中ではそこまでフーシとの関わりもないし(国内の米軍基地が攻撃されたりはあるけど)、シーア派とスンニ派というお互いに理解し合えない関係からイランに対する姿勢が悪くなるのはあるけど、スンニ派のドンのサウジみたく「◯ねイラン!」ってほどではないし、複雑怪奇な中東にしては温厚なところではないかな。
今回の記事で思うのは得体のしれない、何人いるかも変わらないくせに国民の代表者ヅラする日本市民のお気持ちとかどーでもよくて、外交が上手いとは思えない岸田首相が輸出成績の獲得のために頭を下げたりしないよな?ってことくらいかな
ところでこういう平和国家のイメージみたいなのって、どれくらい認知?されてるのでしょう。
政府レベルでは別段重視されないとして、市民のレベルで「日本は平和憲法のある良い国」みたいな認識ってあるんでしょうかね。そしてそのイメージが対日政策を柔らかくしている実例は果たしてあるのかという・・・
まあ実際武器輸出や憲法なんかで政策の転換があれば何かしら相手の反応が返ってくるとは思いますが、それは政府のレベルで行われることだし、そこに市民のイメージとかは特に関係ないような。
平和国家とは思われてないんじゃない?
普通はどんな憲法があるかよりどんな武器をどれだけ持ってるかで判断する
日本は300機もの軍用機に多数のイージス艦、外洋向け大型潜水艦を保有してるんだし、下手に手を出せない程度は危険視されてるよ
自分達が中国を見るときも憲法より兵器の量を見るでしょ?
そうですね。支持は得られないでしょうね
安全保障に興味のない日本人は多すぎますから、いまだに過去のロジックで反対します。
あきらかに現在の状況は20世紀と変わったのですから、それに合わせて変えていく必要があると思います。
本当馬鹿気た政策とは一蹴せずに、冷静な議論をお願いしたいですね。
中京の軍拡にもロシアのウクライナ侵略にも音無しの『日本市民』さんね・・・。
日本国民は冷静に見てますよ。
平和や人権といった言葉を武器に悪用して他者を攻撃するその『市民』とやらの胡散臭さをね。
マスコミや野党は騒ぎ立てるかも知れませんが大方の国民は然程の関心を示さないでしょう。
「日本市民」「全ての野党」「中東諸国」主語がいちいちクソデカいけど中身は全部個人の感想。
日本はUAEの無人機に興味がある
UAEは日本の衛星に興味がある…?
政府は中東諸国の中でUAEとの友好関係を特に重視していて、同国とは2018年に「包括的・戦略的パートナーシップ・イニシアティブ(CSPI)」を締結し5項目の共有ビジョンを確認しました。2022年にCSPIの実施に関する共同宣言に調印しましたが法的拘束力はなく、原則として両国それぞれの予算割当に従って実施されます。
「防衛装備品及び技術協力」はビジョン共有する5項目中「防衛及び安全保障」での重点協議議題です。協議議題に上がったとしても、CSPIに資するか、双方に益があるか否かが判断基準になるはずです。
UAEは日本との衛星開発協業を望んでいるかもしれませんが、日本側がUAEの無人機技術に興味があるかは疑問です。
>軍事用途の衛星購入
そういえばUAEの火星探査機を日本のロケットで打ち上げたことがありましたね。湾岸諸国の軍事分野のニーズはカントリーリスクへの評価も含めて韓国のほうに流れていきそうですが、人工衛星を製造して打ち上げを依頼する分業というモデルをUAEが考えている可能性もあるのかなと思ったり。
ロケットの打ち上げは静止軌道なら東向き、極軌道なら南北向きが相場です。近年だとドッグレッグ軌道といって打ち上げてから空中で軌道変更を行う飛ばし方もありますが、原則としてロケット打ち上げは国土の東側または南北のいずれかが広い海に面している国が優位です。そこへいくと湾岸諸国などは打ち上げに適しているとは言い難いですし、そもそもロケット産業は重工業技術のハードルが高くインフラ投資が重い割に利幅が薄いので、より利益率の高い人工衛星の受注生産にだけ参入する国は結構あります。人工衛星の製造は半導体製造に近い高度な精密作業ですが、ノウハウさえつかめば工業基盤が遅れた国でもある程度ビジネスとして回していけます。例えば韓国は90年ごろから衛星製造による外貨獲得を奨励していて、現状打ち上げ能力は実質無いけど衛星の海外受注は一定数持っています(ただしあの国の目標は宇宙インフラアクセスの完全自立であって、打ち上げを海外に依存する状態は本心では屈辱らしい)。UAEは学術探査衛星の製造ノウハウは既にあるので、商用ハブ衛星の製造開発に関するノウハウを拡充して本格的に商業進出する……とかはありそうな。
いいね
中東へ独自の影響力を持とうとするのは賛成
C-2も売れるなら売った方がいい
影響力が欲しくないと言えばうそになるけど
あの政治・宗教・民族問題で泥沼の地に、もめ事に巻き込まれるほど足を突っ込むのは大反対
原油輸入の9割を中東がしめてなければそうも言えるんだけどね、、、
軍事について詳しいことは良くわかりませんが、結局UAEは『雇用』や『産業』が欲しいということであっていますか?
