インド太平洋関連

海外輸出は絶望的?海外メディアが報じた韓国型戦闘機「KFX」の実力と問題点

韓国の第4.5世代戦闘機「KFX」の実物大モックアップが15日に開幕した「ソウルADEX 2019」で公開され、海外メディアも大きく報じている。

参考:South Korea’s future fighter program at risk, even as development moves along

海外メディアから見た韓国の第4.5世代戦闘機「KFX」の実力と問題点

今回、実物大モックアップが公開された韓国の第4.5世代戦闘機「KFX」は、2023年までに試作機を完成させ試験を行い、2026年から量産を開始する予定だ。

米国の「Defense News」は、韓国の第4.5世代戦闘機「KFX」の性能をロッキード・マーティン社の「F-16V(ブロック70/72相当)」相当だと評価し、特に韓国のハンファシステムが開発したフェーズド・アレイ・レーダー(AESA)について、イスラエルのエルタシステムズ社の協力を得て完成し、イタリアのレオナルド社の技術支援を受けハードウェアシステムの試験が行われ、2020年中には試作機に搭載するプロトタイプが完成すると紹介した。

このレーダーの性能については、韓国製AESAは1,000を超えるアンテナモジュールを持ち、F-16Vが搭載するノースロップ・グラマン社製の「AN/APG-83」に近い性能を持っているとし、概ね計画通りの性能を達成していると報じている。

ただし、KFXは3つの問題点を抱えているとも指摘している。

なぜ欧州製の空対空ミサイルを採用したのか?

1つ目の問題は、米国製戦闘機や米国製空対空ミサイルを運用している韓国空軍が、KFXに欧州製の空対空ミサイルを採用している点だ。

Attribution: ILA-boy / CC BY-SA 3.0 ミーティア

そもそも韓国には国産化された独自の空対空ミサイルや空対地ミサイルがないため、開発当初から米国製空対空ミサイル「AIM-120」や「AIM-9」を搭載することを希望していたが、KFXに統合(使用できるように)するための「兵器データー開示」を米国が拒否したため、韓国はAIM-120の代わりに英国製の「ミーティア」を、AIM-9の代わりにドイツ製の「IRIS-T」を搭載することになった。

この状況についてKFXを開発している韓国航空宇宙産業の広報担当者は、米国製空対空ミサイルをKFXに搭載することを諦めていないと話したと言う。

なぜKFXには近接航空支援用の空対地ミサイル搭載能力がないのか?

2つ目の問題は、KFXに空対地ミサイルの搭載・運用能力がなく遠距離からの精密対地攻撃能力が欠けている点だ。

KFXは現状で搭載できる対地攻撃兵器は、無誘導自由落下型爆弾にJDAMキットを取り付けたものかロケット弾程度で、あとは開発中の「韓国型タウルス」しかない。

出典:Public Domain オリジナルのタウルスKEPD350

韓国型タウルスとは、長距離巡航ミサイル「タウルスKEPD350」を開発した欧州のタウルスシステム社から技術移転を受け、KEPD350をKFXに搭載出来るよう小型化し国産化したもので、韓国のLIGネクスワン社が2020年後半の完成を目指し現在開発を行っているが性能の詳細については明らかになっていない。

オリジナルのKEPD350と同等程度の性能をもっていた場合、射程距離が500km前後あるのでKFXが唯一、搭載可能な空対地ミサイルということになるが、1次量産が始まる2026年に開発が間に合うか不明で、恐らくは後日に搭載になる可能性が高い。

そもそも韓国空軍は、米国製空対地ミサイル「AGM-65 マーベリック」を調達し保有しているのに、なぜKFXに搭載しないのかについては下記記事を参照して欲しい。

出典:Public Domain F/A-18Cに搭載されたAGM-65マーベリック

結局、韓国型タウルスは主に地中深くにある掩蔽施設など拠点攻撃に使用するための兵器であり、JDAMキットを取り付けた通常爆弾は移動目標への攻撃にも使用可能だが、どちらかと言うと地上の固定目標へ使用されることが多く、KFXには地上軍を近接航空支援するために必要な攻撃手段(マーベリックのような空対地ミサイル)が決定的に欠けている。

開発費の不足や機体価格が上昇するリスクを克服できるのか?

