軍事的雑学

軍事的雑学|日本が導入する「イージス・アショア」って何だ?

米国が地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の日本への売却を承認しました。

では、「イージス・アショア」って何なの?と言う方のために説明していこうと思います。極力、専門用語なし、簡単で、手短に説明しますね。

From wikimedia Commons/File:Mda_aegis.jpg 20:00, 30 January 2019(UTC) License=Public domain

そもそも弾道ミサイルって何よ?

現在、航空自衛隊に配備されている、地対空ミサイル「MIM-104 パトリオット」は、戦闘機を含む航空機や、ミサイルを迎撃するための防空ミサイルですが、「イージス・アショア」は、弾道ミサイルを専門に迎撃するためのシステムの総称です。

では、戦闘機やミサイルと違って、弾道ミサイルは何が違うのかというと、飛んでくるコースに大きな違いがあります。

戦闘機やミサイル、巡航ミサイルなどは、平たく言えば水平に飛んできます。しかも飛んでくる速さも、ジェットエンジンの燃焼による推進か、固体燃料の燃焼による推進か、とにかく自力で何かの推進装置を働かせて飛ぶので、速いといえば速い。

しかし弾道ミサイルの場合、ほぼ垂直に打ち上げて、宇宙空間から攻撃目標に落下してきます。宇宙船が地球に帰還する際、大気圏に再突入するのと同じで、とてつもない速さで落下してきます。

一般的に戦闘機の速さが音速の2倍程度、ミサイルの速さは音速の2倍から5倍程度、巡航ミサイルなら音速以下、亜音速の場合もあります。これが弾道ミサイルになると、宇宙空間から落下するスピードは、着弾寸前で音速の10倍以上になることもあるほど、超高速で落下してきます。

このようにミサイルと言っても、一般的な空対地ミサイルなどと違い、弾道ミサイルは、全く別モノという訳です。

弾道ミサイル迎撃は超難しい

弾道ミサイル自体は、第二次大戦中のドイツで開発されたV2ミサイルが元祖。そこから発展して行って、現在のような弾道ミサイルは1950年代に登場します。しかし弾道ミサイルを迎撃することは技術的に非常に難しく、半ばあきらめて、放置されていました。

それが1980年代、米国のレーガン大統領が、戦略防衛構想を発表。いわゆるスターウォーズ計画と呼ばれるやつです。衛星軌道上に弾道ミサイルを迎撃するための衛星を配置して、落下加速に入る前に迎撃してしまおうと言う計画です。ですが当然失敗します(笑)

From wikimedia Commons/File:Space_Laser_Satellite_Defense_System_Concept.jpg 20:00, 30 January 2019(UTC) License=Public domain

失敗原因は、技術的な問題と莫大なコストでした。あと当時は冷戦時代だったので、米国とソ連は「相互確証破壊(一方が核兵器を使えば、もう一方が核兵器で報復し、互いが破壊され尽くすことをお互いが確認し合う、つまり核兵器を使えば互いに生き残れないと言う意味)」の基に、核の均衡を保っていたので、スターウォーズ計画による弾道ミサイル迎撃は、「相互確証破壊」を脅かす=核の均衡が崩れることを意味していました。

スターウォーズ計画は失敗するのですが、ここで開発された様々な技術が、後の「弾道ミサイル防衛システム」開発に生きてきます。

真打ち登場、弾道ミサイル防衛システム

湾岸戦争において、イラクがスカッドミサイル(これも弾道ミサイル)を使用し、地対空ミサイルの「MIM-104 パトリオット」で対応しますが、結果が芳しくありません。冷戦時代とは違い、弾道ミサイルが世界に拡散し、今後の戦争で使用された場合に備えて、本気で弾道ミサイルの迎撃を考える必要に迫られた米国が開発に着手したのが、現在の「弾道ミサイル防衛システム」です。

弾道ミサイルを迎撃するためには、早ければ早いほど難易度が下がります。

弾道ミサイルを打ち上げ段階で迎撃するのが上昇段階(ブースト・フェイズ)、落下前の宇宙空間を飛翔している時に迎撃するのが中間段階(ミッドコース・フェイズ)、落下をはじめてから迎撃するのが終末段階(ターミナル・フェイズ)です。

説明が長くなるので上昇段階(ブースト・フェイズ)は省略。

落下をはじめてから迎撃する終末段階(ターミナル・フェイズ)には、上層迎撃と下層迎撃があり、上層迎撃は、韓国で話題になった「THAADミサイル・システム」、下層迎撃は、日本が導入済みの「パトリオットPAC-3システム」です。

今回導入する「イージス・アショア」は、落下前の宇宙空間を飛翔している時に迎撃する中間段階(ミッドコース・フェイズ)を担当します。

From wikimedia Commons/File:USS_Lake_Erie_%28CG-70%29_SM-3_start.jpg 20:00, 30 January 2019(UTC) License=Public domain

これはイージス艦が持つ「AN/SPY-1レーダー(超性能がいいレーダー)」を活用して、弾道ミサイルを迎撃するために開発された専用のミサイル「SM-3」を使用し、弾道ミサイルを迎撃する「イージス弾道ミサイル防衛システム」を陸上に持ってきたものが「イージス・アショア」です。

イージス艦に搭載された「AN/SPY-1レーダー」と、「SM-3」を発射するための「Mk.41 垂直発射システム」だけを移植したもの。当然イージス艦とは違い、移動できない陸上固定型ですが、今回導入する「イージス・アショア」は2基で2200億程度、イージス艦1隻1500億前後なので割安。

しかも艦船に搭載すると、定期的な修繕のためのドック入りなどで使用できない期間が出来てしまいますが、陸上型ならそういう心配がないので、稼働率は上がります。米軍のように世界中に展開しない日本の場合、陸上型の方が適しているのかも知れません。

以上が、「イージス・アショア」の簡単な説明でした。

近いうちに、もう少し詳しく解説した記事でも書いてみようと思います。

 

 

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 2月 26日

    MDシステムはAESAレーダーが実用化されたことで初めて可能になったシステム、それまでの三次元レーダーは上下、左右、距離の3つのレーダーを使って目標を探知する仕組みだったがパラボラを振っている間に目標が移動するからリアルタイムで位置検出が出来なかった。
    AESAレーダーで弾道ミサイルの軌道を精密に測定しその軌道上にキネティック弾頭を持ってくことでミサイルを破壊する仕組み、だからイージス艦は撃墜までSM3の制御に専念することになり自艦の防御が出来ないのであきづき型がイージス艦を守る必要がある。
    今はいくつかの国がAESAレーダーを使っているが、本当に使いこなしているのは日米だけ。

    • 匿名
    • 2019年 5月 11日

    イージス・アショアはヨーロッパの弾道ミサイル防衛からスタートしてます。
    機材そのものは取り外し可能なので時間をかければ移動できるのですが、弾道ミサイルのように発射台付き移動式トレーラーみたいなものではないので、BMDイージス艦の補完がメインでしょう。

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