インド太平洋関連

韓国空軍、初期運用能力を獲得した「F-35A」の部隊配備を宣言

韓国は12月17日、米国から導入した第5世代戦闘機「F-35A ライトニングⅡ」の初期運用能力を獲得したことを宣言する予定だ。

参考:오는 17일 F-35A 전력화 행사 실시한다

韓国が導入した第5世代戦闘機「F-35A」が実戦配備に入る

韓国国防部は10日、3月から始まった韓国空軍へのF-35A引渡し(計13機)が完了したことを受け、空軍主催のF-35A戦力化行事が12月17日に執り行われると発表した。

この行事は事実上、F-35Aの初期運用能力(配備可能な最低限度の状態)獲得を宣言するものであり、韓国空軍のF-35Aが正式に部隊配備に入ったことを示すものだ。

出典:public domain F-35A

通常、韓国では新兵器の導入や、兵器の部隊配備など節目毎に、国民へのアピールや軍の士気高揚を狙い式典形式の行事が大々的に行われ、韓国メディアもこれ大きく報道するのが常だが、2018年に韓国の文在寅大統領と、北朝鮮の金正恩委員長とが板門店で会談し、板門店宣言と呼ばれる共同宣言を出したあたりから、このような形式の行事を控えるようになった。

出典:Cheongwadae 会談当時の韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩委員長

しかし、北朝鮮は板門店宣言以降に行われた韓国の兵器導入について、南北軍事合意に違反していると強烈な批判を繰り返し、韓国側は南北軍事合意に違反していないと主張しているが、結局、関連行事はどんどん簡素化され、遂にはF-35A戦力化行事は非公開で行われることになった。

補足:北朝鮮が主張する南北軍事合意に違反していると言う部分は「双方は相手方を狙った大規模な軍事訓練ならびに武力増強問題、多様な形態の封鎖、遮断や航海の妨害、相手方に対する偵察行為の中止などについて「南北軍事共同委員会」を稼働させ協議すること」とした部分だ。要するに「相手方を狙った武力増強」は南北合意の精神に違反すると言いたいのだ。

韓国空軍は、今月中に韓国へ引き渡される予定の無人偵察機「RQ-4 グローバルホーク」についても、韓国到着を記念した行事を行わない=国民への公開はしないと明らかにしており、このような態度は誰がどう見ても、北朝鮮の批判に韓国が屈したようにしか見えないため批判が多い。

どちらにしても、F-35A戦力化行事の非公開は韓国政府の決定事項なので、他国の人間が文句をつける筋合いではないが、このタイミングで韓国空軍が公開した動画は、政府の配慮をぶち壊しにする可能性がある。

12月9日に公開された韓国空軍の広報動画には、韓国空軍のF-35Aが北朝鮮の「車載移動式長距離弾道ミサイル」や、ロシアのパーンツィリ-S1に似た「複合防空車両」を攻撃するCGアニメーションが含まれており、北朝鮮の主張が正しいことを証明していると言ってもよく、この動画については海外メディアも、韓国のF-35Aが北朝鮮を攻撃していると報じている。

そのため北朝鮮は韓国への批判をさらに強めてくることが予想されるが、現時点でも、この動画は再生可能なままなので、もしかするとF-35A戦力化行事を潰された韓国による北朝鮮への、ささやかな嫌がらせなのかもしれない。

 

※アイキャッチ画像の出典:韓国空軍が公開したYouTube動画のスクリーンショット

東アジア最大のAH-64保有国? 韓国、最強の攻撃ヘリ「AH-64E」追加導入を決定前のページ

米国を上回る建造速度? 中国海軍、信じられないほどの軍艦を「同時」に建造中次のページ

関連記事

  1. インド太平洋関連

    韓国が保有する主力戦車「K1E1」の約2割で照準器が故障中、しかも修理不可能?

    実質的に韓国陸軍の地上戦力において中心的役割を果たす戦車「K1/K1E…

  2. インド太平洋関連

    フィリピン、米国が提案したAH-1ZもAH-64Eも高価すぎて購入拒否

    フィリピンのデルフィン・ロレンザーナ国防大臣は13日、米国が販売を承認…

  3. インド太平洋関連

    オーストラリアが独自の極超音速兵器を開発、今後10年間で国防分野に約20兆円投資

    オーストラリアのモリソン首相は新型コロナウイルス後の世界が「より危険で…

  4. インド太平洋関連

    豪軍の統合防空向けシステム、受注したのはノースロップではなくロッキード

    豪国防省は28日「統合ミサイル防衛(IAMD)のコアとなる統合空戦管理…

  5. インド太平洋関連

    米国務省、豪州に最大220発のトマホークを売却する可能性を承認

    米国務省は16日「オーストラリアに対外有償軍事援助で最大20発のトマホ…

  6. インド太平洋関連

    韓国のハンファディフェンス、歩兵戦闘車レッドバックの欧州展開を示唆

    韓国のハンファディフェンスは9日、歩兵戦闘車(IFV)レッドバックの動…

コメント

    • 匿名
    • 2019年 12月 16日

    動画だけは何時も勇ましいんだよなぁ。

    • 匿名
    • 2019年 12月 16日

    大丈夫大丈夫
    半分以上は展示機andパーツ用で
    飛べなくなるから

    • 匿名
    • 2019年 12月 16日

    せっかくさ真影を獲得したんだから塗装メンテナンスアップデートを怠らずに
    運用してほしいな…でないとタダの戦闘機になっちゃう。

    • 匿名
    • 2019年 12月 16日

    早くね??受領したのついこの間だろ
    まともな作戦行動がとれるような運用できるレベルにないと思うんだが…
    単に編隊飛行できるレベルでOKって事にしてないか?
    いくら兵は拙速を尊ぶって言ってもなぁ…拙速というより稚拙なんではという気がしないでもない

    • 匿名
    • 2019年 12月 16日

    まあ、それにしても自分たちの放射砲や訓練をさしおいて一方的に約束を守るよう要求する面の皮の厚さは大したものというか…
    なんか韓国がまともに思えてくるレベルってどういうこっちゃ

    • 匿名
    • 2019年 12月 17日

    誤字がありますのでお知らせです。
    >北朝鮮の批判に韓国が屈指たようにしか見えないため批判が多い。

    本当は「屈したようにしか見えない」を意図していたでしょうか。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  2. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  3. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  4. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  5. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
PAGE TOP