中東アフリカ関連

米諜報機関、イスラエルとヒズボラの戦争が数週間以内に起こるかもしれない

Politicoは27日「米諜報機関はイスラエルとハマスの停戦が成立しない場合、今後数週間以内にイスラエルとヒズボラの間で大規模な軍事衝突が発生する可能性が高いと予想している」「欧州の中には次の戦争が数日以内に起こると予想している国もある」と報じた。

参考:Air force chief says IDF ready for war in north as Hamas nears defeat in Gaza
参考:US intel indicates war between Israel and Hezbollah inching closer

状況は流動的なもののイスラエルとハマスの停戦が成立しないと次の戦争が勃発するかもしれない

イスラエル空軍司令官のトメル・バー少将は27日「我々は独立戦争以来、最も長い戦争の真っ只中にいる」「我々は9ヶ月間も休むことなく戦い続けているが、間もなくガザ地区のハマスは打倒されるだろう」と言及、イスラエル当局も「ガザのハマス大隊をほぼ壊滅させた」と、ハレヴィ参謀総長も「まもなくハマスは敗北する」と述べたが、これはガザ地区からハマスが一掃されるのではなく「ハマスが組織的な戦闘部隊としての能力を失う」という意味で、イスラエルとハマスの間で停戦が成立しないと北部国境におけるヒズボラの脅威は無くならない。

出典:Google Map

イスラエルとヒズボラは北部国境で毎日衝突を繰り返しており、トメル・バー少将も「我々は必要があればイスラエル北部でヒズボラと対決する手段と能力を持っているし、そのための忍耐力と闘志も備わっている」と述べ、Politicoも27日「米諜報機関はイスラエルとハマスの停戦が成立しない場合、今後数週間以内にイスラエルとヒズボラの間で大規模な軍事衝突が発生する可能性が高いと予想している」「これさえ欧州の予測と比べれば保守的な評価だ」「欧州の中にはイスラエルとヒズボラの戦争が数日以内に起こると予想している国もある」と指摘。

Politicoの取材に応じた米政府高官は「イスラエルとヒズボラの戦争が正確にいつ始まるのかは分からない」「イスラエルは次の戦いに備えて弾薬備蓄と兵力を迅速に再建しようとしている」「大規模な戦争の引き金となる一撃は殆ど予告なく起こる可能性が高い」と述べており、状況は流動的なもののイスラエルとハマスの停戦が成立しないとヒズボラとの衝突がエスカレートし、イスラエルとレバノンの国境付近で次の戦争が始まるかもしれない。

出典:IDF Spokesperson’s Unit / CC BY-SA 3.0

因みに米国、イスラエル、ウクライナはイスラエルが保有するパトリオットシステム(8セット)のウクライナ移転を協議中で、ガラント国防相はパトリオットシステムの移転について「決定はレバノンとの本格的な戦争が勃発するかどうかに左右される」と述べている。

関連記事:米国とイスラエルが協議中、最大8つのパトリオットシステムがウクライナに移転される可能性
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※アイキャッチ画像の出典:Israel Defense Forces

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コメント

    • 黒丸
    • 2024年 6月 28日

    アメリカがイスラエルに対して行っている大型爆弾の供給停止は
    対ヒズボラ戦が始まったら解除されるのでしょうか?
    パトリオットをアメリカに渡してアメリカはヒズボラ戦に有効な兵器類をイスラエルに支給する。
    という流れができてきそうな気がするのですが。

    7
      • 無名
      • 2024年 6月 28日

      ヒスボラがイスラエル国内に侵攻してきたら、またイスラエルは自身の正統性を主張して、欧米もそれを支持って流れでしょうけど、イスラエルがレバノンに奇襲侵攻しても欧米はイスラエルを支持しますかね。
      そんなことをしたら欧米はますます第3国から信用を失いそう。

      40
    • たむごん
    • 2024年 6月 28日

    イスラエルは、ラファ侵攻のために予備役を招集していましたが、予備役の招集拡大するかもしれませんね。
    イスラエル経済も、回復する事が見込まれましたが、ヒズボラと戦闘になればダメージが大きくなりそうです。

    ヒズボラは、ハマスよりも圧倒的に大規模です。
    レバノン=シリア=イランは、陸上の国境を接しているため、ガザよりも人・物の移動も容易になります。

    大規模な先制攻撃した方が、軍事的には圧倒的に有利なため、戦争に至らないような外交交渉が求められそうですね。

    (2024年4月15日 イスラエル軍、近く予備役招集 ガザ地区の作戦に向け ロイター)

    9
    • jimama
    • 2024年 6月 28日

    >>パトリオットシステムの移転
    先日のコレなんか唐突感あるなと思ったけど、これは移転と引き換えに米軍の何らかの直接的な支援をよこせということだったのかなと
    あの辺にいる米海軍なり空軍なりにヒズボラ攻撃させようとかそういう感じのやつ

    10
    • lang
    • 2024年 6月 28日

    米以関係見てると損切の大切さがわかりますね

    結局ズブズブすぎて一緒に沈んでいくわけですか というか中東戦争アメリカに煽り圧力かけまくったのもイスラエルですから
    マジでアメリカを潰した獅子身中の虫になりそう

    イスラエル人が、批判してきた政治家の落選運動や、親パレスチナの会社員を解雇に追い込むような工作を米国でやってても、対中国と違って完全にスルーなわけですからもうどうしようもないですね 