3つ目の問題は、開発資金が不足するかもしれないという点だ。

インドネシアはKFXの開発費8兆6,000億ウォン(約7,700億円)の約20%相当、1兆7,000億ウォン(約1,520億円)を負担することになっていたが、インドネシアは国内の経済状態が良くないという問題や共同開発の条件について不満があるため、開発費の支払いを停止しており、これまでに支払ったのは2,272億ウォン(約203億円)に過ぎない。

もしインドネシアが分担金支払いを再開しない場合、2021年に予定されている試作機の出荷や2026年に予定しているKFXの量産など、全体のスケジュールに支障が生じる可能性がある。

さらに韓国は120機のKFXを調達する予定だが、これには更に10兆ウォン(約9,200億円)の費用が必要で、開発費と合わせて18兆6,000億ウォン(約1兆6,670億円)を投資することになり、KFXを120機を量産した場合、1機あたりの価格は1,550億ウォン(約142億円)となると指摘している。

出典: Alvis Cyrille Jiyong Jang (Alvis Jean) / CC BY-SA 4.0 ソウルADEX 2017で展示されたKFXの模型

この価格を引き下げるためにはインドネシア購入分(48機)が重要になり、韓国分と合わせて168機を量産した場合、1機あたりの価格は1,110億ウォン(約102億円)となるが、インドネシアはKFXの購入を13機に減らしたいと言い出しているため、初期量産機の価格は約130億円程度になると見込まれる。

当初、韓国はKFXの機体価格が7,000万ドル(約76億円)を超えることはないと公言していたが、恐らくこの価格には開発費の回収のための上乗せ部分が含まれていない純粋な機体製造にかかる費用だ。

開発費の回収は量産数が増えれば増えるほど、1機あたりに上乗せされる回収額は少なくなり機体価格が安くなるが、インドネシアがKFXの調達数を減らす方向で動いている以上、価格上昇は避けられない。

海外メディアは、第4.5世代機の価格として1億2,000万ドルという価格は高すぎて、第5世代機のF-35Aが将来、7600万ドル(約82億円)まで価格が低下することを考えると、KFXの海外輸出は難しいだろうという悲観的な報道まである。

仮に韓国がKFXの開発費回収を諦め、純粋な機体製造にかかる費用のみで海外輸出に乗り出したとしても、導入関連費用を合わせれば1機あたり8,000万ドルを下回ることはなく、対地攻撃能力が欠如したKFXを8,000万ドルも出して購入する国が現れるのか非常に怪しい。

このように韓国のKFXは、開発が順調に進んでいるように見えるが、解決しなければならない問題も多く価格上昇というリスクまで抱えており、果たして韓国の思惑通り事が運ぶのかは、まだまだ油断できない状況にあると言える。

 

※アイキャッチ画像の:KAIが公開したYouTube動画のスクリーンショット

 

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 10月 16日

    海外輸出するったって家電やスマホならともかくわざわざ韓国製の安くもない兵器を欲しがる国があるとは思えない。
    おまけに対地能力が大したものじゃないならなおさらだ。
    そもそも対地能力がこれなのに韓国軍は量産したKFXを何に使うんだ。

    1
    • 匿名
    • 2019年 10月 16日

    K2戦車の開発のグダグダを知らないの、歴史を知らない民族に未来は無いぞ。

    KF-Xはあれよりも100倍は技術的難度が高いぞ。
    T-50のようにLMが100%バックアップしなければ完成は無いだろう。

    1
      • 匿名
      • 2019年 10月 17日

      自動小銃すらまともに作れない国がステルス戦闘機とか。
      いいかげん身の程を知った方がいいんでない?

      2
    • 匿名
    • 2019年 10月 16日

    このクラス(性能)を買うのって・・・どこだろう?
    青組ならF-16一択だった(金持ち国はF-15/F-35)今後はF-35一択?、赤組ならロシア/性能は落ちるが安いのなら中国、ゲリラの掃討ならプロペラ機のエンブラエル EMB-314(A-29/AT-29:ブラジル空軍)あたりが・・・
     K-2戦車もそうだけど、売り先としての想定は赤/青はっきりしないとか、国の宗教がイスラムってからみでアメリカ製兵器が買えない、EU(特にドイツ)の民族紛争地への輸出規制で引っかかってる国なのかな? 初期にはトルコも噛んでた。
     それとも、完成が目的ではなく、開発フェーズでの袖の下が目的?
    ピースブリッジでのF-16のノックダン製造が終わった時点でサムスン航空産業を解体してた方が良かったのでは?
     KAIは現代宇宙航空、サムスン航空産業、大宇重工業を国策で合体させた会社

