米国関連

米海軍が第6世代戦闘機「F/A-XX」を単独開発する理由!第5世代戦闘機が犯した過ちとは?

米海軍は、次世代戦闘機を米空軍とは共同で開発する予定はなく、米空軍とは異なる優先目標のため、単独開発する方がコスト削減につながると主張した。

参考:After developing F-35 together, the U.S. Navy Will Make Its next-generation fighter Without the U.S. Air Force

米海軍が、空軍と共同で第6世代戦闘機開発プログラムを行わない理由

米海軍は、2030年代、F-18E/Fを更新するための次世代戦闘機、F/A-XX開発計画を空軍と共同ではなく、海軍単独で開発を進める理由として、米空軍と異なる優先目標が不必要なコスト負担を発生させるためだと、メリーランド州ナショナル・ハーバーで開催された、海上航空宇宙カンファレンスで語った。

出典:public domain F-22

空軍が開発中の次世代戦闘機「F-X」は、F-22ラプターを更新するための戦闘機で、「敵空域を貫通」し「奥深くまで侵攻可能」な戦闘機として開発されているが、これは海軍にとって必要のない能力で、F-Xは、この能力を獲得するためコストが必要だが、海軍にとって余計な能力に、余計なコストを支払いたくない。

但し、海軍と空軍が開発を進めている、2つプログラムは、電子装置、レーダー、ネットワーク技術、武器システムなど分野で、システムを共有しないということではなく、空軍と共有出来る部分については共有し、大きな利益を得るだろうと付け加えた。

現在、海軍は「敵空域を貫通」し「奥深くまで侵攻」が必要になる任務について、スタンドオフミサイルを使用するか、完全に空軍に任せることを予定している。

そのため、空軍が開発中の「F-X」を採用すれば、必要のない能力分のコスト負担まで強いられる結果になるため、海軍が単独で開発を行い、コストを節約したいという意味だ。

米空軍の「F-X」も、米海軍の「F/A-XX」も、同じ第6世代戦闘機と言われているが、運用面の差から第6世代戦闘機の概念に大きな違いが生まれている。

誘導ミサイルが、格闘戦を過去のものにすると考えられていた、あの時代の記憶が蘇る

さらに、興味深い記事を見つけた。

参考:Countries developing Sixth-generation jet fighter must avoid the mistakes made with the Fifth-generation jet fighter

第6世代戦闘機を開発する国は、第5世代戦闘機が犯した過ちを避けなければならないと言う主張だ。

第5世代戦闘機は、ステルス性能と、BVR(視界外戦闘)に重点を置いて開発されたため、WVR(視界内戦闘)のパフォーマンスと調達性(価格)を犠牲にするという過ちを犯した。一番重要なのは「手頃な価格」の実現であって、もし、購入するにも高価で、飛行させるにも高価で、開発が永遠に終わらないほど複雑なシステムを持つ第6世代戦闘機であれば必要ない。

出典:public domain F-35

第6世代戦闘機は、第5世代戦闘機と同じく、レーダー反射断面積の少ないエアーフレームと、レーダー吸収材料を駆使した戦闘機であるべきだが、この技術は、高度なセンサー技術の発展によって、時代遅れになる可能性が高い上、一度作られたエアーフレームの変更=アップグレードは、事実上不可能に近い。

そのため、電子戦技術、新しい電波妨害装置、赤外線探知からのステルス性確保の重要性が高まり、空対空ミサイルの長射程化が、第6世代戦闘機でも引き続き採用され、より射程が延長され、速度も早くなり、第6世代戦闘機における重要なポジションを占めるだろうという話だ。

結局、高度なセンサー技術を持つ相手との戦いでは、ステルスが機能せず、長射程化した空対空ミサイルによる視界外戦闘に陥りやすいため、電子戦技術、新しい電波妨害装置、赤外線探知からのステルス性を確保しなければ生き残れない。

そして、互いに高度なセンサー技術、電子戦技術、新しい電波妨害装置、赤外線探知からのステルス性を高めあった結果、行き着く先は、旧時代的だとバカにしていた視界内戦闘=ドックファイトで、ステルス実現のために犠牲にした、空中機動性を取り戻す必要があるという意味だろう。

