中東アフリカ関連

アラブ首長国連邦、フーシの攻撃を受けイスラエル製防空システムの緊急調達を検討か

アラブ首長国連邦は簡素な作りのミサイルとドローンの攻撃にパトリオットとTHAADで構成されたミサイル防衛シールドを貫通されてしまい、イスラエル製防空システムの緊急調達に動き出した。

参考:Amid attacks, UAE quietly asks Israel about defense systems: Sources

流石に2年程度で新規調達(訓練込み)できる防空システムはこの世に存在しないだろう

イエメンの反政府組織フーシは巡航ミサイル、中距離弾道ミサイル、ドローンを同時に運用することでアラブ首長国連邦(UAE)のミサイル防衛シールドを貫通、首都アブダビの国際空港や工業地帯に着弾して計9人が死傷する被害が発生したため新たな防空システム導入に動き出したらしい。

出典:ROK Ministry of National Defense 天弓

UAEは防空システム「天弓2/M-SAM BlockII」の導入契約を韓国と締結したばかりだが、米ディフェンス・メディアのBreaking Defenseはイスラエルの情報筋が提供した情報に基づき「UAEがデービッド・スリング、バラク-ER、バラク-8の緊急調達をできないか非公式に打診してきた」と報じており、この情報筋は「UAEがイスラエル製の防空システムに期待しているのは韓国製防空システムが稼働(引き渡し予定は2024年)するまでの繋ぎだ」と語っている。

つまり引き渡しが2024年以降になるとイスラエル製防空システムを緊急調達する意味が失われるため、2022年~2023年までに引き渡しが可能かという点が取引成立のポイントになるのだろう。

出典:Fars News Agency イランが開発してフーシが使用していると思われるカスタムUAV

因みにUAEは「デービッド・スリング、バラク-ER、バラク-8の何れかを調達する」のではなく「3つの組わせで構成されたミサイル防衛シールドを緊急調達した」と考えており、イスラエル国防軍は地上発射型のバラク-ERとバラク-8を保有していないため在庫を一時的にUAEへ回すという手法は不可能だ。

フーシが使用する洗練されていない簡素な巡航ミサイル、中距離弾道ミサイル、ドローンの同時攻撃が「高価なパトリオットPAC-3とTHAADで構成されたミサイル防衛シールド」を貫通してしまい、UAEは焦っているのかもしれないが、流石に2年程度で新規調達(訓練込み)できる防空システムはこの世に存在しないだろう。

関連記事:THAADが実戦で実力を証明、フーシが使用した弾道ミサイルの迎撃に成功
関連記事:イスラエルの防衛シールド突破を狙うイラン、弾道ミサイルとUAVを組み合わせた複合戦術
関連記事:UAEを訪問中の文大統領、4,000億円規模の防空システム「天弓」輸出契約を締結

 

※アイキャッチ画像の出典:Lolagpk35 / CC BY-SA 4.0

お知らせ:記事化に追いつかない話題のTwitter(@grandfleet_info)発信を再開しました。

ドイツのヘルメット支援にウクライナが失望、次は枕でも送ってくるのか?前のページ

低下する米国の影響力、中国とサウジアラビアが軍事関係の強化で合意次のページ

関連記事

  1. 中東アフリカ関連

    アイアンドームによる迎撃も限界、3日間でイスラエルに打ち込まれたロケット弾は1,500発以上

    イスラエル国防軍は過去72時間にハマスが発射したロケット弾の総数が1,…

  2. 中東アフリカ関連

    米空軍が革命防衛隊や民兵組織に報復攻撃、B-1Bも本土から作戦に参加

    イランから支援を受ける民兵組織がヨルダン領内の米軍基地を自爆型無人機で…

  3. 中東アフリカ関連

    ガザの病院爆発、イスラエルはイスラム聖戦のロケット弾が落下したと主張

    17日夜にガザ地区のアル・アハリ病院で爆発が発生、ハマス側は「イスラエ…

  4. 中東アフリカ関連

    グテーレス国連事務総長、ガザは子供たちの墓場になりつつあると訴える

    ガザ地区の保健省は6日「パレスチナ人の死亡者数は1万22人で内4,10…

  5. 中東アフリカ関連

    イスラエルは自制ではなく報復を選択、明確かつ強力な反撃を行う

    国際社会はイスラエルに自制を求めたが、Keshet12は15日夜「戦時…

コメント

    • A
    • 2022年 1月 27日

    UAEがイスラエルから武器の調達…。
    その昔を知っているものとしては隔世の感がありますなぁ。

    25
    • もり
    • 2022年 1月 27日

    大は小を兼ねる、とは行かないのが辛い所
    それにしても韓国までの繋ぎにイスラエルかぁ

    5
    • 無無
    • 2022年 1月 27日

    盾と矛の関わりだと、どうしても矛が一歩先んじて盾が不利な状況が生じる
    といっても相手がゲリラや民兵では、こちらから攻めるにもやりにくく、泥沼の恐れあり
    やはりフーシ派へのミサイル供給ルートを絶つしかあるまい

    7
      • ダヴー
      • 2022年 1月 28日

      もう泥沼ですけどね。
      そもUAEはフーシ派を介して間接的にバックにいるイランと戦っているような状況だから、イランが手を引かない限り終わりはないかと。

      3
    • 無明
    • 2022年 1月 27日

    ドローン相手だったらアイアンドームとかCIWSとかの類かとてっきり思ったけど違うのか

    2
      • yuyu
      • 2022年 1月 27日

      探知するのが問題だから

      1
        • 名無し
        • 2022年 1月 28日

        天弓/M-SAMは、S-300やS-400をベースにした、そこそこ射程の長いミサイルだよね。
        探知も含めて、アイアンドームの方が対UAVに比較的向いたシステムだと思い込んでたのだけど、違ったの?

        3
    • 戦略眼
    • 2022年 1月 27日

    霞網を張ったら駄目かな?

    1
      • 菊池次郎
      • 2022年 1月 28日

      動物愛護団体から抗議されそうでなw

      1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  2. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  3. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  4. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  5. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
PAGE TOP