欧州関連

エアバス、フライングブームによる空中給油作業の自動化に世界で初めて成功

エアバスは17日、フライングブームによる空中給油作業を世界で初めて完全に自動化することに成功したと発表した。

参考:Airbus achieves world’s first fully automatic refuelling contacts

エアバスが世界で初めてフライングブーム式の空中給油作業を完全に自動化することに成功

エアバスの完全自動空中給油システム(A3R)は空中給油機「A330 MRTT」に搭載することを想定して開発されたもので、このシステムの最大の特徴は空中給油を受ける側(戦闘機等)に何の追加装備も必要としないところだ。

A330 MRTTの空中給油オペレーター(ARO)は空中給油を受けるため接近してきた航空機を確認すると全自動空中給油システム(A3R)を起動させるだけで、数センチ単位の精度で制御されたブームは自動的に受け手の給油口にめがけて伸びていき接続する最終タイミングも自動的にシステムが判断を行う。さらに燃料の移送も全て自動化されており空中給油オペレーターは一連の作業を監視するだけで良いため作業負荷を大きく軽減することができる。

すでにエアバスはポルトガル空軍のF-16に対して行われたテストで計120回のドライ接続(ブーム先端と給油口の接続のみで燃料移送はなし)に成功しており、初期運用能力獲得に向けた認証テストを2021年から開始する予定だ。

出典:U.S. Air Force Photo by John D. Parker

一方のボーイングも今月10日、自社の空中給油機「KC-46A ペガサス」を半自動もしくは完全な自動空中給油に対応させることを視野に入れた「リモートビジョンシステム 2.0(RVS 2.0)」を発表するなどフライングブーム式の空中給油機はオペレーター作業の自動化が焦点になっている。

ただKC-46Aの自動空中給油技術はRVS 2.0開発の先にある未来なので、実用化されるとしても当分先の話になるだろう。逆にA330 MRTTの自動空中給油技術は数年後にはA330 MRTTに実装されることが予想されるためボーイングにとっては非常に厳しい現実だ。

基本的にフライングブームによる空中給油方式を採用しているのは米空軍向けに開発された航空機に限られ、米海軍機や欧州機は基本的に設備が簡易なプローブアンドドローグ方式を採用しているため空中給油機としての需要は後者の方が圧倒的に多い。KC-46AもA330 MRTTもフライングブームとプローブアンドドローグの両方に対応しているがKC-46Aはリモートビジョンシステムに問題があって完全に能力を発揮できる状態ではなくRVS 2.0の完成を待たなければならない状況なので、海外市場では先に完成したA330 MRTT(7ヶ国+NATO採用)の方が支持されている。

出典:Public Domain A330 MRTTの空中給油作業コンソール

KC-46Aには米空軍という最強の顧客がいるため生産予定数(170機以上)ではA330 MRTTを上回っているが、海外市場では日本とイスラエルにしか売れていないため苦戦していると見ていい。ここに自動空中給油技術で差をつけられれば政治的な圧力が通用しない国の大半はA330 MRTT採用に傾くはずでボーイングにとっては耳の痛い話だろう。

管理人はボーイングが嫌いというわけではないが、良いニュースが本当に一つもないので軍事部門を売りに出すのではないかと心配だ。

 

※アイキャッチ画像の出典:AirbusDefence

感染者1000人超えの仏空母、過熱する犯人探し「いつ誰が新型コロナを持ち込んだ?」前のページ

移動したのか?後退させられたのか?米爆撃機のグアム前方配備中止が意味するもの次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    米英、今後数日以内にロシア軍がウクライナへ侵攻する可能性を警告

    米国のバイデン大統領は「今後数日以内にロシア軍がウクライナへ侵攻するか…

  2. 欧州関連

    速報|トルコ、ロシア製防空システム「S-400」追加導入の契約に署名

    トルコはロシア製防空システム「S-400」の追加導入に関する契約に署名…

  3. 欧州関連

    米仏に続きUAEまで東地中海問題に介入、F-16Eをギリシャに派遣

    フランスに続きアラブ首長国連邦(UAE)が東地中海でトルコと対立するギ…

  4. 欧州関連

    ロシア軍が攻勢をかけるバフムート周辺の戦い、状況的には非常に際どい

    ウクライナ軍東部司令部はロシア軍の攻勢を認めつつ「依然としてソレダルを…

  5. 欧州関連

    トルコとの対立が悪化するギリシャ、戦争に発展すれば孤立無援になる

    トルコとの対立が悪化するギリシャの世論調査は非常に興味深い傾向を示して…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 4月 19日

    ボーイングが潰れても身から出た錆、自業自得
    どうせトランプが助けてくれるだろ

    • 匿名
    • 2020年 4月 19日

    仮に売り出したとしても日本で買い取る余裕は無いしな
    三菱もMRJで損失がひどいし

      • wyuki
      • 2020年 4月 19日

      三菱重工は大変そうですね。
      ならっ!
      航空機部門に限る必要在りません。
      コロナ以前はそこそこに景気の宜しい造船部門がボーイングを買い取るのも在り。
      川崎重工。
      ジャパン・マリン・ユナイッテド。
      っか、知らん?
      あっ。
      三菱重工も、造船部門在ったのね。

    • 匿名
    • 2020年 4月 19日

    ボーイングの損失補填のためにアメリカの同盟国が無駄に高い機体を買わされまくるんだろうな
    日本とか日本とか日本とか

      • 匿名
      • 2020年 4月 19日

      日本も忘れないでね

      • 匿名
      • 2020年 4月 20日

      日本程度の規模でどうやってボーイングの737787KC46777x等による3兆円以上の損失を補填するつもりなんですかね?

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  2. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  3. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  4. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  5. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
PAGE TOP