誘導ミサイルが、格闘戦を過去のものにすると考えられていた、あの時代の記憶が蘇る。

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain F-18E/F

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 6月 01日

    センサーの高性能化の行き着く先が、ドッグファイトへの回帰とはねぇ。
    それだったら、ステルスなんて要らないんじゃね?
    それこそ究極のステルスと云われる、光学ステルスでも開発されない限りは。

      • 匿名
      • 2019年 6月 02日

      ステルス機が有利なのは変わらない
      お金かかりますけど…

      1
      • 匿名
      • 2019年 6月 13日

      ドッグファイトへの回帰なんてどこに書いてあるの? 脅威下での長距離侵攻能力が任務に含まれないってだけでしょ。
      光学ステルスだって究極でもなんでもない、光学的に見えなくても赤外線で捉えられたらなんの意味もない。
      お里が知れるコメントは止めとけ

    • 匿名
    • 2019年 6月 01日

    センサーが高度化しなくても、ミサイル撃ち尽くしたら、逃げるか有視界戦闘な気がする。

      • 匿名
      • 2019年 6月 02日

      専守防衛の建て前上 アウトレンジから攻撃出来ないんじゃないの?
      宣戦布告後ならまだしも…

        • 匿名
        • 2019年 6月 02日

        それは最初の一撃を受けるときだけで、その後はBVRでも構わないはず、正当防衛の権利は憲法に優先するから。

    • 匿名
    • 2019年 6月 01日

    ミノフスキー粒子散布によってモビルスーツが有視界戦闘するようになるのと一緒か

    3
    • 匿名
    • 2019年 6月 01日

    さすがにドッグファイトはないわ。人も機銃すら未来ではいらなくなる。戦闘機すらなくなってドローンが制空権を握ると思う。リーパーみたいなドローンが数百の単位で襲ってきたら戦闘機では対処できない。

      • 匿名
      • 2019年 6月 02日

      そのリーパーみたいなドローンは数十億するからラそれが数百機というと1兆円近い金が必要だぞ。
      一度の戦闘にそれだけ使うってのはアニメの見すぎ。

    • 匿名
    • 2019年 6月 02日

    海軍がファイターマフィアみたいなこと言ってる・・・

    • 匿名
    • 2019年 6月 02日

    「イタチごっこになるんだから、程々に」ってことか

    • 太郎
    • 2019年 6月 02日

    F35はセンチュリーシリーズみたいに失敗作扱いされそうだな

      • 匿名
      • 2019年 6月 02日

      今や成功作ですよ
      ポーランドが導入するくらいですし

      2
      • 匿名
      • 2019年 6月 02日

      アンチステルス技術の入ってない旧式(現在の最新を含む)兵器に対してF-35が一騎当千なのは
      これからも変わらないし、今アメリカでさえ持ってないアンチステルス技術が入った兵器が、
      科学経済で劣る東側の主力になってF-35のステルスが無力化されるなんて、
      まぁ21世紀も3/4を過ぎたころの話だろうしさすがにその頃…半世紀先には35も退役してるだろう
      そこまで無敵性を維持できれば十分すぎる

      2
        • 匿名
        • 2020年 5月 09日

        2076年にはF-35も引退ってことか
        第7世代機の話は聞かれるんだろうか?

        1
    • 匿名
    • 2019年 6月 03日

    SF小説じゃないがこのまま行くと気流の流れを検出して接近を感知する衛星さえ出そうな雰囲気
    おおよその位置さえ予測できればステルスだろうと大出力レーダーの狭角運用で捕捉出来るだろうし将来的には先祖帰りするんだろうか

      • 匿名
      • 2020年 5月 09日

      大出力レーダー狭角運用ステルスと赤外線光学ステルスを組み合わせれば
      更に気流ステルスもあればだれにも見つけられない

    • 匿名
    • 2019年 6月 13日

    電子戦の進化ってどうなんでしょうね。猫も杓子もステルスになって互いの発見距離が短くなったり、今でも逼迫する帯域をドローン戦闘機が食い潰すようになったら、互いの目を積極敵の潰しに行く電子戦の出番かないかなぁとぼんやり思ったり。
    グロウラーは今でも虎の子で一騎当千の機体みたいだけど、グリペンはどうなんだろう。貧者の核兵器みたいになるのだろうか。

      • 匿名
      • 2020年 5月 09日

      グリペンの後継機はタイフーンの後継機を兼ねる

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