インド太平洋関連

手抜きの極み?韓国監査院が明らかにした「K11複合型小銃開発」の闇

韓国が国内技術だけで開発し「名品武器」と宣伝していた「K11複合型小銃」の欠陥問題の闇を、韓国の監査院が暴いた。

参考:‘결함 논란’ K-11 소총 뒤엔 ‘부실 연구·개발’ 있었다

国内の技術だけで開発し「名品武器」と宣伝していた「K11複合型小銃」の真実

韓国が世界に先駆けて実用化したが、次々と欠陥が発覚し量産・配備が中止された「K11複合型小銃」について、韓国監査院が驚きの監査結果を公表し波紋を呼んでいる。

そもそもK11複合型小銃は、5.56mm小銃に、20mmグレネードランチャーを合体させた複合型小銃で、2000年から、韓国の国防科学研究所が開発を主導し、複合型小銃の本体をS&T、射撃統制装置をEO system、20mmグレネードランチャー弾をHanwhaが製作した。

8年の開発期間を経て、2008年開発が完了し、1万5000丁のK11複合型小銃を量産し、韓国陸軍が正式採用すると発表したが、初期量産品において爆発事故や不具合が続出し、幾度もの改良・修正を経て、2017年に改良型K11複合型小銃が公開された。

K11複合型小銃による不具合の歴史
2010年10月初期量産で生産された80丁のK11複合型小銃の内、38丁で問題が見つかった。
2011年10月性能試験中に20mmグレネードランチャーの弾薬が爆発し兵士1人が負傷した。この事故原因(後に電磁波による誤作動と判明)が究明されるまで量産停止。
2012年5月低温状態で搭載バッテリーの性能が低下する問題が判明。その後、K11複合型小銃の全量リコールが決定。
2012年7月防衛事業庁が1万発もの実弾射撃を通じて、全ての欠陥について改善が完了したことを確認したと発表。
2012年10月量産再開、2014年までに400丁のK11複合型小銃を生産することを決定。
2013年11月陸軍へのK11複合型小銃配備を再開。
2014年3月再び爆発事故が発生し、兵士3人が負傷し、量産・配備が停止される。
2014年7月爆破事故の原因は、改良プログラムが適用されていない旧型の弾薬を使用したためで、K11複合型小銃の欠陥ではないと発表し、量産・配備を再開。
2014年11月量産されたK11複合型小銃の検査において、問題が発生したため軍への納品が停止される。
6000発射撃耐久検査において、4000発射撃後、射撃統制装置に亀裂が入り、小銃本体へ固定していたネジに緩みが発生した。
2015年7月抜本的な問題解決のため、K11複合型小銃の再設計(重量軽減・小型化)を行うことを発表。
2017年5月K11複合型小銃の再設計が完了し、重量を1kg程度減らし、問題を解決したと発表し、量産を再開した。
2018年7月再び、量産されたK11複合型小銃の射撃統制装置に亀裂が入り、量産が停止された。
2018年11月K11複合型小銃 block2の開発予算が削られ、事実上、K11複合型小銃の改良が放棄される。
2019年4月50回連続射撃を行うとバッテリーの内圧が上昇し爆発する可能性があると指摘される。
2019年5月防衛事業庁は、4月、K11複合型小銃の開発中断を提案していたことが確認される。

現在、K11複合型小銃の量産は停止中で、陸軍への配備も中止されている。

再設計をおこなったK11複合型小銃でも、同じ様な不具合が発生した事に加え、50回連続で射撃を行うと射撃の衝撃により、射撃統制装置を動かすために搭載してあるリチウムイオン電池の内圧が上昇し、爆発する危険性がある不具合が指摘された。

そのためK11複合型小銃の開発状況を国会の要請により、韓国監査院が監査を行った結果、K11複合型小銃の開発初期段階で問題を把握していたにも関わらず、軍や防衛事業庁、開発を主導した国防科学研究所は評価基準を緩和し、基準を満たしていることにして量産化を強行した事実が明るみになった。

例えば、K11複合型小銃の照準を行うレーザー測定器は、反射率が低い目標に対して、正確な距離を得るためには、高出力のレーザー測定器が必要となるが、低出力のレーザー測定器を開発し、これを高出力のレーザー測定器と評価することで合格の判定を与えた。

さらに20mmグレネードランチャーの殺傷範囲や弾道特性を考慮せず設定された評価基準を用いて評価し、到底基準を満たしていないにも関わらず、これにも合格の判定を与えたため、K11複合型小銃は有効射程内での射撃にも関わらず、命中率が基準値よりも低い結果となった。

また20mmグレネードランチャーの暴発事故が発生しても、防衛事業庁は有効な原因究明や、改善措置を行わずK11複合型小銃の量産化を強行し、同じような事故が再発する可能性が依然として残っていると韓国監査院は指摘し、結局、何の改善策も施されることなく量産化が続けられたK11複合型小銃は、軍に納品されたにも関わらず、倉庫に全量が保管され、全く使用されていないと結論づけた。

これが韓国国内の技術だけで開発し「名品武器」と宣伝していた「K11複合型小銃」の真実だ。

 

※アイキャッチ画像の出典: Cinnamontrees / CC-BY-SA 3.0 K11複合型小銃

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 9月 07日

     最も優秀な兵器は使われない兵器ですwwwww
    不具合での死亡は無いですからね。  130億ウォンが倉庫に
     退役軍人会が経営してる商社への支払いって意味でも優秀
    「グレネード」弾は既に15万発ぐらいで生産されてて、お値段は240億ウォンぐらい
     あの底が剥がれる軍靴、燃える軍服は実害があるけど、K11+グレネード弾は実害は無いって、超優秀な兵器。

