欧州関連

遂に開発国が採用!ドイツ、戦闘機タイフーンの搭載レーダーを「Captor-E」換装へ

ドイツ空軍の関係者は、現在運用しているユーロファイター・タイフーンの搭載レーダーを、2022年からアクティブ・フェーズド・アレイ(AESA)方式の「Captor-E」に換装する予定だと語った。

参考:Captor-E AESA Upgrades For Bundeswehr’s Eurofighters From 2022

ドイツ空軍、2022年からタイフーン搭載レーダーを「Captor-E」に換装へ

レーダーアンテナ部分をAESA方式に改めた「Captor-E」は、ユーロレーダー社が10億ユーロもの費用を投じて2015年までに開発を完了していたが、タイフーンの共同開発に参加し、同機を導入した国(英国、イタリア、スペイン、ドイツ)の発注がなく、2016年にクウェートから受注したタイフーン(トランシェ3)28機に初めて採用され、カタール向けの機体にも採用される予定だ。

出典:ILA_Berlin_2012_PD_193.JPG: Bin im Garten / CC BY-SA 3.0 CAPTOR-E (CAESAR)を搭載した展示機

Captor-Eには「合成開口レーダー」モードが搭載され、全天候下において精度の高い地上攻撃能力を提供する事ができ、AESA方式の探知能力は約60km離れた場所からF-35を検出することができると言われている。

タイフーン開発国の中で、ドイツのみが「Captor-E」を採用したことになるが、その背景には同国のトーネード退役問題が絡んでいると見られる。

ドイツ空軍はトーネードの後継機として、F/A-18E/Fかタイフーンの購入を検討中だが、核兵器運搬能力の実証問題で調達が遅れ、最悪トーネード退役時期(2025年から順次退役が始まる)に間に合わない可能性が出てきたため、運用中のタイフーンを「Captor-E」に換装し、地上攻撃能力を引き上げようとしている=トーネード不在をカバーすることを狙っているのかもしれない。

ただ、ドイツ空軍が保有(予定)する141機のタイフーンの内、トランシェ1(33機)には対地攻撃能力がなく、トランシェ3(31機)は比較的機体が新しいため、恐らくだが「Captor-E」への換装を行うのはトランシェ2の77機のみ、もしくはトランシェ2の一部に限定されるのではないだろうか?

補足:ドイツ空軍は、トーネードの後継機調達、老朽化したトーネードの維持費用、フランスと共同開発する第6世代戦闘機「Future Combat Air System(FCAS)」への予算投入が控えているため、あまり予算が潤沢だとは言い難い。

どちらにしても、英国が費用対効果の問題で換装を見送っている「Captor-E」を、ドイツが採用したというのは非常に興味深い。

 

※アイキャッチ画像の出典:Jason Wells / stock.adobe.com

日中韓の戦車と比較? 台湾が導入するM1A2T「エイブラムス戦車」は最強前のページ

空母「ジェラルド・R・フォード」は原子力停泊艦? 無謀でやり過ぎた米海軍の挑戦次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    ポーランド、国産の歩兵戦闘車と並行して韓国製Redbackのテストも開始

    ポーランドのブラスザック国防相は機械化部隊に配備する歩兵戦闘車について…

  2. 欧州関連

    英BAE、消耗型と再利用型の無人戦闘機に関するコンセプトを発表

    英空軍は無人戦闘機の技術実証機開発・製造プログラム「モスキート」をキャ…

  3. 欧州関連

    アルメニア系住民の脱出が加速、3日間で50,243人がアルメニアに逃れる

    第三次ナゴルノ・カラバフ戦争の結果を受けてアルメニア系住民が脱出を開始…

  4. 欧州関連

    ロシアの選択はトルコか?ギリシャか? 露海軍の黒海艦隊が東地中海に参戦

    ロシア海軍は3日、ギリシャとトルコが睨み合う東地中海で実弾射撃を伴う軍…

  5. 欧州関連

    ウクライナの政治的分裂は反攻失敗が原因、ロシアに付け込まれる可能性

    The Economist紙は「計画通りにいかなかった反攻作戦の予想で…

  6. 欧州関連

    ノルウェー国防相、要件を満たさないNH90を返品するので支払った金を返せ

    ノルウェーの国防相は「どれだけ時間を費やし整備をしても、どれだけスペア…

コメント

    • 匿名
    • 2019年 11月 06日

    ある意味でwktk案件(いつ配備されるの?)
    ・あの首振り機能を残したのはなぜか? (同じAESA素子を使ったグリペン/AESAも首振り機能を残してる)
    AESAの位相制御のレベルが低く、固定のままでは探査範囲が狭いのか?
    ・ルックダウン機能(海面、地表からのバックグラウンドの財津恩を後処理で、かつ、高速に処理する)が搭載される予定は出てくるのか?

    トランシェ2でAESAに換装するには電源ユニットも交換(大容量)って言われてますねえ。
    現在のパルド・ドップラー・レーダー搭載のトランシェ3Aでさえ、対地ミサイルの試験は2019年の1月から始まったばかりでは?
    2015年に開発が終了したって意味が・・・・2016年より開発試験機IPA5にて運用試験を始めてるから、基本的な開発か? 素子としての開発が完了したしたのが2015年って意味なんだろうか(アレニア・マルコーニ・システムズAMS 現在のSELEX社)、コンピュターとの統合は(BAEでしたっけ?)は2015年には完了してないですね。  

    • トランシェ1は、出来悪いの?
    • 2019年 11月 06日

    トランシェ1は、何故改良出来ないのだろう?
    英国で退役予定のトランシェ1を貰って、改修すれば良いとおもうのだが。

    • 匿名
    • 2019年 12月 03日

    ドイツ空軍はAESAを積む前に、ECMシステムの不具合を早く解決する必要があるのでは?
    現状タイフーンの稼動率の悪さの最大の問題なのに?

    今現在、ドイツ空軍にはAESAを搭載した戦闘機が一つも無く、このままではタイフーンにCaptor-E搭載型が出るよりも先に、
    空自のF-15J-MSIPの改修型(APG-82(V)1搭載)の方が先に出そうだな

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  2. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  3. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  4. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  5. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
PAGE TOP