インド太平洋関連

KFXでは対抗不可?韓国、日本の空軍力強化には「ゲームチェンジャー」で対抗

韓国メディアは、F-35Aの追加導入やF-35B導入決定、F-15Jのアップグレードを推進する日本の空軍力強化は、韓国など周辺国を緊張させると報じている。

参考:일본과 공군력 격차…한국 ‘게임체인저 필요’ 부상

日本の空軍力強化に、ゲームチェンジャーが必要な韓国空軍

日本は現在、42機のF-35Aを導入中だが、追加で新たに105機のF-35を調達することが決定し、米国を除けば、世界でもっとも多くのF-35(146機:1機を事故で失っている)を運用する国となる予定で、さらにF-35のウェポンベイに搭載可能な対艦・対地用巡航ミサイル「Joint Strike Missile(JSM)」導入のためのコングスベルグ社と既に契約を交わしている。

JSMはノルウェーのコングスベルグ社が開発した巡航ミサイルで、米海軍も採用する予定になっており、米国向けは米国内でレイセオン社がライセンス生産を行うと発表されている。JSMは射程が500km前後しかなく、巡航ミサイルとしては比較的射程が短いが、大きさの制限があるF-35のウェポンベイに収納可能な、唯一の巡航ミサイルになる予定(ブロック4で統合予定)だ。

ただしF-35Aに比べて、F-35B(短距離離陸・垂直着陸型)のウェポンベイは全長が短いため、現時点ではJSMを収納することが出来ない。

これに加えて、航空自衛隊が212機運用しているF-15Jの内、アップグレードが行われた通称「J-MSIP」タイプ102機(単座68機、複座34機)に対し、さらなるアップグレードを施す予定(とりあえず20機分)で、平成31年度予算に2機分の改修費用を計上済みだ。

出典:航空自衛隊

Aviation Weekによれば、搭載レーダーを「APG-82」に換装するなど、アップグレードが施され「マルチロール機」化した日本のF-15Jが、2023年7月までに引き渡されるだろうと報じている。

アップグレードされたF-15Jには、同じくアップグレードを受けた米空軍のF-15Eが搭載しているレーダーと同じ「AN/APG-82」を搭載することで、新たに敵射程圏外からの空対地攻撃モードを備えるとAviation Weekは報じているため、米軍が採用している新型の空対地巡航ミサイル「AGM-158 JASSM」や長距離対艦ミサイル「LRASM」の運用能力を備えているのは、ほぼ決定的だ。

このように航空自衛隊の制空戦闘機として活躍してきたF-15Jは、あと4年でマルチロール機化=多用途戦闘機に生まれ変わる。

韓国メディアは、中国やロシア軍用機が韓国の防空識別機(KADIZ)に不正侵入し、KADIZの無力化を図る中、このような日本の空軍(航空自衛隊)力強化について、周辺国の緊張を高めるだけだと批判し、日本の空軍力強化の内容は、もはや専守防衛の原則を超えていると結論づけた。

特に、巡航ミサイルのJSM導入は、日本国憲法で禁止されている「敵基地の攻撃能力」保有に繋がり、北東アジアの緊張を高める行為という批判を避けるのは難しいとし、これに対して韓国が現在進めている空軍力の強化計画だけでは、日本の「敵対行為」を阻止するには限界があると指摘した。

韓国は現在、老朽化したKF-16(F-16C/D ブロック30/32相当)を、最新のF-16V(ブロック70)相当にアップグレードを行っており、F-15K(F-15E相当)も搭載レーダーを、マルチロール機化する日本のF-15Jと同じ「AN/APG-82」へとアップグレードを行う予定だが、日本も同じように空軍力戦力のアップグレードを行っているため、これだけで日本を圧倒するのは不可能だ。

出典:KAIが公開したYouTube動画のスクリーンショット

日韓が導入を進める第5世代戦闘機F-35も、日本の方が導入数が多く、両国が進める国産戦闘機開発においても、韓国は4.5世代機(KFX)に対し、日本は第5世代機以上の戦闘機を開発する意向で、ステルス性能において大きな差がある。

そのため韓国は、F-35Bの運用が可能な軽空母と、合同火力艦(アーセナルシップ)を導入し、日本に対する「抑止力」を確保しようとしているが、このような戦力が実用化されるには10年以上の時間がかかり、日本もF-35Bを運用するため2隻の「いずも型護衛艦」を空母に改造するため、日韓の戦力格差を解消するまでには至らない。

韓国メディアは、このような現状を打破するためにも、韓国空軍にも「ゲームチェンジャー」が必要だと提唱している。

韓国は目前の脅威に目を向けるべきではないだろうか?