しかし工業は民生品だろうと軍需品だろうと、結局淡水が無いと二進も三進もいかないのでは?
金持ち産油国は雇用は間に合ってるどころか労働力不足で多数の外国人労働者を受け入れているよ
雇用人なりたがる人は少なく起業家経営者ばかり
石油ビジネスに変わる産業を育成したいのは各国共通の課題だけど
金持ち国家にとっては海水淡水化は何の障害にもならんよ。
その指摘は正しい、正しいけど、それでもしないといけないという意識があるからだと思われ
ただ現在、中東産油国諸国は軒並み、国家財政破綻の危機回避
(原油価格の下落 + 国民に対して、政治に口出しさせない代わりにお金をばらまく政策が原因)
に焦っているので、淡水プラントの調達は危機回避に比べれば安いものだという割り切りがあったり
あと水をタンカーなどで輸入する(過去には南極の氷を運ぶ案もあったらしい)という事も考慮に入れているはず
我々の感覚では考えられないかもしれないけれど、我々と彼らとでは、水と石油の貴重さ・価値感が逆な部分があるので
いやそれむしろ「それだけ貴重」という説明になっちゃってるんですが。
産業用に大量に必要とする場合「入手手段がある」だけでは足りなくて「安価に入手」する必要があります。
そう
だからそれだけ本気ってこと
実際、サウジでちょっと税金とり始めただけで、ものすごい反発が出た現実もあるし
(イランという前例があるので)革命やクーデターの事が頭ちらつく以上、やるしかないんだよね
中東産油国がアニメやらゲームやらの文化的な産業育成にも手を出してるのも、文化的な影響力以外にも、水などその辺りの事も考慮されてるんだろうなぁ
UAEは、石油=天然ガスの安定販売、シェア確保が国策の第一でしょう。
日本企業と、天然ガス開発案件もあります。
トランプ政権になれば、アメリカも規制緩和による開発増産。輸出に力を入れる可能性が既に出ています。
トランプ政権=ウクライナ戦争集結の可能性を見据えれば、石油天然ガスマーケットはどうなるのか分からないですからね。
(2024年07月17日 三井物産がUAEのLNGプロジェクトに参画(アラブ首長国連邦)ドバイ発 ジェトロ)
UAE含めてあの辺りは日本と凄く良好な関係で、電気代バク上がり欧州を横目にオイル買えてるのは此処(だけでもないですが)のおかげ。
現在のUAEは穏健派なのでお付き合いをするには問題ないと思います。
防空システムならKM-SAM導入するらしいからお呼びじゃないと思う。輸送機に関しても韓国と共同開発の話なかったっけ。
EWなら国交再開したイスラエルエルビット・システムズかラファエル・アドバンスト・ディフェンス・システムズ、欧州のBAEシステムズ、レオナルド。米国ならRTX、L3ハリス・テクノロジーズみたいな実績ある企業が沢山。
衛星ならまだ三菱電機やNEC、キヤノン電子、SynspectiveやQPS研究所とか様々な企業あるからワンチャンありそうだけど政府次第になると思うが足引っ張りそうではある。
現地化って言うなら航空関連とか船舶関連とかじゃない?
電機関連って生産量そんな多くないと産業を維持できないだろうし。
以前から軍事研究誌で中東湾岸諸国の軍事産業への投資や技術開発能力についての記事を見ているだけにここまで来たのねという感想。
彼の国(UAE)はあちこから部品を集めて、
自国内で組立てをするつもりかな?。
素材から造るつもりは無さそうに見えます。うまく運ぶと良いですね。
ヒット商品を当てれば良いのですが、外すと終わり、みたいな。