    1
      • 匿名
      • 2019年 9月 11日

      これ、廃棄してしまった方が安上がりなんじゃ……。
      倉庫で保管ったってタダじゃないでしょう。

      AK買って使い捨てにした方がマシじゃないかなぁ。

      使い道考えるとグレネードは諦めて小銃だけでいらない部品外して軽量化して軽量化しても歩兵に携行させるには重すぎるから車載や拠点防御用として割り切って使えば多少なりとも投資回収出来るかな?
      保守部品無しの使い捨てで。

      1
    • 匿名
    • 2019年 9月 07日

    こういう不正は彼の国ではまさに日常茶飯事で、一般韓国人も「軍の不正さえなければ我軍はとっくに一流だった」とか良く言ってるけど、どれだけ問題が表面化しても「韓国名品ホルホル」だけは絶対になくならないのが本当に不思議。
    自己好評価と事実との乖離が凄すぎて、身びいきというレベルじゃ済まない程度だ。
    目に見える事実よりも先に高評価が存在している良い証拠なのに。つくづく根拠など必要としない民族なんだなと思うしかない。
    話が通じるわけがないわ。

    1
    • 匿名
    • 2019年 9月 07日

    欠陥以前の問題で「作ってしまえばそれで良い」と言う、工業製品開発では絶対やってはいけない事をやっていますね。
    これが日本を含めた他国なら、「軍と兵器開発メーカー間の癒着」が疑われるけれども、韓国の場合は軍とメーカーの双方に「我が国のやる事に間違いはない!」と言う、かつての日本にもあった「思い上がり」が垣間見えるから、もう…(笑)
    そんな中、韓国監査院だけは何故か真面目に仕事をしていると言うのが皮肉。

      • 匿名
      • 2019年 9月 07日

      真面目に仕事をしているというよりは、ムン・ジェイン政権の存在理由は前政権の全否定ですから、こうやってあら探しをして公にし、民衆の溜飲を下げているに過ぎません。仮にムン・ジェインの対立勢力が政権を取れば、また同じことが繰り返されるでしょう。

    • 匿名
    • 2019年 9月 07日

    ちょっとずつでも、頑張ろうとしていた姿勢は好感もてたんだかwww

      • 匿名
      • 2019年 9月 08日

      手抜き・中抜きはいつも通り頑張ってます(笑)

      • 匿名
      • 2019年 9月 08日

      其の過程で方向転換して“20㎜対物狙撃銃”として作り込んでいったら実の有る名品となったかもしれません。

    • 匿名
    • 2019年 9月 07日

    基準を下げて合格ってK-2でも見たな
    戦時でもない…いや一応あの国はまだ北と戦争中か
    でも実用化が急がれる状況でもないのに見栄で強行してしまうからこうなる
    韓国監査院は真面目だった

      • 匿名
      • 2019年 9月 08日

      自分達と直接関係のない「最小枠」での不正は暴いたりするけど、その枠が国家単位など大きくなって自分がそこに含まれれば不正に目をつぶったりするんだよな。
      これもゴールが動くじゃないけど、他人に厳しく自分に優しいの典型例ですな。
      一見すると真面目にやってるように見えるけど、単に自分の属する部署じゃないから痛くないという、ただそれだけ。

    • 日高見
    • 2019年 9月 08日

    あらゆる情報から見えて来るのは、あらゆる事が出来無いのが半島人の実態だと謂う現実。

    こんな連中と付き合うのは願い下げだね…。

    • LLLLL
    • 2019年 9月 08日

    いっその事、K-11小銃を弾にして撃ち出す擲弾筒を作ったらどうかね?
    (´・ω・`)

      • 匿名
      • 2019年 9月 08日

      好きです。其の発想とヒニクw

      • 匿名
      • 2019年 9月 11日

      何、その王の財宝www
      てんさかいか!!

    • 匿名
    • 2019年 9月 08日

    アメリカ軍とH&K社が共同開発してたが、様々な理由で頓挫したヤツを丸コピーして作った粗大ゴミ。
    特にグレード弾暴発事故でも軽傷で済んだのは20ミリで威力不足な為。
    空中爆破を可能にしたはずの射撃管制装置は野外で使うのに『未』防水、射撃の衝撃で壊れる・ネジが緩む・バッテリー加熱で爆発の危険。
    全体の重量も弾装備したら10kg近くなる。動画で射手を見ても重さで構えが安定せず息切らしながら喋ってましたね。
    まあ『銃弾を防げない防弾装備』をした状態なので兵士に過大な負担で何時間も戦うには強靭な体力が必要ですね。
    この過大な重量もアメリカ軍が採用を見送った理由の一つ。

      • 匿名
      • 2019年 9月 08日

      過大な重量>更に言うと、アフガン&イラクでの戦闘(特にCQB)の戦訓から、この様な複合型小銃は「対歩兵戦闘では使い辛い」と結論付けられてしまいましたからね。

      • 匿名
      • 2019年 9月 09日

      改めてAKシリーズの優秀さを実感できる

    • 匿名
    • 2019年 10月 14日

    英国よりも悲惨な話のようだが、自衛隊の小銃は大丈夫なのかな?
    ビニールテープでぐるぐる巻きなんて話を聞くと、他の所も心配になる。

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