では、韓国空軍にとっての「ゲームチェンジャー」は何なのか?

マッハ4+で飛翔可能なダクテッド・ロケットエンジン搭載の空対空ミサイル「ミーティア」と、F-16程度の小型機でも運用が出来るようサイズが小型化された空対地巡航ミサイル「タウルスKEPD350 K-2」を韓国メディアが挙げている。

出典:Boeing

ミーティアはF-35との統合作業中で、ブロック4から使用できるようになると言われており、ミーティアが運用出来るようになればF-35の視界外空対空戦闘能力が向上が見込まれ、タウルスK-2は、F-15Kでしか運用が出来ない大型のタウルスを小型したもので、タウルスK-2ならKF-16やF/A-50にも搭載することが出来る。

このような兵器ならば比較的短時間で導入でき、日本が専守防衛の原則を破ってまで整備している「対地攻撃能力」を牽制することができ、日本の挑発行為を抑制することにつながるだろうと報じた。

毎度のことだが、韓国は日本と向き合う前に、もっと目前の脅威に目を向けるべきではないだろうか?

日本に対する「抑止力」を確保するために「合同火力艦(アーセナルシップ)」を導入すると韓国メディアが言及しているが、そもそも合同火力艦は、1ヶ月前に発表された韓国の国防中期計画(2020~2024)で、突然姿を現し、北朝鮮に対し強力な「抑止力」として作用すると言及されていたが、1ヶ月後には導入理由が「北朝鮮」から「日本」に入れ替わっている。

出典:public domain

このように、なぜ韓国海空軍は日本を引き合いに出すのか?

それは北朝鮮軍の中に、まともな対称となる脅威(航空戦力や水上艦や潜水艦)がなく、組織としての存在意義や戦力強化の理由に、日本を持ち出すしかなく、日本が脅威だと煽ることで予算配分において有利な立場を得ようとしているだけでしかない。

逆に、北朝鮮軍に対称戦力が存在する韓国陸軍は、日本を持ち出すことがない。

韓国陸軍には、日本を攻撃する事もできる地上発射型の「弾道ミサイル」や「巡航ミサイル」を多数装備してるが、これを導入する際、日本を理由に挙げたことがなく、これは韓国と日本が陸続きではないという理由もあるが、やはり北朝鮮の地上軍だけで十分、韓国陸軍は、その存在理由を十分に証明出来るのが大きな理由だろう。

最悪なのは、このような韓国の主張を真に受けて、軍拡を誘発させているのは日本政府だと、政権攻撃に利用するメディアや政治家が存在することだ。

このような身勝手な韓国の主張は、絶対に真に受けてはいけない。

 

※アイキャッチ画像の出典:航空自衛隊

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 9月 10日

    ミーティアの統合作業までは許容せざるを得ないとして、JNAAM関連の機密は絶対に守れるようにしておかないといけない
    今からでも、あの汚らわしきヤツらからF-35を奪い取って放り出せないものか・・・・・・

    3
    • 安純平
    • 2019年 9月 10日

    はたして韓国はF35を売ってもらえるのか?(笑)

      • 匿名
      • 2019年 9月 10日

      今年の三月と七月に納入されてたじゃん

      2
        • 匿名
        • 2019年 9月 10日

        既に納入済みのF-35Aは兎も角、軽空母に積む予定のF-35Bは売って貰えないかもね。
        それに今後の情勢次第では、韓国もトルコみたいに「F-35Aも売らないぞ」と通告される恐れがあるよ。

        2
    • 匿名
    • 2019年 9月 10日

    人間でも、組織でも、一発逆転を口にし始めたら、先は短い。

    2
      • 匿名
      • 2020年 4月 13日

      その通りです。
      「最後の一発大逆転で勝て!」などと言い出す輩は、決まって弱いヤツなんですよ。
      だから韓国も「弱い国」なのです。
      勝つための具体的な方法が無いので、「一発逆転」などという寝言を言って現実逃避しているのですよ。

      3
    • 一堂零
    • 2019年 9月 10日

    残念なから文政権を甘く考えておられますよね、反日扇動を増長し北との統合や赤化傾向にある政権ですよ。
    温い感情は捨てて憲法改正して自国の安全は自国で守る位の覚悟が必要ですよね。
    お金払うから米軍何とかしろよ!何ですかね? 逆考えて 米国からして日本は 高飛車? 金だけしか出さない?で守れってか?

