ロシア関連

革新より堅実さを選択したロシア、次世代戦車「T-14」の量産実用化は当面先送り

ロシアが開発した次世代主力戦車「T-14」は2025年までに2,000輛近くを量産してロシア陸軍に引渡される予定だったが、現時点でそのような事実は確認されていない。

参考:Even Russia Knows Its High-Tech T-14 Armata Tank Is in Deep Trouble

ロシアの次世代戦車T-14の調達計画はどこに消えたのか?

T-14は次世代装甲戦闘車輌の共通プラットフォーム「アルマータ」を使用して開発された次世代主力戦車で、125mm滑空砲を搭載した無人砲塔を採用し乗員の生存性や防御力を向上させているのが特徴的な戦車で、西側諸国は米国のM1エイブラムスやドイツのレオパルド2よりも優れていると報じられ、2018年までには量産が開始され2025年までにはロシア陸軍に2,000輛近く引渡されると言われていた。

しかし現在のロシアはT-14を調達する様子はなく、逆にT-90やT-80などの既存戦車をアップグレードすることに注力しており、2020年にはT-90の最新型T-90Mを含む400輛以上の戦闘車両を新たに導入すると発表すると発表したが、この中にはT-14は含まれていない。

では、次世代主力戦車「T-14」の調達計画はどうなってしまったのか?

出典:Vitaly V. Kuzmin / CC BY-SA 4.0 次世代主力戦車「T-14」

革新的なT-14のシステムは複雑で、約400万ドル(約4.4億円)と言われる価格もネックとなり同戦車の大量調達計画は既に放棄されいるの現状だ。ロシアは技術革新に代価が必要になることを知っているため、急いでT-14を実用化することに拘っておらず、少量の生産を続けながら運用を続け技術が成熟するのをじっくりと待つ方針だ。

そのため海外市場でも価格の安さから人気が高いT-90やT-80などのアップグレードさせ、米国や欧州の戦車に対抗していくものとみられる。

良し悪しは別としても、技術的に未成熟のF-35を量産して運用しながら修正を行う米国とは全く逆の発想でロシアらしい手堅い装備調達だと言えるが、ロシア製兵器を購入する国は価格を重視するため米国製兵器のように高価な兵器では受け入れられないという理由もあるのだろう。

ロシア陸軍が調達を進めるT-90Mは150万ドル~200万ドルと言われ、輸出向けの価格でも300万ドル(約3.3億円)を切ると言われており、技術的に未成熟で約400万ドル(約4.4億円)の値札がつけられたT-14を欲しがるのは中国ぐらいしかいないだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:Boevaya mashina / CC BY-SA 4.0 次世代主力戦車「T-14」

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 2月 19日

    アルマータシリーズの利点は、シャーシの共通化による運用の容易さにある。
    無人砲塔はともかく、今後中型シャーシとして、多くの車種に使われて行くのだろう。

    1
    • 匿名
    • 2020年 2月 19日

    人間の値段(一人3億円くらいか?)を考えると安く感じる

      • 匿名
      • 2020年 2月 19日

      この場合、絶対的な兵器の価格よりも、ロシアのGDPや軍事予算に占める割合の方が重要かもしれない
      ロシアの場合、一人当たりの金額も西側諸国ほど絶対額は高くないだろうし。相対的な価値は分からないが

    • 匿名
    • 2020年 2月 19日

    中国は中国で99式と15式の配備進めたいから当分いらないんじゃないだろうか
    アルマータはともかくT-14はソ連時代から時々出てくる大規模配備されない戦車の一種になるかも

    • 匿名
    • 2020年 2月 19日

    金欠なだけでしょ

    • 匿名
    • 2020年 2月 19日

    まだ技術的な困難があるのも事実かもしれないが、資金難で優先順位が低いだけな気もする
    同じアルマータのT-15とBMPっぽいクルガネツ-25は見た目がものすごく好きなので順調に量産して欲しい

    • 匿名
    • 2020年 2月 19日

    随分と堅実ですね
    まあ現状のT-90や80でもレオパルト2に対して優位なのでかなり余裕を持ってそう

    • 匿名
    • 2020年 2月 19日

    冷戦中もソ連の戦車を持ち上げていたけど実際は湾岸戦争で判明した程度だしたいした事は無いのでは?

      • 匿名匿名
      • 2020年 2月 20日

      湾岸戦争でボコボコにされたのは、ロシア正規軍向けの物ではなく輸出用のグレードダウン仕様 モンキーモデル だったからでは?…

      1
        • 匿名
        • 2020年 2月 22日

        でもロシア系の複合装甲は、拘束セラミックを未採用の割に、同系統のメルカバと異なり多重化・大型化も避けてる中途半端な代物。
        M1の系統のような、重金属系に走り重量効率を犠牲にして容積効率向上を計る、って手も避けてる。
        だからERAをベタベタ貼って、足りない防御力を補ってるのでは?

        1
    • 匿名
    • 2020年 2月 20日

    ロシアは戦車より無人機の立ち遅れが深刻だと聞いた気がするんで優先順位からして止む終えないんでしょう。
    アメリカ至っちゃエイブラムス現役だしアルマータがどんだけの性能であれ今すぐは要らんでしょう

    • 匿名
    • 2020年 2月 20日

    ”輸出用が低品質”なら「俺が買ったロシアの武器はwww」ということになって結局は評判が落ちる
    本国用以外はチープモデルしか渡さない不実な国という評判とダブルで、西側と同水準だが安価というウリ口上を粉砕する
    どう言い訳しても無駄なので黙って新製品を出すほうがマシ

      • 匿名
      • 2020年 2月 20日

      そういった市場理論を無視して劣化兵器を世界中にバラ撒いてた旧ソ連時代の悪名が、未だロシア製兵器の評判を貶めてるって話なんだよなぁ…

    • 匿名
    • 2020年 2月 20日

    ・技術的・運用的な困難にぶつかった
    ・金がない
    ・金は比較的あるが、優先度が低い

    西側の戦車も今や1両10億はするわけで

      • 匿名
      • 2020年 2月 20日

      ドルで比べちゃダメな気がする。購買力平価とか、ルーブルベースとかで見てどのくらい価格が高騰しているか知りたいところです。

        • 匿名
        • 2020年 2月 22日

        車作れない国の戦車なんだから御察しだと思うけどねぇ。

        2
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