軍事的雑学

軍事的雑学|敵役を演じるアグレッサーは民間委託が主流?米企業が「ミラージュF1」63機導入!

米国の民間軍事会社が、フランスが開発したミラージュF1戦闘機を63機購入し、大規模な改修を行ったという報道が出ています。

参考:ATAC receives final refurbished Mirage fighters

民間軍事会社がミラージュF1戦闘機を63機も導入

ミラージュF1戦闘機を購入したのは、Airborne Tactical Advantage Company(ATAC)という米国の民間軍事会社。

主に米軍の戦術訓練への、敵機の役として戦闘機を派遣している。有名な派遣先で言えば、米海軍の戦闘機パイロット養成プログラム「トップガン」や、2年に1回開催される環太平洋合同演習「リムパック」等などがある。

Attribution: Katsuhiko Tokunaga, File:AIRPOWER16 – Air to Air SK35C Draken (color).jpg / CC BY-SA 4.0 サーブ35“ドラケン”

そんなATACが保有する戦闘機(登録上は民間機扱い)には、珍しい物が多い。

  • ホーカー・ハンターF.58
  • F-21 クフィル
  • L-39 アルバトロス
  • ミラージュF1

過去には、A-4“スカイホーク”や、サーブ35“ドラケン”なども保有していた。

補足:同種の航空サービスを提供する最大の民間軍事会社“Draken International”は、109機もの軍用航空機を保有している。この会社は、旧ソ連製のMiG-21を27機、南アフリカが開発したチーターを12機、ATACが今回導入したミラージュF1も22機保有している。

 

ホーカー・ハンターF.58:11機保有

ホーカー・ハンターは、英国のホーカー社で開発された後退翼を持つ亜音速ジェット戦闘機で、初飛行は1951年。約2000機程度量産され、最も輸出に成功した英国の軍用機と言える。

正式な導入国からは既に全機退役済み(最後の運用国はレバノン空軍、2014年に退役)

出典:pixabay ホーカー・ハンター(個人所有機)

しかし機体の頑丈さから、民間に払い下げられた機体が現在でも飛行している。

ATACが購入したホーカー・ハンターは、スイス空軍(スイス仕様のコード“F.58”がついている)で使用されていたもの。

在日米軍の戦術訓練支援のため、日本の厚木飛行場に何度か飛来している。

 

F-21 クフィル:6機保有

クフィルは、イスラエルが開発した超音速ジェット戦闘機で、初飛行は1973年。約220機程度量産され、少量だが輸出も行われた。

開発国のイスラエルから、全機が退役済み。

この戦闘機はフランスのミラージュIIIがベースになっていて、簡単に言えばミラージュIIIの機体に、F-4“ファントム”戦闘機に搭載されているGE社製の「J79」を搭載し、カナード翼を追加したものがクフィルだ。

出典:wikimedia commons public domain

ATACが購入したクフィルは、米海軍が使用していたF-21A“ライオン”(クフィルC1:カナード翼非搭載タイプ、F-21Aは改造しカナード翼を搭載)と同タイプのもので、MIG-23の飛行特性をよく再現できる機種だと評価が高い。

 

L-39 アルバトロス:2機

アルバトロスは、旧チェコスロバキアが開発した亜音速ジェット訓練機で、初飛行は1968年。

約2800機程度量産され、多くの国(旧ソ連諸国)に輸出された。

現在でも開発が継続中で、最新のL-39NGは、新設計の主翼に変更し、搭載エンジンはFJ44(米英企業が共同開発した超軽量ジェット機向けの小型のターボファンエンジン)、フルグラスコックピット化、夜間飛行への対応、シミュレーター訓練システム、ゼロ・ゼロ射出座席など大きな改良を加えた結果、期待寿命は15,000飛行時間に達する。

Attribution: Voytek S, File:Aero L-39, AirShow Radom 2005.jpg / CC BY-SA 2.5 スロバキア空軍のL-39 アルバトロス

ATACが購入したアルバトロスが、どのタイプなのかは不明。

 

ミラージュF1:68機

ミラージュF1は、フランスのダッソー社で開発されたものとしては珍しい、水平尾翼付きの後退翼を持つ超音速ジェット戦闘機で、初飛行は1966年。

約860機程度量産され、11ヶ国に輸出された。

ダッソー社といえば、無尾翼デルタ翼だが、後にも先にもミラージュシリーズで水平尾翼がついているのは、ミラージュF1のみ。

これは当時、可変翼やVTOLなど新型機の開発をしていたが、技術的にも、価格的にもモノにならなかったという問題と、無尾翼機のため、STOL性能が劣っていた前作のミラージュIIIが、フランス海軍の艦載機として使用できないという問題を解決するため、無難な水平尾翼付きの後退翼機として開発された為だ。

出典:wikimedia commons public domain フランス空軍のミラージュF1CT

その結果、ミラージュIIIに比べ大幅なSTOL性能の改善に成功するが、その頃には、米国の「F-8E“クルセイダー”」を艦上戦闘機として、艦上攻撃機にはダッソー社製「エタンダールIV」を採用していため、ミラージュF1はフランス海軍に採用されなかった。

当時、NATO諸国のF-104戦闘機更新時期だったので、米国のF-16と激しい輸出競争を演じるも惨敗。

敗因は、胴体と翼を一体で成型するブレンデッドウィングボディ、機体の操縦をコンピュータで補正・制御するフライ・バイ・ワイヤなど斬新な技術を採用したF-16に対し、ミラージュF1の設計思想が古すぎた(良く言えば保守的)ためだ。

出典:pixabay F-16“ファイティング・ファルコン”

NATO諸国への輸出には失敗するも、価格の安さを武器に、中東やアフリカ諸国への売り込みには成功する。

ATACが購入したミラージュF1は、恐らく、2014年にフランス空軍から退役したミラージュF1.CT(F1.C型を対地攻撃用に改修したタイプ)だと思われる。購入した63機のミラージュF1を1年かけて、レーダーなど電子装置を最新のものに更新。

民間軍事会社が中古戦闘機とはいえ、同型機を63機も購入したのは例がないらしい。おそらくこれは、米軍からの要請があったのではないか?

アグレッサー部隊を個々に運用しているが、米空軍と海軍(海兵隊を含む)が、これを任せられる民間企業を育成し、コスト削減を行おうとしている可能性が高い。

今後、この様な民間軍事会社が、世界各国の空軍へ戦術訓練の機会を提供するようになり、近い将来、航空自衛隊のF-35Aと、ミラージュF1が模擬戦を繰り広げているかもしれない。

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 4月 05日

    空自のアグレッサーやるならMigかスホーイ用意して欲しいトコかな?
    ミラージュとかどうひっくり返っても相手する未来が見えない…

    • 匿名
    • 2019年 4月 08日

    ドラケンの開設を期待してスクロールしたのにナシなんて
    それにしても今見てもドラケンは美しい
    スェーデンのラウンデルの美しさでさらに魅力倍増である

    • 匿名
    • 2019年 4月 08日

    もう模擬戦にアグレッサーは必要ないでしょ
    データーを入れてシミュレートすればそれで終わり
    単にアトラクションをやって国民を喜ばせるくらいしか使い道はないよ

    • ハヤタ
    • 2019年 5月 08日

    シュミレータではできない
    リアルな空戦用に人は避けないというわけでしょ

    あるいは、飛行要員の退役後の勤務先確保込み

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