軍事的報道

条約は不平等? 米国、中距離核戦力全廃条約に続きオープンスカイ条約からも脱退

ロッキード・マーティンは新型コロナウイルス(COVID-19)の影響でF-35の生産スピードを減速すると発表、ロシア外務省はオープンスカイ条約から米国が脱退すると発表した。

参考:COVID-19-Related Supply Chain Disruptions Slowing F-35 Production

参考:United States to Quit Open Skies Treaty: Russia

新型コロナウイルスの影響で遂にステルス戦闘機F-35の生産が減速へ

ロッキード・マーティンは21日、各国が新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大を防ぐためにとった措置の影響でF-35製造に参加している国際的なサプライチェーンが混乱を来していると語り、F-35の生産スピードを減速したと明らかにした。ただし同機の保守やアップグレードの開発作業には今の所は影響が出ていないと説明している。

しかし同社は航空機事業を支えるサプライチェーンの生産活動鈍化を考慮して2020年の売上予測(642億ドル:約7兆円)も最大で25億ドル(約2,600億円)低下すると語った。

一方のボーイングは今月の20日までに閉鎖されていた全ての工場の操業再開を明らかにした。これにより今月3日からストップしていたCH-47チヌーク、MH-139グレイウルフ、V-22オスプレイ、P-8Aポセイドン、KC-46Aペガサスなどの生産が約2週間ぶりに再開されることになるのだが、同社は今回の工場閉鎖による引き渡しスケジュールの遅延はないと説明した。

しかし防衛産業界のアナリスト達は、依然として製造に必要な部品供給を行うサプライチェーンが新型コロナウイルスの影響から立ち直っていないため引き渡し遅延は避けられないと予測しており、操業を取りやめた一次下請け企業106社の内操業を再開させているのは68社に過ぎず、サプライチェーン全体で見るとまだ2/3が操業再開に至っていない。

そのため米国政府は、新型コロナウイルスの影響で生産活動に支障を来したサプライチェーンを支援するため約2億5,000万ドル(約270億円)を拠出する決定を下した。

冷戦期に構築された戦争抑止のための条約がまた1つ失われる

ロシア外務省は米国が軍事力の透明性を高め戦争リスクを軽減させるため非武装の航空機によって自由にお互いを偵察しあうことを保障したオープンスカイ条約から脱退すると明らかにした。

そもそもオープンスカイ条約とは1955年の米ソ首脳会談時にアイゼンハワー大統領が提案したもので、その紆余曲折を経てNATOとワルシャワ条約機構間の相互信頼と安全を構築する手段として導入するため話し合いが続けられたのだが条約が成立した1992年にはソ連とワルシャワ条約機構は崩壊して存在しておらず、結局、ソ連の大半を引き継いだロシア(ベラルーシを含む)との間で条約が結ばれた。

しかし条約に署名した国々の批准手続きに時間がかかり正式の発効したのは2002年1月2日だ。

この条約は条約加盟した国同士が互いの領空を解放し、非武装の航空機によって自由に偵察を行う権利を保障しているのが特徴で互いに軍事力の透明性を高めることで不信感を取り除く=戦争リスクを軽減させることを目的にしている。

しかし自由に偵察を行う権利といっても無条件ではない。

事前に偵察飛行を行う国に通告を行い、偵察飛行実施日時や飛行コースの提示、偵察を受ける国のエスコート機随伴が必須条件だ。

出典:public domain 米空軍のオープスイカに使用する偵察機OC-135B

では、なぜ米国はオープンスカイ条約から脱退するのか?

ロシアは欧州のど真ん中にあるロシア領「カリーニングラード(飛び地)」の上空だけには飛行制限を設けておりオープンスカイ条約による偵察飛行を受け入れていない。これはNATOからすれば軍事的に重要な拠点であるカリーニングラードだけ偵察が行えず、逆にロシアは欧州(NATO加盟国のみ)や米国の上空を好き勝手に飛行できるという意味だ。

この問題は米国が依然から不公平だと指摘している部分で、米国もワシントンを含む幾つかの地域を飛行制限に指定した。しかしオープンスカイ条約を制限を設ける国は意外と多く、最近ではトルコがロシアが予定していたトルコ国内のNATO基地に対する偵察飛行を拒否しており、ロシアが抗議したがオープンスカイ条約を管理する委員会は特に声明も是正措置も行っていない。

そう言った意味ではオープンスカイ条約はすでに形骸化していると言う見方も存在する。

それでも米国を除くNATO加盟国はロシアとのオープンスカイ条約は情報の少ないロシア軍の動きや情報を収集のため必要だという姿勢を崩しておらず、ロシアもオープンスカイ条約脱退は考えていない。

米国もオバマ政権時までは文句を言っても脱退するという強行姿勢は見せていなかったのだが、トランプ政権は不公平はオープンスカイ条約を維持するための経費(オープンスカイ条約用の偵察機取得だけで200億円近く支出しており偵察飛行やエスコート機の経費は年間数十億円が必要になる)が無駄だと言い出し、ロシアがカリーニングラード上空の飛行制限を解除しないと条約からの脱退を行うと昨年あたりから言い出していた。

恐らくロシア外務省が米国のオープンスカイ条約からの脱退を発表したのは、米国から条約脱退に関する事前通告があったためだろう。

結局、米国は中距離核戦力全廃条約の廃棄に続きオープンスカイ条約からも脱退したことで、また一つ戦争抑止のための装置が失われてしまったといえるかもしれないが、このような抑止の仕組みは中国の台頭を考慮していない前時代的なものでしかないという見方も存在する。

因みに米国を除くNATO加盟国とロシアは米国抜きでオープンスカイ条約を維持する見込みだ。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman James Kennedy

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 4月 22日

    今回の決定はともかく、トランプ大統領は自身が無駄な存在ということに気付いて削減して欲しい

      • 匿名
      • 2020年 4月 22日

      今回のことに絡めずにトランプ云々ってここで言う事じゃないだろ
      チラシの裏にでも書いとこ、な?

    • 匿名
    • 2020年 4月 22日

    同じ土俵に立つな。とかいうのは簡単だけど
    正直者がバカを見る、不利益を被るのは
    そいつがマヌケゆえってのが世界標準だよね。

    • 匿名
    • 2020年 4月 22日

    本当に不利益なら脱退すればよろしい。
    ただそれだけのこと。

    • 匿名
    • 2020年 4月 23日

    「我が代表堂々退場す」がトラウマなのか、それを脱退批判側が錦の御旗にするのか。
    日本だと加盟組織からの脱退は悪、交渉事の席を日本側から立つのも悪。
    足抜けは批判の対象、至難のワザって印象はある。捕鯨委員会とか大変だった。

    • 匿名
    • 2020年 4月 23日

    偵察衛星もあるんだし要らんやろ? って話かな? 

    • 匿名
    • 2020年 4月 24日

    オープンスイカ

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