米国関連

米海軍、コロンビア級原潜建造のためイージス艦や攻撃型原潜調達を大幅削減

米海軍は2021年からコロンビア級原子力潜水艦の建造に着手する予定だが、同艦の建造は艦艇建造予算の20%~40%を占めるため他の艦艇建造に大きな影響が出ることになる。

参考:The US Navy wants more ships but can’t afford them, admiral says

コロンビア級原子力潜水艦の建造費用が他の艦艇調達を圧迫する?

米海軍はSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を搭載したオハイオ級原子力潜水艦を更新するためコロンビア級原子力潜水艦を2021年から建造する予定だが、同艦の建造費は海軍が艦艇調達のために割り当てる予算の20%~40%を占めることになるため、米海軍は2025年までに調達する艦艇の数を当初計画していた21隻から11隻へ削減することになった。

その結果、米海軍が2025年までに保有する艦艇の総数は305隻となる。しかし米海軍は2030年までに355隻体制を確立することを義務づけられているため、2026年から2030年までの5年間で50隻の艦艇を建造しなければならないため、2030年に355隻体制が実現する可能性は限りなく低いと言わざるを得ない。

米海軍もコロンビア級原子力潜水艦が他の艦艇建造に大きな影響を与えることは承知していたので、海軍の艦艇建造予算とは別にコロンビア級原子力潜水艦の建造費を割り当てて欲しいと説得を続けてきたが、結局、この説得は失敗に終わってしまった。

出典:public domain アーレイ・バーク級駆逐艦

そのため米海軍はコロンビア級原子力潜水艦の建造費を艦艇建造予算から捻出するため、アーレイ・バーク級駆逐艦やバージニア級原子力潜水艦の調達数を削り、タイコンデロガ級巡洋艦や沿海域戦闘艦の退役を加速させることで帳尻を合わせようとしているが、このような計画は別の問題を引き起こす可能性がある。

米海軍からの艦艇発注数が減れば、米国の造船企業は軍艦建造に必要な人材や高度な技術を維持することが難しくなり、コロンビア級原子力潜水艦の建造が一段落して予算に余裕が生まれた頃には軍艦の建造能力が縮小しているかもしれない。

ただし、この計画は2021会計年度予算案として米海軍が提示したものであり、当然これを実行するには米議会の承認が必要になるので計画が大きく修正される可能性もあるが、コロンビア級原子力潜水艦の優先度は非常に高いため、これを延期したり中止することはまずあり得ないだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain コロンビア級原子力潜水艦

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 2月 14日

    戦後の米造船所は閉鎖されてばっかりだからなぁ

    • 匿名
    • 2020年 2月 14日

    法で艦艇数を多い方向で縛るのって意味有るのか

    • 匿名
    • 2020年 2月 14日

    これは早急に韓国はアメリカの求める分担金を払う必要があるな。

    0
    • 匿名
    • 2020年 2月 14日

    核抑止力は通常戦力にとってクソでかい重荷だってハッキリ分かるね

    • 匿名
    • 2020年 2月 14日

    艦艇を「数」で縛る事自体が意味分からん。
    355隻ったって中身の艦種違ったら全然別もんじゃん。
    ましてや355隻確保のために既存艦のメンテが滞って稼働率が下がってどうする。

    • 匿名
    • 2020年 2月 14日

    軍事費を減らすと後で取り返しのつかないろくでもないことになるって事やね

      • 匿名
      • 2020年 2月 14日

      アメリカ軍の予算は増えてるけどな

      老朽化した艦艇の修理と、空母を中心とした大型艦の建造に予算(とドック)食われてヒイヒイ言ってるところにSSBNの更新が来てにっちもさっちもいかなくなってるってのが正確なとこじゃないの

        • 匿名
        • 2020年 2月 15日

        米国:新国防戦略 二正面作戦見直し 地上戦力を大幅削減

        [毎日新聞 2012年1月6日 東京朝刊]

         【ワシントン白戸圭一】オバマ米大統領は5日午前(日本時間6日未明)、国防総省で演説し、国防費削減に対応するための新国防戦略を発表した。米軍が約20年間にわたり維持してきた二つの紛争に同時対処する「二正面作戦」遂行の態勢を見直し、イラク駐留米軍の完全撤収とアフガニスタンからの段階的撤収を受けて大幅に地上戦力を削減。地域別では、安全保障上の脅威が軽減している欧州や中南米の戦力を削減し、中国の軍事的台頭を見据えたアジア・太平洋地域重視の方針を改めて明確化した。
         大統領が国防総省へ出向いて演説するのは異例。米国家安全保障会議のビーター報道官は「大統領が(新戦略策定の)過程に個人的に関与してきたことを示す」と述べた。11月の大統領選で再選を目指すオバマ氏は、米経済低迷の元凶とされる戦費削減に真剣に取り組む姿を国民にアピールする狙いとみられる。
         米議会は昨年8月、総額2兆5000億ドル(約192兆円)の財政赤字削減を目指す法律を成立させた。今後10年で国防費約4900億ドルを削減する必要が生じ、国防戦略見直しが進められてきた。
         新国防戦略ではこのほか米軍の接近を阻止する能力を持つ国家に対抗する「ジョイント・エア・シー・バトル」(空海統合戦略)構想を推進するため、空、海軍の大幅削減は避ける。

        これが今になって効いてきたのではないか

    • 匿名
    • 2020年 2月 14日

    大丈夫、キムチという名の財布があるから

    • oominoomi
    • 2020年 2月 15日

    不足分はローエンドFFG(X)の追加建造で埋めるんじゃないでしょうか?
    大綱の護衛艦定数をFFMで満たそうという海上自衛隊と事情は似てますね。

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