軍事的報道

ロシア製防空システム拡散抑制は不可能? インド、S-400導入による米国制裁回避に成功

インド訪問中にトランプ大統領は25日、約30億ドル(約3,300億円)相当の米国製軍事兵器をインドに輸出する契約に署名したと発表したが、この契約はインド外交の勝利であると海外メディアは報じている。

参考:Indian Diplomacy Triumphs Over US’s Anti-Russia Sanctions Threat

トランプ大統領のインド訪問で発表した米国製軍事兵器の購入意図は?

米国がインドに輸出する兵器の中には「統合防空兵器システム(IADWS)」が含まれており、これは空地空ミサイルAIM-120 AMRAAMを転用して開発した中高度防空ミサイルシステム「Norwegian Advanced Surface to Air Missile System(NASAMS)」のことだ。

出典:Soldatnytt from Oslo, Norway / CC BY 2.0 中高度防空ミサイルシステム「NASAMS」

インドは2018年10月、防空システムS-400「トリウームフ」を調達するためロシアと総額50億ドルの契約を結び、すでに前金まで支払い済みだ。米国はインドのS-400導入を問題視して米国製の防空システム「サード」及び「パトリオット」を購入するよう「敵対者に対する制裁措置法(CAATSA)」発動をちらつかせながら圧力をかけていた。

トルコはロシアからS-400導入を強行したため、F-35プログラムに出資(約14億ドル:約1,520億円)したにも関わらずF-35を取り上げられてしまい、導入したS-400を破棄(トルコ国外へ移動)しなければCAATSAを発動すると脅している。

そもそもCAATSAとは幾つかある対ロシア経済制裁の一つであり、これに違反する個人や団体に米国が独自に経済制裁を課すというものだ。その制裁内容は米国の輸出承認申請や金融システムへのアクセスが禁止され、事実上、米国企業とのビジネスができなくなるという内容で国単位で指定されれば経済に大きな影響を及ぼす。

出典:U.S. Army photo 弾道弾迎撃システム「THAADミサイル」

ただインドは米国製の「サード」や「パトリオット」では性能や価格面でS-400「トリウームフ」の代わりにはならないと考えており、S-400調達を維持したまま米国のCAATSA発動を回避する手段を模索してきた結果が、今回の米国製軍事兵器購入契約だ。

インドが米国製兵器の購入をするのは初めてではないのに、なぜ今回の米国製軍事兵器購入がインド外交の勝利になるのか?

インドは米国から無人偵察機MQ-9や対潜哨戒機P-8などを購入してきたが、どれもオバマ政権時に契約したものでありCAATSAを制定したトランプ政権から米国製兵器を購入したことはなかった。

今回署名した約30億ドル分の米国製兵器には約21億2,000万ドル分のMH-60Rや、最大で18億ドルといわれるNASAMSの購入が含まれており、さらにトランプ大統領のインド訪問前に発表されたAH-64E導入まで合わせると総額65億ドルもの米国製兵器をインドは購入することになり、事実上、インドのS-400を問題視しない=CAATSA発動をしないというお墨付きをトランプ大統領自身が与えたと受け取る事ができる。

出典:public domain MH-60R

特に米国製防空システム「サード」や「パトリオット」の購入の代わりに、S-400と用途の被らない中高度防空ミサイルシステム「NASAMS」を導入したことでインドの防空システム問題にケリがついたことを印象づけており、この部分を海外メディアはインド外交の勝利だと評価しているのだ。

米国としてもF-35導入の有無でトルコと状況が異なるインドに、CAATSA発動をチラつかせながらS-400導入を諦めさせるのは難しく、もしCAATSA発動を強行すればインドとの外交関係悪化やF-21(F-16Vインド向け仕様)やF-15EX、F/A-18E/Fなどの輸出が全て中断することになり、トランプ政権を支える防衛産業にとってもマイナスな状況を生み出す結果となる。

しかし、今回のインドS-400導入に関する米国の判断は、S-400導入を検討している国にとって大きな影響を与えることは確実で、要するに米国からF-35を導入させしていなければロシアからS-400を導入しても、CAATSA発動はないと解釈されるからだ。

米国にF-35を取り上げられたトルコは米国のS-400に対する曖昧な態度は、ロシアのS-400拡散を不正ぐのではなく助長させるだけだと批判している。

ただトルコの場合はF-35の導入国という立場以外にも、NATOの加盟国であり、国内に米国の核兵器貯蔵施設を抱え、ロシアの黒海艦隊を封じ込める防波堤の役目を担っているだけに置かれている状況が政治的難しいため、一言でインドと比較するのは困難だろう。

ただ確実に言えるのは、S-400導入=CAATSA発動の方式は完全に崩れ、今後、S-400導入国は増えていくだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:ru:Участник:Goodvint / CC BY-SA 3.0 防空システムS-400「トリウームフ」

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 2月 26日

    S400ってそんなに優秀なんでしょうか。
    確かにコンセプトはすごいとは思いますが。
    ロシア製の対空ミサイルというと旅客機ばかり打ち落としている印象です。

      • 匿名
      • 2020年 2月 26日

      ベトナム、中東戦争での活躍とか、F-117撃墜など、最も実戦経験豊富なのがロシア(旧ソ連)の地対空ミサイルと思います。
       逆に米国製の地対空ミサイルによる撃墜はアフガンでのスティンガー以外は余り聞かないけど、これは米軍その他が圧倒的なエアカバーの元で自軍の上空に敵機が現れる、ということが滅多にないからか。

        • 匿名
        • 2020年 2月 27日

        >圧倒的なエアカバーの元で・・・
        確かにそうですね。
        アメリカにはゲパルトや87式のようなものがないのがその理由と聞いたことがあります。
        制空権を取るのに自信があるのでしょう。
        ということは無ければ戦争しないということか。

      • 器用貧乏
      • 2020年 2月 26日

      皆んなが買うと言う事は、良い物なのだろう。
      日本も買って、技術も頂こう。
      ところで、こんなにあちこち売って、技術情報が漏れないのかな。

      • 匿名
      • 2020年 2月 27日

      S-400についてはあまり話を聞かないのですが近接防空のパーンツィリは
      シリアで施設を攻撃する米軍の巡航ミサイルや無人機を片っ端から撃墜しまくって
      パーンツィリが弾切れになったから破壊に成功したというぐらい優秀な対空兵器です
      ロシアの対空兵器は実戦経験豊富なので馬鹿には出来ないです

        • 器用貧乏
        • 2020年 2月 27日

        それなら、参考に購入しなきゃ。

    • 匿名
    • 2020年 2月 26日


    • 匿名
    • 2020年 2月 26日

    F-3の場合なら、スマートスキンでS-400のミサイルの接近を検出したらウエポンベイから無人機(ミサイル)を発射して自機とミサイルの軸線上に無人機を誘導するようにすることで自動的にミサイルが無人機に命中するような仕組みを作るだろう。

    • 匿名
    • 2020年 2月 26日

    s400は総称で各ミサイルの名前ではない。
    色々なミサイルやレーダーを連結出来るのが強みのはず、場合によってはnasamsすら統合されるかもしれん

    • 匿名
    • 2020年 2月 26日

    東西装備群が混在する第三世界の軍事事情は傍目にはワクワクしますね。

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