米国関連

新型コロナ関連:米海軍、議会が英雄だと賞賛した空母「ルーズベルト」の艦長を解任

米メディアは2日、新型コロナウイルス「COVID-19」に襲われ艦内で感染が拡大している空母「セオドア・ルーズベルト(CVN-71)」のクロジャー艦長が解任されたと報じた。

参考:The Navy has removed the captain of an aircraft carrier stricken by the virus.

空母ルーズベルトの艦長は果たして英雄か?裏切り者か?海軍はクロジャー艦長を解任

先月の31日、クロジャー艦長は艦内感染を防ぎ「悲劇的な結果」を避けるためにも適切な処置(ウイルスの感染拡大を防ぐため乗組員の大半を上陸させて欲しいという意味)を要請する手紙を海軍首脳部に送ったが、この手紙の内容がサンフランシスコ・クロニクル紙に漏れ大きく報道され波紋を呼んだ。

クロジャー艦長が海軍首脳部に送った手紙の内容は、空母ルーズベルトが寄港・隔離を受けているグアムでは1日の検査人数が200人までに制限されているため艦内で進行する感染拡大を十分に抑え込む=感染者の早期隔離が不十分だと指摘、多くの健康な乗組員がまだ検査に引っかかっていない感染者と一緒に狭い艦内に閉じ込められている状況では艦内のウイルス感染拡大を食い止める術がないと訴えている。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist Seaman Kaylianna Genier/Released

クロジャー艦長は手紙の中で「我々は戦争をしているのではないので乗組員が死ぬ必要性はどこにもない。今直ぐに行動を起こさなければ米海軍で最も大切な資産である乗組員を助けることが出来なくなる」と訴え谷も関わらず、CBSイブニングニュースに出演したエスパー国防長官は艦長の手紙を「読む機会がなかったので内容を知らない」と話したため大きな批判が受けてしまった。

ある米メディアはクロジャー艦長の上官にあたるエスパー国防長官は彼の手紙を自分の時間を割いてまで読む価値がないか優先して処理するものではないと考えており「これは何かが決定的に間違っている」と批判、元NATO最高司令長官のジェームズ・スタブリディス海軍大将は「残念ながら艦艇はウイルスの蔓延に理想的な繁殖地だ」と指摘した。

下院議会の軍事委員会もクロジャー艦長の告発は勇気ある行動であり賞賛されるべきだと語り、同委員会の議長を務めるジャッキー・スパイヤー議員は「この告発がメディアに漏れて報道されていなければ、もっと多くの命が影響を受けていただろう」と話し、クロジャー艦長のとった行動は間違っていないと擁護している。

出典:public domain 司法長官によって行われたマーク・エスパー氏の国防長官就任式

結局、クロジャー艦長の手紙は国防総省や海軍が講じた新型コロナウイルス対策が効果を挙げていない事実を知らせテレビに出演したエスパー国防長官に恥をかかせることになったが、彼の解任理由は恐らく手紙の中で政治に触れたことが原因かもしれない。

クロジャー艦長の手紙の中で「この問題を解決するには政治介入が必要でそれは正しいことだ」と書いており、要約すれば規則通りの対応しかできない国防総省や海軍では問題を解決することは不可能で、政治介入=トランプ大統領によるトップダウンの決定が必要だと言っているに等しく、もしトランプ大統領が事態に介入することになれば国防総省や海軍にとって面子は丸つぶれだ。

そのためクロジャー艦長の解任に踏み切ったと考えられる。

因みに国防総省も海軍も、クロジャー艦長の手紙については何も公式な反応を出していない。

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain 空母「セオドア・ルーズベルト(CVN-71)」

米海兵隊がF-35の調達数削減を行う理由は? 予算不足でパイロットが確保できないため前のページ

就役から約4年、ようやくズムウォルト級ミサイル駆逐艦に戦闘システムが届く次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    米国、ウクライナ軍がクリミア大橋攻撃にHIMARSを使用してもOK

    米政府高官は9日の記者会見で「クリミア大橋への攻撃にHIMARSを使用…

  2. 米国関連

    台湾防衛は不可能? 米シンクタンク、台湾有事で敗北するのは中国ではなく米国

    2015年に創設された比較的新しい保守系のシンクタンク「Defense…

  3. 米国関連

    米空軍、無人戦闘機「Skyborg」のプロトタイプ製造を獲得した4社を発表

    米空軍は23日、無人戦闘機プログラム「Skyborg(スカイボーグ)」…

  4. 米国関連

    権利を行使したシコルスキー、V-280 Valorを選択した米陸軍の決定に抗議

    米陸軍はUH-60の後継機にベル/ロッキード・マーティンのV-280 …

  5. 米国関連

    F-35B運用能力が向上?ウェルドックを取り戻した「アメリカ級強襲揚陸艦」の実力

    米海軍が建造を進めるアメリカ級強襲揚陸艦は、当初、ウェルドックを持たな…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 4月 03日

    上の対応がひどくて声を上げた現場の人間を面子のために解任とは腐ってるな。一つの街ほどの人間がいる空母で感染者がいればあっという間に広まるだろうに。

    • 匿名
    • 2020年 4月 03日

    今回の件で敵国の経済や軍隊に打撃を与えるのに核兵器より生物兵器の方が有用って事を証明してしまった
    問題は自分の所も被害にあう可能性が高いという欠点があるから簡単に使えないけど

      • 匿名
      • 2020年 4月 03日

      なんたる短絡的な考え方w おつむは大丈夫か? なんで核兵器所有国が同じような量で生物兵器を持ってないんだと思う?

