中東アフリカ関連

アラブ首長国連邦、韓国から取得した長距離防空システムを初めて公開

韓国製の長距離防空システム=Cheongung-IIは競合を打ち破って2022年1月にアラブ首長国連邦、2023年11月にサウジアラビア、2024年9月にイラクから受注を獲得していたが、UAE国防省は12日に公開した映像の中でCheongung-IIを初披露し、Janesも「韓国製防空システムの引き渡しが確認された」と報じた。

参考:وزارة الدفاع |MOD UAE
参考:UAE M-SAM delivery confirmed

アラブ首長国連邦が映像で導入したCheongung-IIを初披露

韓国製のCheongung-II(天弓2、KM-SAM-II、MSAM-IIとも表記される)は能力的にパトリオットシステム、SAMP/T、S-400と競合する長距離防空システムで、使用される迎撃弾もPAC-3弾と同じ直撃方式(hit-to-kill)を採用し、航空機や巡航ミサイルだけでなく弾道弾の迎撃にも対応しており、韓国軍はCheongung-IIをパトリオットとTHAADの間の中間層迎撃として運用している。

さらにCheongung-IIは競合との競争にも勝利し、2022年1月にアラブ首長国連邦、2023年11月にサウジアラビア、2024年9月にイラクから受注を獲得、韓国国防部は2023年2月に「アブダビを訪問した李鐘燮長官がCheongung-IIを運用する部隊を訪問した」「Cheongung-IIは現地でのテストを終えて砂漠環境における性能を確認した」と発表したため「契約締結から約1年後に最初のシステムが引き渡された」と確認されていた。

UAE国防省もアルダフラ空軍基地を訪問したムハンマド皇太子がCheongung-II、Pantsir-S1、THAAD、パトリオット、ミラージュ2000-9、F-16E、GlobalEye、A330MRTT、C-17などを視察する様子を12日に公開、映像で導入したCheongung-IIを初披露した格好で、Janesも「韓国製防空システム=MSAM-IIの引き渡しが確認された」と報じている。

因みにLIG Nex1が3ヶ国と交わした契約額の総額は95億ドル=1.4兆円(現在のレート換算)以上にもなり、この地域特有の不安定な事情を鑑みると実戦を経験するのも時間の問題で、その評価次第で新たなチャンスを掴むかもしれない。

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※アイキャッチ画像の出典:وزارة الدفاع |MOD UAE

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コメント

  • コメント (7)

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    • かませ
    • 2025年 5月 13日

    サムネの西側兵器群に混ざってるパーンツィリ君…
    ソ連(ロシア)の科学は世界一ィィィ!!!!!
    最近も導入国が一国増えましたからね(北朝鮮のパーンツィリM君)

    3
      • 無印
      • 2025年 5月 13日

      ロシア以外に、パーンツィリMを導入した初めての艦でしたっけ、チェ・ヒョン級
      ロシアが建造を支援したと言われているのに、艦砲が130mmじゃなくて、127mmって言ってるんですよね
      ロシアや中国と揃えるんじゃないんだ、と不思議に思ってしまいました

      UAEは見事に調達先を多角化してますね、これならどこか1国と関係が悪くなっても、その穴を他の国でカバーできる
      これでUAE国産の兵器もあれば完璧なんですが、それはこれからですかね

      4
      • Whiskey Dick
      • 2025年 5月 13日

      パーンツィリは車両一台で使用でき、ミサイルの搭載数も多いですからね。西側でこれに対応できそうなのは陸上転用型のRAMぐらいでしょう。YouTubeでハイマース弾をパーンツィリで撃墜したとする動画が上がっているが、ハイマース弾はマッハ3程度だからギリギリ撃墜可能か。陸自の短SAMだと搭載数が少ないので同じ使い方すればすぐに弾切れしそうですが。

      5
      • T.T
      • 2025年 5月 13日

      天弓もアルマズ・アンティの技術供与受けてるから実質ロシア兵器!

      1
    • たむごん
    • 2025年 5月 13日

    1兆円超の武器取引は凄いですね。

    石油天然ガスの安定的な取引を考えたときに、安全保障面で関係を深められているのは、極めて強力な友好関係を築くことができます。

    シンプルな話しで、プラント工事・傭船など同じような仕事を発注するときに大して違いがなければ、関係の深い国に発注するのは自然な成り行きだろうなと。

    7
    • SB
    • 2025年 5月 13日

    英版wikiにも書いてあるけど『パトリオットとTHAADの間の中間層迎撃』ってなんかおかしくない?
    PAC-3よりも射程・射高で劣ってるし、そもそもこれホークの後継じゃないのか

    12
      • shkk
      • 2025年 5月 13日

      同じ韓国の「L-SAM」って奴の情報が混じってそう?去年開発終了、今年から量産開始のやつ

      英語版wiki翻訳
      L-SAMは、北朝鮮の火星11A(KN-23)や火星11B(KN-24)などの弾道ミサイルを終末段階で撃墜することを目的として開発された。2020年代初頭から計画されている大韓民国空軍の韓国型ミサイル防衛(KAMD)プロジェクトの一環として、多層防御のための上位層地対空ミサイルシステムとなり、下位層はパトリオットPAC-3とKM-SAMバッテリーで構成される。

      ロケットマンが率いる北があるから死活問題だからこそなんだろうけど
      こういうミサイル迎撃システムも(元はどっかと共同開発してたものの発展とはいえ)単独開発してるんやね

      2
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