    38
    • 58式素人
    • 2024年 6月 28日

    ウクライナでの緒戦の時のように、開戦日時/ヒズボラ側の
    装備/戦力/攻撃方向/攻撃手段などを的中させて来るのかな。
    非対称戦争に近い戦いでしょうから、少し無理かな。
    意外な場所で開戦したりすることもあるだろうし。
    イランとレバノンの間には、シリアとイラクがいるだろうから、
    米国は、ここを通る補給線/領空使用の拒否をするのかな。
    イラクの軍警は動けないだろうし、当該場所はクルド人の居住地のような。
    ヒズボラが、どれだけ武器/補給品を溜めているかで紛争の帰趨が決まるのでは。

    5
    • 折口
    • 2024年 6月 28日

    北の国境にも脅威が存在するという点までは理解できますが、統治はおろか占領さえできるかどうか怪しい広い地域の問題を軍事力で解決しようというのは冷静な判断を欠いているとしか思えません。18年前にも40年前にも上手くいかなかったことを、なんでまた繰り返すのか。今回は過去と違って国際社会からの人的支援は到底期待できず、荒廃したレバノンでは親ユダヤ的だったマロン派の勢力が衰退し反対にヒズボラの勢力がかつてないほど強くなっています。これは断言しますが、開戦したとてイスラエルは作戦目標を殆ど達成できないでしょう。その結果イスラエルが失うのは兵役についていた市民の命と国際社会からの支持、そして隣人たちとの関係です。

    一昨年までのレバント・湾岸諸国はアメリカとサウジアラビアの同盟関係を軸に、地域内にあってはイスラエルを中核とした経済関係をベースに多国間関係を作っていこうという流れがありました。常在戦場だったイスラエルにとっては非敵対国が増えるのは良いことですが、これは湾岸地域や近東全体のアラブ人社会の中でのイスラエルの好感度が回復したことを意味しません。シオニストは絶対に許せないが、それでも(宗教や民族ではなく)個人の利益のために今の間柄を黙認しようという雰囲気が湾岸地域のエリート階級の中にあったればこその緊張緩和だったのです。しかしガザ侵攻時点でそれも全部ダメになりました。アラブの春より後も、アラブ社会の支配階級と民衆の間には緊張感が残っており、民衆が暴発して政権転覆させられるくらいなら人気取りの政策をしようと考えるのがアラブ国家の指導者です。イスラエルにとって、湾岸諸国からの国交断絶は最悪のシナリオではありません。イスラエルが愚かな選択を続け窮地に陥り弱体化したとき、アラブ人国家が選べるユダヤ人との向き合い方はもっと増えるでしょう。

    32
      • a
      • 2024年 6月 29日

      イスラエルは、ベールで包まれてましたけど所詮は略奪前提の軍事国家ですからこれから右肩下がりのキリスト圏と右肩上がりのイスラム圏を見比べて今が仕掛けどきとの判断なんでしょうね。イスラム教の輸出でフランスやドイツ、イギリスでイスラム系移民が近いうちに10%を越えようとしている部分も懸念点なんでしょう。

      11
    • たら
    • 2024年 6月 28日

    この衝突予測は、どちらが仕掛ける話になっているんでしょうね。どのような部隊が集結しているのか。どのような通信が飛び交っているのか。1年後くらいには情報が出てくるのでしょうか。

    8
    • 外弁慶
    • 2024年 6月 28日

    ガザが一段落し作戦終盤。からの北部移動 次はヒズボラと全面対決に向かうんでしょうかね?
    ネタニヤフ政権の戦時内閣が崩れ、極右派が強く、戦時体制が終わると政権崩壊する。と他所ではよく報道され眉唾で聞いてましたが、本当に戦闘を辞めるとヤバいのかも知れませんね。

    9
    • kitty
    • 2024年 6月 29日

    「ハマスがやられたようだな」
    「フフフッ奴らは反シオニスト四天王の中では最弱」
    「イスラエル単体に負けるとは反シオニストの面汚しよ」

    で一気にグサーと行けるかどうかは米軍を引きずり込めるかにかかっていますがさすがにそこまで付き合う余裕は無いかと。

    4
    • 水メロン
    • 2024年 6月 30日

    イスラエルは、全勝するか戦争回避するしか選択肢が無い。
    地上戦でイスラエル軍が全面敗北したときは、この世の地獄がエルサレムで開催される。
    歴史上、何度もあったように。

    8
    • 名無しのゴン太郎
    • 2024年 6月 30日

    日本が80年近く、平和裏に対話と支援で周辺国の安定と発展に寄与しても、特定アジア諸国は、事あるごとに戦犯国に発言する権利はないとか、1000年恨むとか、1ミリも評価しないように、欧米やイスラエルが中東で綺麗事や道理を通しても、1ミリも評価されない。
    であれば、ド汚い手だろうが、国益の為に全力で敵をぶっ飛ばしたほうが、気持ちいいじゃん?byイスラエル
    そうした、日本には決して出来ない手を打った場合の、ある種のシミュレーションというか、中露北イランがやってる戦狼外交の、攻守を変えてる版というか。
    普段から、欧米が綺麗事言ってなけりゃ、割と「どっちもどっち」と叩かれなかったんじゃないかね。
    まあ、そんな世界は、中小国にとって地獄なわけだけど。

    2
      • ゼレボー
      • 2024年 7月 02日

      私も特定アジア国の人達のことは正直差別していますし、仲良くしたいとも思ってないですけど、これだけ仲が悪くても80年以上日本と南北特定アジア国と直接的な戦争は起こっていません。
      お互いに腹の底では何を考えていようと、結果として兵役義務もないまま平和自体は享受できている。

      外交なんてそんなもんでいいんですよ、相手を好きになる必要なんてない。
      けどどんなに相手が嫌いでも対話で物事を解決できている間は大成功なんです。

      相手が嫌い・憎いという国民感情をそのまま政治に反映させて、戦争が始まりめちゃくちゃになった国がウクライナとイスラエルです。

      2
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