        • 匿名
        • 2020年 4月 03日

        お前こそおつむは大丈夫か?なぜ核兵器所有国が同じような量で生物兵器を持っていないと考える?彼ら自身が持っていないと自称しているからか?一体どこまで純粋なのか知らないが、残念ながら国際社会というのはお前が考えているよりもずっと残酷な騙し騙されの世界だ。今や中国もアメリカも互いに相手の生物兵器だと非難合戦をやっているのは知っているだろう。

      • 匿名
      • 2020年 4月 03日

      この新型コロナウィルスって自然災害(自然発生?)なのでしょうか。
      全世界を禍に巻き込み世界最強の軍隊を機能不全に陥れさせる寸前なのですから、
      よくできた細菌兵器のように思えてなりません。
      現時点でそれなりの軍事力を行使できる国って限られていますよね。
      よく言われる言葉に第一発見者を疑えというのがあります。

        • 匿名
        • 2020年 4月 03日

        今回のウイルスの発生源はおそらく武漢にあるPL4ラボでしょう。その研究所から直接コロナウイルスが漏れたか、研究所の職員が実験に使われたコウモリを市場に売ったのが原因だとも言われています。どちらにせよ自然災害ではないでしょう、新型コロナウイルスは研究所で実験されていた細菌兵器の可能性は高いです。

          • 匿名
          • 2020年 4月 04日

          中国ではコウモリではなく豚という噂もあるようです。
          以前も武漢の研究所の実験動物を横流ししたバカがいたそうなので今回も「ある意味『本当に事故』」だったのかも。
          中国の医師が日経のインタビューでウィルスの変異が早すぎて自然発生説に疑問を感じると答えてましたよね。

          • 匿名
          • 2020年 4月 04日

          細菌兵器って言うけどどうやって作ったの…?
          ウイルスって同じところで培養し続けると毒性が減ったりするぐらいだし

          自然由来の可能性は高いけどさ

    • 誤字報告です
    • 2020年 4月 03日

    >訴え谷も関わらず

      • 匿名
      • 2020年 4月 03日

      いやいや、これは「誤字」ではありません。
      「訴え谷」という「谷」が「存在する」のですよ。

    • 匿名
    • 2020年 4月 03日

    そりゃまあ「いまこの空母は十分に機能できません」なんて世界に報道されちゃな
    攻めるなら今がチャンスですよ、と同義だもんな

    • 匿名
    • 2020年 4月 03日

    このクロジャー艦長はマスコミの餌にされてしまったよに感じてしまう。米海軍としても事態は重く見ているはずです。先に強襲揚陸艦ボクサーで感染者が確認されており、それに続いて空母までとなればその影響は甚大なはずです。既に米国はコロナ渦の真っ只中で身動きが取れない状況。何とかしたくても軍施設も空きがないのでしょう。
    自身に過失が無くても艦に何か起こればそれが不可抗力であっても艦長の責となってしまう。それらを踏まえたうえでも窮状を訴えたく手紙?を出したのでしょうが、マスコミに騒がれてしまえば解任も止む無しと思います。

    •  
    • 2020年 4月 03日

    信賞必罰を素早くやるのがアングロサクソン
    WW2を思い起こさせる。日本は常に平時モードが足を引っ張る
    あいつらは非常時を感じて生き生きしている
    最終的に勝つのはあいつ等だろう。あいつら側に全額を張った方が良い
    中共など勝ち馬な訳が無い

      • 匿名
      • 2020年 4月 03日

      非常時を感じてるのは中共も同じだと思いますけどね…。思い込みや願望を捨てて冷徹に物事を見極めないと賭け事には勝てませんよ。

        •  
        • 2020年 4月 04日

        そりゃ北京政府も当然痛感してるでしょう。
        中共が非常時を感じてないとは毛ほども思ってもいません。
        そしてあなたがツッコんでると思われる点でアメリカ政府の比較対象としたのは中共では無く日本政府です。
        統制国家と民主主義国家は政策の決定過程も対処の手段・方法も全く違うので比較対象には成り難いと思います。

    •  
    • 2020年 4月 03日

    信賞必罰を素早くやるのがアングロサクソン
    WW2を思い起こさせる。日本は常に平時モードが足を引っ張る
    あいつらは非常時(戦時)を感じて生き生きしている
    最終的に勝つのはあいつ等だろう。あいつら側に全額を張った方が良い
    中共など勝ち馬な訳が無い

    • 匿名
    • 2020年 4月 03日

    田母神さんが勝手に防衛省の思想とは相入れない論文を公表したとして解任された件はずっと忘れてない。
    彼の人格や思想がどうであれやったことについては二度と忘れない。
    どこもメンツやら保身やら思想に正直すぎて知性や公共への利益に対しての真摯さが欠片もない。
    サヨク陣営はこれが特に酷いと言っておく。

      • 匿名
      • 2020年 4月 03日

      同感です。ハシゴを外した麻生総理、要らぬ議論を巻き起こした文集&野党共々憤慨もの。特に当時の左巻きの人達はマスコミと結託して遣りたい放題でしたね。今程ネットが普及してなく情報の発信源が限られていました。マスコミの偏向報道の責任は重いと思う。

        • 匿名
        • 2020年 4月 04日

        ただねぇ、あの論文は読んだけど、内容そのものはさておいても、統合幕僚学校長を務めているのもかかわらず、論文の書き方が高校生並みの書き方で、あれで賞を取れて恥ずかしくないのか?と思ったけどな。
        よくよく話が出てくると論文提出したのが元部下や元部下の部下が多くて出来レース感が出ていたし、あれで統合幕僚長、海外で言えば統合参謀長、統合参謀本部議長と世界言ったら、”論文もろくに書けないバカか?”と言われるレベルで自衛隊の品格を落としているから当然な話だろう。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  2. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  3. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  4. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  5. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
PAGE TOP