米国関連

ロッキード、F-35Aを8,028万ドル(約88億円)に引き下げ!優位を失ったF-15EX導入の行方は?

ミリタリーマガジンの“Military Watch”は、ロッキード・マーティンが、F-35の生産ロット(12~14)に関する交渉を、米国防総省と開始したと報じている。

参考:America is Finally Getting Cost Effective Stealth Jets; F-35A Price Drops to Just $80 Million

7000万ドル台まで後少し!F-35の機体単価を8,028万ドルに引き下げ

ロッキード・マーティンが、F-35の生産ロット(12~14)で、機体単価を8000万ドル(約88億円)以下まで引き下げることが出来るか注目されている。

出典:ロッキード・マーティン

2007年に生産が始まった、F-35の初期ロット(低率量産)の単価は2億ドル(約220億円)以上だったが、2010年半ばには、1億2000万ドル(約130億円)まで単価が引き下がった。現在生産が行われているロット11では、ロット10よりも5.2%単価が下がり、8,920万ドル(約98億円)を記録し、初めて9,000万ドル台の壁を突破した。

※ロット11で、8,920万ドル(約98億円)を達成したのは、通常型のF-35A型だ。

ロッキードは、ロット12~14において単価を、ロット11(8,920万ドル)よりも、さらに10%下げることを目標にしている。これはロット12~14間で平均3.3%以上の単価引き下げを意味する。

もし目標が達成されれば、ロット14でのF-35の単価は8,028万ドル(約88億円)になり、もしかすると8,000万ドル以下、7,000万ドル台を達成する可能性すらある。

さらにロッキードは、2025年までにF-35の1時間あたりの運用コストを、現在の3万5000ドル(約380万円)から、2万5,000ドル(約270万円)まで引き下げるために努力をしていると話している。

但し、F-35の1時間あたりの運用コストの内、ロッキードが関わる部分は50%に過ぎず、15%はエンジンを製造しているプラット・アンド・ホイットニー、残りの35%は各種部品サプライヤーの領域だ。恐らくロッキードの努力だけで、2025年までに運用コスト、2万5,000ドルを達成するのは難しいかもしれないが、間違いなく3万ドルは下回ってくるだろう。

出典:ボーイング

今回のロット12~14における、F-35の機体単価の具体的な引き下げ目標が提示されたことで、現在米空軍がF-15EXの導入根拠としている価格面や、運用コストの優位を脅かすだろう。

ボーイングがF-15を再設計し、最新のアビオニクスを詰め込んだF-15EXの機体単価は、おおよそ8000万ドル(約89億円)だ。

たった数年後には、米空軍が導入するF-35Aの価格が、F-15EXと同じか、もしくは、それを下回る可能性すらあり、運用コスト面でも、F-35が3万ドルを下回ってくれば、2万7000ドルに設定されたF-15EXの優位性は、大きなものではなくなる。

もはやF-15EXの導入理由として、F-35Aとの費用比較だけでは、ワシントンのF-35支持派を納得させることは困難だ。米空軍は、本当にF-15EXが欲しいなら、F-35AとF-15EXの2刀流による、戦術の有用性について、もっともらしい説明をする必要がある。

間違っても、第6世代機開発まで競争試作体制を維持するため、ボーイングの戦闘機部門を潰す訳にはいかないという『本音』で勝負するのは止めたほうがいい。

 

※アイキャッチ画像の出典:Public Domain

米国防総省「日本へ提案してない」、次世代戦闘機「F-3」へのF-35用ソフトウェア提供を否定!前のページ

岩国基地の米海兵隊「F-35B」が事故!F/A-18Dに続き1週間で2件目の「クラスA」事故次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    米陸軍がカミカゼドローン導入を本格化、英国も対外有償軍事援助を利用して同一機種を発注

    米陸軍がカミカゼドローンと呼ばれる徘徊型無人航空機(UAV)の調達を本…

  2. 米国関連

    調達打ち切りに怯えるGA-ASI、MQ-9やMQ-1Cから空中発射可能な小型UAVを初公開

    米国の無人航空機製造大手のジェネラル・アトミックス(GA-ASI)は今…

  3. 米国関連

    J-20に劣るF-22A Block20、今後も維持するなら次世代戦闘機の開発費が吹っ飛ぶ

    米空軍と議会はF-22A Block20の退役問題で対立しており、空軍…

  4. 米国関連

    150km先を攻撃可能なGLSDBがテストをパス、まもなくウクライナに到着

    ロイターはウクライナへのGLSDB提供時期について昨年12月「2024…

  5. 米国関連

    米海軍のギルディ作戦部長が防衛産業界を批判、ロビー活動で必要ない航空機を売りつけるな

    米海軍のマイク・ギルディ作戦部長は2日、自国の防衛産業界に対して「海軍…

  6. 米国関連

    2021年12月の初飛行は無理? ステルス爆撃機「B-21 レイダー」開発に遅れが発生か

    米空軍は、ステルス爆撃機「B-21 レイダー」の開発について順調である…

コメント

    • 匿名
    • 2019年 5月 12日

    日本向けのも安くなるかな?
    だったらいいな

      • 匿名
      • 2019年 5月 12日

      あくまでも「”現時点で”LMが言っているだけの米軍価格」
      対抗馬のボーイングが無くなったったら、どうなるものやら

      • PO
      • 2019年 5月 13日

      今年H31年度の調達(6機)から国内生産をやめて完成品輸入に切り替えるけど、どのロットになるのかな?
      今年度の防衛予算では1機あたり116億円(1億ドル強)になってるけど、米軍向け価格とFMS他国価格ってどのくらい違いがあるのかな。

    • 匿名
    • 2019年 5月 12日

    用途的に被らないA10でも作らせとけばと思うがA10の知財権ロッキードだった

    1
    • 匿名
    • 2019年 5月 13日

    F-15EXはF-35の補佐機としてBVRミサイルキャリアーの役割を果たすことが求められているので、ビーストモードのF-35でF-15EXを不要にできるなら今回の値下げは大きいでしょうね。
    ただ、F-35がトラブルで飛行停止になればスクランブル以外で飛べなくなってしまうので、F-15EXとF-35の組み合わせは飛行停止問題の解決策の一つですね

    1
    • 匿名
    • 2019年 6月 21日

    価格引き下げあるなら離島運用にB型を追加購入していいんじゃないかね?

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  2. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  3. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  4. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  5. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
PAGE TOP