    1
    • 匿名
    • 2019年 10月 16日

    昔は(主に左派メデイア界隈で)賞賛の対象になっていたりもした「パリパリ・取り敢えずやってみよう」も、こうなると単に計画性がない、杜撰さが悪目立ちするだけですね。上手く行ってる時はスピード感があって格好良く見えるのかもだけど。
    これが韓国の誇らしい文化みたいなので、韓国的にはこれで良いのでしょうな。
    何をするにも自己弁護と正当化で反省がない文化というのは、成長性というものを全く感じられませんが。

    • 匿名
    • 2019年 10月 16日

    対地能力がアレなら、F-5の代替はFA-50で良かっただろうに
    あちらの方が安いし、マーヴェリックも使えるし、対地に使えるハードポイントの数も同じだろ?

    1
    • 匿名
    • 2019年 10月 16日

    残念ながら輸出は諦めて、自国開発の経験を積む機会にするしかないかと。まぁ、純粋に自国と言えるかは知らないが。

    • 匿名
    • 2019年 10月 16日

    しゃーないよ。
    あちらさんは、全般的に上手く行くことしか考えてないから。
    基本、足元を見てない

    • しゅしゅ
    • 2019年 10月 16日

    4.5世代機としては無難な設計ではあると思う。

    F414エンジンを2発?とそれによる搭載量及び航続距離、4.5世代機としてのステルスを意識した形状

    兵装の問題や、それF-16VやF-15Xで良くねとかあると思いますが

    1
    •  
    • 2019年 10月 17日

    画像の風にミサイルをバンバン吊り下げるのが前提なら、
    ステルス性とか全く必要無くないか・・・?

    • 匿名
    • 2019年 10月 17日

    絵にかいた餅を誇らしげに自慢されてもねぇ・・・
    もはや失笑!

    1
    • 匿名
    • 2019年 10月 17日

    戦闘機を自主開発して輸出産業に育てるのが目的なんだろう
    そのための実験と言えると思う
    兵器を自由に輸出できる韓国ならではの発想

    • oominoomi
    • 2019年 10月 17日

    KFXは当初の目論みとは裏腹に、輸出は失敗に終わりそうな雰囲気ですね。
    しかし韓国は確実に経験を積んだ訳で、この経験を次に生かしてくるでしょう。
    これは三菱のスペースジェットでも言えることですが、仮に商業的には失敗しても、「貴重な経験を買った」ということです。
    日本の方もF-2の二の舞にならないよう、防衛省は早く決断をして欲しいものです。

      • 匿名
      • 2019年 10月 18日

      他人から技術を恵んで貰えることが前提のようだと、失敗を糧にするのは難しそう

    • 匿名
    • 2019年 10月 17日

    欧州から許可が出ていないミサイル問題は論外だし、アップグレードでステルス機化は不可能だし、ミサイル決まらなければ内蔵ウエポンベイが決まらず、機体設計出来ないのにエンジンだって実は決まって無いナイナイづくしでどうしてモックアップ作ったのか謎。
    まあようするに願望だけの模型でしかない。
    それすらF16相当であればF16買ったほうが問題無くて使い易いので、無駄金使いで開発難航で韓国内で批判の応酬といういつものアレになり、結局導入時期が5年から10年ずれ込みドイツから購入した機体の外見だけ少し変えて国産機アピールという未来が見えるようだ。

    • 匿名
    • 2020年 3月 04日

    先日、実物大モックアップが公開されたが、
    想像の中で妄想するならともかく
    現実的には、実現は不可能だろう。

    • 匿名
    • 2021年 3月 01日

    ミーティアは日本製でもあるんだけど反日ヘイト国的には、その辺問題ないんかね?

    独自技術の開発って全くないんだな、全部海外で作ってもらったもので、戦闘機本体は半島でってなってるが、それもステルス機能なし。
    なんか日本と比べて40~50年ぐらい開発スケージュールが遅れてる。

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