    軍事的な事はわかりませんが 自国の安全は自国で行う。足らない所は米国に協力を求める対等に負担。
    周辺は大国ばかり日本も核兵器を所有して抑止力すべき時かと思います。

    3
    • 匿名
    • 2019年 9月 10日

    >韓国は現在、老朽化したKF-16(F-16C/D ブロック30/32相当)を、
    >最新のF-16V(ブロック70)相当にアップグレードを行っており、
    初めてしったです。(大笑い)

    • 名無しの航空ファン
    • 2019年 9月 10日

    日本との共同研究中のJNAAM(ミーティアのF35用のサイズダウンモデル)が仮に製品化された場合はどうするんだろうな。
    日本がシーカー供出を拒否すると思うけど。

    1
      • 匿名
      • 2019年 9月 10日

      日英共同開発のとは別にF-35用のミーテイアを英国が作ってるみたいだから韓国が購入するとしたらそっちじゃね

      日英共同開発のMBDA「ミーテイア」ミサイルの試射は2023年
      リンク
      >日本製シーカーを搭載する欧州MBDA製空対空ミサイル「ミーテイア(Meteor)」改良型の開発が進んでいる。日本は日本製シーカー付き「ミーテイア」の試射を2023年3月までに実施、
      >またこれとは別に英国は、F-35戦闘機に搭載可能にするためフィンを変更した改良型「ミーテイア」を2024年から配備を始める。

    • 匿名
    • 2019年 9月 10日

    日本を仮想敵国どころか攻撃する気満々ですね。
    東京を爆撃したいから給油機を欲しがってたらしいし、韓国は自分達が日本の防衛力の強化の一因ともなってる事自体を認識して無さそうですよね。
    自分達が日本を攻めたいと言う意識が深層にあるからこそ、、日本も韓国を攻め込む為に武器を調達していると思ってるんでしょう。
    日本は逆に友好国であるはずべきの韓国から攻撃を受ける可能性があるが為に防衛力を強化してるだけですわ。

    3
    • 匿名
    • 2019年 9月 10日

    ちょっと考えてみたんだが、韓国からしたら日本を敵視した方が楽だよなぁ
    というのも日本を敵視すれば北中ロが味方になるわけで、日本(と米)だけ相手にすれば良いし、陸路でも繋がっていないから守りやすい
    逆に日本を味方にすれば北中ロは敵になるわけで、南以外全部敵だ。守りにくいわなぁ

    2
    • 名梨
    • 2019年 9月 10日

    日英共同開発中の改良版ミーティアには、窒化ガリウム・シーカーが搭載され、ノーマルのミーティアに比較して、命中精度や命中率が格段に良くなる。だから、韓国軍はノーマルのミーティアを搭載しても『絶対』勝てない。
    そもそも、米軍は、初期契約では、自衛隊のF-35にはミーティアの搭載を許可しているが、韓国にはミーティアの搭載は許可していないと思うよ。
    どうみても『ゲームチェンジャー』にはならないのだが、韓国人の記事には不確実な情報が多いよね。

    今、状態で、日本の許可無く、『窒化ガリウム・シーカー』搭載のミサイルの購入は出来ないよ。
    ・・・日本部品の入った物品は購入しないのだろう・・・韓国は。

    • Al
    • 2019年 9月 10日

    韓国に過ぎたるものが二つあり 最新兵器と民主主義

    2
      • 匿名
      • 2019年 9月 11日

      貨幣経済と個人主義等々入れると10じゃ済まない(笑)

      2
    •  
    • 2019年 9月 11日

    >日本が脅威だと煽ることで予算配分において有利な立場を得ようとしているだけでしかない

    で、そのうち帝国海軍の対米作戦案の様に、現実化してしまう訳ですね、分かります。
    しかも日本には反米感情なんて開戦数年前まで、コミンテルンによる煽動まで無かったですが、
    韓国は国家も国民も反日がドグマなので、よほど現実化する可能性は高いでしょうね

    海軍も予算の為だけではなく、反日なのは一般国民と同じだと思いますよ
    相対的にはリアリズム思考的でしょうが、相対的な問題でしか無いでしょう。

    1
    • 匿名
    • 2019年 9月 11日

    対日本は口実かね?本気でそう思っているようなんだが、

    • 匿名
    • 2019年 9月 12日

    韓国の言う「戦略兵器」は「相互確証破壊を実現する核弾道ミサイルや核巡航ミサイル搭載の戦略爆撃機、核弾道ミサイル搭載の潜水艦」だけでなく「強そうな戦術兵器」も意味するので「ゲームチェンジャー」も似たようなものでしょう。
    妙な見栄を張っていて実がないのはマスコミ、政府、軍のどれかで重大な問題になりそうですが

    2
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