米国関連

完全復帰! 米海軍、空母「ジェラルド・R・フォード」海上試験を無事クリア

空母「ジェラルド・R・フォード」は、動力部のメンテナンス完了を確認するための「シェイクダウン・クルーズ(海上試験)」を無事終了し、ノーフォーク海軍基地へ帰投した。

参考:USS Gerald R. Ford Completes Post-Shakedown Availability

崖っぷちに立たされている空母「ジェラルド・R・フォード」の現状

米海軍の空母「ジェラルド・R・フォード」は、就役後まもなく動力部に問題が発生、この問題を解決するためニューポートニューズ造船所のドックに戻り、約15ヶ月間に及ぶメンテナンスを受けていた。

10月25日、空母「ジェラルド・R・フォード」は動力部のメンテナンス完了を確認するため、ニューポートニューズ造船所を離れ「シェイクダウン・クルーズ(海上試験)」を実施し、米海軍は動力部に問題がないことを確認した。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Connor Loessin/Released

今回、シェイクダウン・クルーズ中に行われた空母「ジェラルド・R・フォード」の高速旋回(回頭)の様子を収めた動画を公開している。

空母「ジェラルド・R・フォード」は無事、シェイクダウン・クルーズを完了したので今後、15ヶ月前に中断された艦載機との適合試験や、新しく開発された航空支援装備(電磁式航空機発射システムや新型着艦制動装置など)の検証作業が再開されることになる。

10月29日に、ジェラルド・R・フォード級空母2番艦「ジョン・F・ケネディ」が進水を迎え、12月7日に予定されている「洗礼式(船首にシャンパンボトルを叩きつけて割る儀式)」を受けた後、乾ドックから出渠し、ニューポート・ニューズ造船所の桟橋に係留され艤装工事が行われる予定なので、空母「ジェラルド・R・フォード」は新しく開発された航空支援装備の性能を実証し、1日も早く初期作戦能力を獲得しなければならない。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Adam Ferrero/Released 空母「ジョン・F・ケネディ」が横たわる乾ドックに海水が流れ込み始めた様子

もし、新型の航空支援装備に問題が発生し初期作戦能力の獲得が遅れれば、2024年に予定されている空母「ジョン・F・ケネディ」の海軍への引渡しが宙に浮く可能性があるためだ。

6月3日に米国下院議会、武装サービス委員会所属の小委員会は、就役から2年が経過しても、最新鋭のステルス戦闘機F-35Cを搭載し、運用することが出来ないジェラルド・R・フォード級空母を問題視し、問題が解決されるまで、建造中のフォード級空母2番艦「ジョン・F・ケネディ」の海軍引き渡しを「違法」にするべきだという規定を、年次国防政策法案の草案に含めた。

ジェラルド・R・フォードには「約130億ドル(約1.4兆円)」、ジョン・F・ケネディには「約110億ドル(約1.2兆円)」もの建造コストが掛かっているにも関わらず、就役どころか船体の不具合や新型の航空支援装備の成熟に時間が掛かり、どんどん建造コストは膨らんでいくばかりで、米議会も流石に「いい加減にしろ」と海軍に言いたいのだろう。

その米海軍も現在、深刻な空母不足に落ちいている。

名目上、米海軍は11隻(1隻増やし12隻体制にする予定)の空母を保有していることになっているが、実際に稼働している空母は3隻だけだ。

出典:public domain ニミッツ級空母8番艦「ハリー・S・トルーマン」

本来なら、あと2隻は戦列に加わっているはずだったのだが、空母「ハリー・S・トルーマン」はの深刻な電力トラブルのため脱落し、空母「ジェラルド・R・フォード」は上記の問題で、いつになれば本当の意味で就役するのか誰にも分かっていない。

他の空母は、定期メンテナンスや大規模なオーバーホール中か、メンテナンスを受けるドックの空き待ちをしている。

シェイクダウン・クルーズを終えた空母「ジェラルド・R・フォード」は、もうこれ以上、失態を犯すことが出来ない「追い込まれた状況=崖っぷち」に立たされていると言えるだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Connor Loessin/Released

2021年12月の初飛行は無理? ステルス爆撃機「B-21 レイダー」開発に遅れが発生か前のページ

韓国と共同開発中の「KFX」から撤退? インドネシア空軍がF-16Vを32機購入すると表明次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    ロッキードマーティン、F-35スペアパーツ問題を認め補償支払いで合意

    ロッキード・マーティンはF-35のスペアパーツ電子ログ問題についてミス…

  2. 米国関連

    どんどん増えていくHIMARS、まもなくウクライナへの追加提供を米国が発表

    国防総省のジョン・カービー報道官は「ロシア軍の前進を食い止めるのに効果…

  3. 米国関連

    米海軍が戦力分散化の概念「ゴースト・フリート」を実演、無人艦から艦対空ミサイルSM-6を試射

    国防総省はミサイルランチャーを搭載した無人艦「USVレンジャー」の様子…

  4. 米国関連

    米当局者、ロシアに妥協すれば自由を守るためのコストは更に増加する

    米当局者は「戦いが長引くと国民がウクライナ支援にうんざりするかもしれな…

  5. 米国関連

    四面楚歌のボーイング、米海軍がF/A-18E/F BlockⅡ調達プログラム終了を発表

    米海軍は24日、ボーイングに発注した最後のF/A-18E/F Bloc…

  6. 米国関連

    米空軍長官、A-10退役が進まないのは選挙区の雇用を心配する議員が原因

    レーガン国防フォーラムが主催したカンファレンスに出席したケンドール米空…

コメント

    • 匿名
    • 2019年 11月 02日

    宇宙戦艦ヤマトやバトルシップで見せた「戦艦ドリフト」ですが実在の空母でもアンカー使わずに空母ドリフトできるんですね。
    艦載機が飛行甲板に出てたら何機か水没しそうですが

      • 匿名
      • 2019年 11月 03日

      艦載機乗せた状態でもやるよ?
      ニミッツ級だけど甲板にF-18乗っけた状態でやってる動画ツベに上がってるから見てみるといい
      ワイヤーで固定するから落ちないというか落とさないようにテストするわけだけど…

      • コメントありがとうございます。
        1機だけ飛行甲板に固定して試験している動画は見つかりました。
        オーバーホール毎に30ノット以上でドリフト試験をやってるのは相当な改修箇所があり各所試験を行う必要があるためなんですね。

    • 匿名
    • 2019年 11月 03日

    この巨体でこの機動性…敵に回したくないと、自分のような一般人に思わせるには十分な迫力でした。

    • 匿名
    • 2020年 1月 06日

    名前の由来であるジェラルド・R・フォード大統領って、第二次世界大戦時は軽空母乗りだったわけですが、
    ・ニクソン大統領政権下で辞任したスピロ・アグニューの後継で副大統領に就任
    ・ニクソンの辞任で副大統領から昇格
    ・次期大統領選挙で敗戦して退任(=大統領選挙で一度も選出されていない大統領)
    とトランプ大統領以上の異例の経歴なんですね。
    これはカタパルトも着艦装置もエレベータも名前に呪われてても仕方がないのに、検証設備作らないとか呪われるべくして呪われた感じがします。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  2. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  3. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  4. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  5. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
PAGE TOP