米国関連

1機180億円のF-15QAが初飛行に成功、ほぼ同一仕様のF-15EXは約95億円

ボーイングは14日、カタール空軍向けの戦闘機「F-15QA アドバンスイーグル」を初飛行させることに成功したと発表した。

参考:Boeing’s F-15 Qatar Advanced Jet Completes Successful First Flight

これまでで最も高価なイーグル? 1機1.7億ドルのF-15QAが初飛行に成功

ボーイングはF-15の生産ラインがあるセントルイスのランバート国際空港から、カタール空軍向けに製造した戦闘機F-15QAの初号機を初飛行させることに成功したと発表した。当日の飛行は90分間に及び最大9Gの負荷がかけられても機体は予定通りの操縦性を示し、搭載されたアビオニクスやレーダーなども作動にも問題がないことを確認したという。

カタール空軍向けの「F-15QA アドバンスイーグル」は戦闘爆撃機型のF-15Eをベースに開発されたサウジアラビア空軍向けのF-15SAと基本的には同じだが、アビオニクスやレーダーが新しいものに変更されており米空軍が調達を行うF-15EXや航空自衛隊のF-15JSIにも採用されるテクノロジーを多く含んでいる。

F-15QAのレーダーは米空軍がF-15Eのアップグレードに採用した「AN/APG-82(V)1」を備えており、これは日本のF-15JSI(Japanese Super Interceptor)が搭載するものと同じだ。

さらに米空軍が採用したF-15EXやF-15JSIにも採用された世界最速のミッションコンピューター(1秒あたり870億回の命令処理能力)のAdvanced Display Core Processor II (ADCP II)Mission System Computerや赤外線捜索追尾システム(IRST)、フライバイワイヤ制御、大型のコックピットディスプレーなどを備え、拡張された機体外部のハードポイントに最大16発の長距離空対空ミサイルAIM-120AMRAAMを搭載できるようになる。

ただカタール空軍向けのF-15QAは非常に高価で、米空軍からの受注金額ベース(36機を約62億ドルで受注)で計算すると1機あたりの価格は1.7億ドル(約180億円)もする。さらに言えばカタールは最大で72機のF-15QAを調達するため要求された総費用は約211億ドル(約2.2兆円:米国務省が発表したFMS契約の総額)にもなるため、信じられないほど高価な調達プログラムだと言える。

ただ米空軍が調達するF-15EXの機体価格は1機約8,900万ドル(約95億円)で、ボーイングによればF-15EXとF-15QAを多くの共通性を持っているためF-15QAの生産ラインを活用すれば短期間で提供することができると主張しており、どうしてここまでの価格差が生まれるのか謎だ。

因みにボーイングは、今回の契約以外にも約5億ドル(約530億円)でF-15QAを運用するカタール空軍の要員を訓練する契約を米空軍から与えられており、経済的に苦境なボーイングにとっては珍しく高収益が見込める案件と言えるだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:1000words / stock.adobe.com

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 4月 15日

    あり物のパーツを組み合わせるだけのボロい商売ができるから、新型機の開発能力を失うんだよ

    1
    • 匿名
    • 2020年 4月 15日

    なるほど。
    ボーイング救済策ってやつですね。

    1
    • 匿名
    • 2020年 4月 15日

    カタールが買うのやJ改修は良いと思うがF-35が買える国で
    新規に長寿命のF-15をいれるのはやめた方がいいと思う

    • 匿名
    • 2020年 4月 15日

    カタール空軍はアメリカ製・戦闘機は装備してなかったから、ポーランドのF-16と同じくサポート機材、予備部品などは全てを新規購入では?
    (抜粋)
     カタールは、2017年に米軍の対外軍事販売プログラムを通じて36のF-15QAを購入する契約を締結しました。当時、ブルームバーグは、戦闘機と関連機器およびサポートサービスの合計価格は約120億ドルであると述べました。
     初飛行に関するプレスリリースで、ボーイングは米国国防総省との契約を通じて62億ドルを受け取ったと述べたが、これが売却の総額であるかどうかは明らかにしなかった。
    (FMS契約で、カタール向けのF-15QAの費用として、まずは62億ドルを受け取った)
    英語記事
    Watch Boeing’s F-15QA For Qatar Make A Spectacular “Viking Takeoff” On Its First Flight  April 14, 2020
    リンク

    1
    • 匿名
    • 2020年 4月 15日

    政治的理由でF-35A買えない国以外なら新規にコレ買う意味を見いだせない。

      • 匿名
      • 2020年 4月 15日

      周辺国の脅威度的にステルスは必要ないが大量の敵機が飛んでくる可能性がある場合
      大量の対空ミサイル抱えて上がれるF-15の方がいいという事もある……かも?

      2
    • 匿名
    • 2020年 4月 15日

    AMRAAM16発は魅力的。
    中国に数ではかなわない我が軍も

    1
      • 匿名
      • 2020年 4月 15日

      日本は既存のF-15Jを近代化改修して新型に準じた仕様にするよ。

        • 匿名
        • 2020年 4月 15日

        日本のはフレームが強化されたF-15E派生と違って16発の重量に耐えられず羽が折れる

        1
          • 匿名
          • 2020年 4月 16日

          あと、フライバイワイヤ未対応なので、外翼のハードポイントが使えない、
          だったかな。

    • 匿名
    • 2020年 4月 15日

    >ただカタール空軍向けのF-15QAは非常に高価で、米空軍からの受注金額ベース(36機を約62億ドルで受注)で計算すると1機あたりの価格は1.7億ドル(約180億円)もする。

    >ただ米空軍が調達するF-15EXの機体価格は1機約8,900万ドル(約95億円)

    日本のF-15JSI 仕様へのアップグレードパッケージでは、98機分+予備で45億ドルだから、1機分で約4,600万ドル。
    機体に占める割合は、F-15EXベースだと約52%、F-15QAベースで約27%になるけど、実際にはどちらに近いのかな?

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