軍事的報道

極超音速兵器開発で先行する中露、米国の「軍事的優位」は維持可能?

米国の核兵器運用を指揮する戦略軍は、スピードの限界を高めるための、新しい技術の開発に努力していると、改めてアピールしている。

他国が米国に追いつく可能性を指摘する米戦略軍司令官

戦略軍がツイートでアピールしたのは、昨年、国防高等研究計画局と空軍研究所が、未来の戦闘機の詳細について幾つかの情報を披露した米空軍のオフィシャルマガジン「AIRMAN」の動画だ。

国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency:DARPA)は、米軍のために新技術の開発及び、研究を行う米国防総省傘下の機関で、現在、軍事的用途以外でも使用されている全地球測位システム「GPS」を開発したのもDARPAだ。

空軍研究所は、航空機に留まらず、宇宙、サイバー空間での戦闘に必要な必要な技術開発を行っており、新しいところでは、マッハ8.0で飛行する極超音速試験機「X-60A」や、航空機に搭載する「指向性エネルギー兵器開発(所謂、レーザー兵器)」などの開発を主導している。

出典:public domain X-1

AIRMANによれば、1947年に有人ロケット実験機「X-1」で、世界で初めて水平飛行で音速の壁を破って以来、米空軍は航空機の限界速度を向上させるための取り組みを続けており、より速く、より遠くまで航空機を飛行させるための新しい方法を発見し続けてきた。

しかし、スピードへの探求を行っている国は米国以外にも存在し、中国やロシアは既に極超音速飛行が可能な兵器のテストを行っており、その他の国でも極超音速飛行への関心や研究を行っている。

補足:極超音速とは、マッハ5.0以上で飛行することで、ハイパーソニックとも呼ばれており、現在、極超音速で飛行する兵器の開発が中国やロシアで盛んに行われている。ロシアのプーチン大統領は、音速の20倍で飛行する極超音速兵器「アバンガルド」の配備を始めており、米国のミサイル防衛システムでは迎撃不可能だと言われているが、米国はこれに対抗する兵器の実用化には至っていない。

米国の核兵器運用を指揮する戦略軍司令官、ジョン・E・ハイテン空軍大将は、「私達が恐れているのは、米国が他国よりも先んじた能力を失うことで、慎重に行動しなければ他国が米国に追いつく可能性がある。私達はそれが現実になることはないと信じているし、その為には他国よりも技術的に先んじる必要がある」と話した。

空軍研究所は、極超音速技術確保のために、機体の構造や素材の研究、誘導、航法、制御など必要な技術の開発に努力しており、国防高等研究計画局は他国に先んじた能力を確保するため、画期的で革新的な技術への投資を60年間続けてきた。

しかし、米国の極超音速兵器の開発は、中露に対し先んじるどころか、遅れているというのが現実だ。

ロシアは極超音速兵器「アバンガルド」の実戦配備に着手し、中国では極超音速兵器のためのテストが着々と進行中で、対する米国も極超音速兵器の開発を行っているが、実用化には暫く時間が掛かるだろう。

AIRMANで公開された動画では、F-35と編隊飛行を行う無人機や、C-130から投下される小型無人機の群れ、空軍の次世代戦闘機「FX」らしきものが登場する。

将来アップグレードが行われたF-35では、AIらしきインターフェイスや情報がコックピットに直接投影され、C-130から投下される小型無人機は無数のイナゴのように群れて目標へ飛んで行く様子が描かれている。

米国としては、中露の極超音速兵器に対抗するための技術開発にも取り組んでいるが、将来の戦闘を左右するのは「極超音速兵器」だけではないと言いたいのかもしれない。

極超音速兵器開発では遅れをとった米国だが、軍事技術の総合力で、米国は中露に対する優位を維持しつづけられるだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:AIRMAN/Future of Fusionのキャプチャ

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