欧州関連

ドイツ海軍、空母「グラーフ・ツェッペリン」以来となる空母建造話?

ドイツ海軍は、海上輸送路確保のために、もっと多くの艦艇を必要としており、この中にはヘリコプター搭載空母も含まれているという主張がドイツの政治家から飛び出した。

参考:Die Marine braucht für die Sicherung der Handelsseewege einen Hubschrauberträger

ドイツ海軍にヘリ空母が必要という、降って湧いたような話

現在、米国を筆頭に英国、フランス、イタリア、スペイン、ロシア、中国、インドが固定翼機を運用可能な空母を、オーストラリア、エジプト、ブラジル、タイ、日本、韓国、トルコが空母に類似した回転翼機運用に特化した艦艇を保有しているが、ドイツにこのような艦艇は1隻もない。

ドイツ、バイエルン州の首相であり、キリスト教社会同盟党首でもあるマルクス・ゼーダー氏は、国防費の問題に触れ、NATOが示すGDP比2.0%台の国防費支出にドイツ政府は努力すべきだと指摘した。

これは2017年以降、連立政権を組むキリスト教民主・社会同盟と、ドイツ社会民主党が国防費(現在GDP比1.3%)を増やす(当初1.5%まで引き上げると言われていた)のではなく、減らす後方にシフトし、GDP比「1.24%」という国防費を設定したことに対する批判とも受け取れる。

マルクス・ゼーダー氏はドイツ海軍の問題にも触れ、ドイツは世界の中でも経済的に恵まれた国であると同時に、海外からの資源輸送に依存しており、海上輸送路の安全確保のためには、ドイツ海軍にもっと多くの艦艇が必要となると指摘し、「多くの艦艇」の中にはヘリコプター搭載空母も含まれ、このような艦艇があれば北海から南シナ海まで、同盟国の一員として義務が果たせると話した。

さらに彼は、ドイツのような国にとって、現在、組織している海軍の規模は、あまりにも小さく、存在価値が低すぎるとも述べた。

要するに、ドイツの経済力は安全な海上輸送路によって支えられており、NATOの一員として義務を果たすためにも、国力に見合った海軍力を整備する必要があると言いたいのだ。

出典:海上自衛隊

彼の話に登場する「ヘリコプター搭載空母」が、いずも型護衛艦のようなヘリコプター運用に特化した艦になるのか、強襲揚陸艦のような艦になるのは不明だが、世界の流行に乗るならF-35Bを搭載した軽空母(もしくは強襲揚陸艦)になるだろう。

しかしドイツは、空軍が運用中の老朽化したトーネードの後継機候補からF-35Aを除外したため、軽空母に搭載するためだけにF-35Bを導入するのは、コストが掛かりすぎる(規模が伴わなければ高くつく)という問題があるため、あまり現実的ではない。

どちらにせよ、この話はドイツメディアでも非常に扱いが小さいので、大きな論議に発展することは無いとは思うが、一応、ドイツ国内でも「空母」待望論があるという管理人の興味本位で取り上げた。

この「ヘリコプター搭載空母」建造話は、メルケル首相の後継者と言われる、ドイツキリスト教民主同盟党首のカレンバウアー氏が持ち出した「欧州空母」建造構想より、十分実現性の高い話だと管理人は思っているが、問題は現政権が、国防費を増やすどころか、逆に減らそうとしているため、どうやって建造費を捻出するか・・・

 

※アイキャッチ画像の出典:Public Domain 米海軍による空母グラーフツェッペリンの船舶識別マニュアル

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 9月 22日

    国防費減らして、各種装備の稼働率低下させた挙句に空母保有論だと…ある意味、今のドイツは韓国よりも酷いんじゃないか?

    4
    • 匿名
    • 2019年 9月 22日

    国防費を更に減らすって、ただでさえボロボロの軍隊を更にズタボロにするつもりなのか?
    これ、下手したらクーデターになるんじゃ

    1
    • 匿名
    • 2019年 9月 22日

    ヘリ空母の存在価値自体は変わらないけど身分不相応かという判断は誰が買うかで変わりますね

    1
    • カルトなやっさん
    • 2019年 9月 22日

    韓国は理由があるからね、表向きは将来アメリカと同等の空母戦力を保有する中国への対策、裏はもちろん日本や、

    1
    • 匿名
    • 2019年 9月 22日

    ドイツも国防費を必要最小限未満にまで切り詰めて軍隊をボロボロにしたのにさらに削減とは可哀想ですね。敗戦国だからってあまりにひどい扱い。

    4
      • 滅ぶ
      • 2019年 9月 22日

      今や、ポーランドにも遥かに劣る軍事力で、今後どうするのか?

      6
    • oominoomi
    • 2019年 9月 23日

    欧州諸国の軍事予算を見てみると、フランスが638億ドルで世界第5位につけている他は、イギリス500億ドル、ドイツ495億ドル、イタリア278億ドル、スペイン182億ドルとなっています。(GROVAL NOTE 2018)
    予算額と海軍力の比に関して言えば、「英・伊・西は頑張ってるな」に対して「独は何でこうなるの?」という感想を持ちます。
    日本の460億ドルに韓国は430億ドルと肉薄しながら、海軍力では遥かに及ばないんだから陸軍国はそんなもの、と言っても韓国海軍と比べても貧弱過ぎます。
    ドイツは決して予算が足りないんじゃなくて、予算の使い方がなんか間違ってるんじゃないだろうか、と思いますね。

    3
      • 匿名
      • 2019年 11月 22日

      明らかな欠陥品を4隻も作ってしまうくらいだからなぁ。
      ほんと、何に使っているのやら。

      2
    • 匿名
    • 2019年 9月 23日

    今のボロボロのドイツ海軍じゃ導入してもまともに運用できないだろうな

    • 匿名
    • 2019年 9月 23日

    これもブレグジットの影響なんですかね?
    EUとしての立ち位置から、海洋通商路の確保ということを考えてる人がドイツにもいる、くらいの意味合いで
    イギリスがEU抜けてもNATOは維持されるでしょうが、役割分担は増すことになるわけですから

    • 匿名
    • 2019年 12月 07日

    それよりも潜水艦だろ、ドイツらしく
    狭いバルト海に空母置いてもロシアミサイルの餌食になるだけ

    • 匿名
    • 2020年 10月 11日

    ドイツは今も昔も陸軍国家,陸上兵器と航空兵器を重視するけど海軍は軽視してきた歴史があるためUボートは通商破壊で活躍したけど海上艦の活躍はあまり目立たず空母に至っては実践投入できなかった一隻あるだけだった

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