軍事的雑学

スウェーデンは(仮)合流? 英国第6世代機「テンペスト」、スピットファイアなりうるか

英国のフェアフォード空軍基地で開催されれいる世界最大級の軍用機エアショー「ロイヤル・インターナショナル・エアタトゥー」で、英国とスウェーデンは、第6世代戦闘機開発計画「テンペスト・プロジェクト」に関連する協定への署名発表を行った。

参考:Defence minister insists multi-billion Tempest jet is ‘not a paper plane’ as Sweden hops aboard

テンペストは21世紀のスピットファイアになれるか?

7月7日のテンペスト・プロジェクトへスウェーデン合流記事で、これでテンペストの本格的な開発に弾みがつくのは間違いないと書いたが、どうも話が怪しい。

最初に結論を言うと、今回発表された内容は、スウェーデンのテンペスト・プロジェクトへの正式参加及び、テンペストの購入(グリペン後継機の単独開発放棄)を保証するものではなかった。

7月18日、世界最大級の軍用機エアショー「ロイヤル・インターナショナル・エアタトゥー」で発表したのは、「将来、両国の要求を満たすため新しい概念の開発を含む、戦闘機に関する共同研究」についての了解覚書(MOU)に英国とスウェーデンが署名を行ったという内容だ。

出典:Jason Wells / stock.adobe.com 英国空軍 タイフーン

これは、テンペスト・プロジェクトへの参加及び、テンペストの購入を約束するようなもではなく、10年間の共同研究を通じて、両国の要求を満たす次世代戦闘機の研究、タイフーンやグリペンをアップグレードするための新しい技術の開発に協力を行うというものだ。

しかも、最初の1年は「おためし期間」として設定されおり、そのまま共同研究を継続するためには、新たにスウェーデン政府による「承認」が必要になる。

恐らくだが、発表された「両国の要求を満たす次世代戦闘機の研究」という部分が、第6世代戦闘機開発計画「テンペスト・プロジェクト」を示唆しているのだろうとは思うが、了解覚書に関する、英国防省のプリスリリースの中に「テンペスト・プロジェクト」という言葉は使われていない。

英国メディアは、「おためし期間」後に「テンペスト・プロジェクト」へのスウェーデン正式加盟、テンペスト購入の可能性を指摘しているが、現時点で、英国とスウェーデンが「テンペスト」を共同開発すると言い切ってしまうのには違和感を感じる。

今回の了解覚書が「テンペスト・プロジェクト」を意識したものなのは、誰が見ても明らかだが、「おためし期間」が設けられている以上、「テンペスト・プロジェクト」研究開発に「仮合流」したというのが正しい認識なのかもしれない。

では何故、今回の了解覚書が、このような、奥歯に物の挟まったような表現になったのか?

これは「テンペスト・プロジェクト」を主導する英国の「苦しい事情」による産物かもしれない。

最近、欧州で開発される、もう一つの第6世代戦闘機開発計画「FCAS」にスペインが正式合流を果たしたため、マーケティング的に、どんな形でも良いので「テンペスト・プロジェクト」にも、参加の可能性がある国との「何らかの進展」が必要になった結果、スウェーデンと了解覚書署名というイベントが発生したのかもしれない。

実際、テンペストは、FCASに1年先行する形で発表されたにも関わらず、参加国の確保についてはFCASに遅れとっているため、今回の了解覚書で、スウェーデン参加をに匂わせ、参加を検討していると言われる国が、どの様に動くのか見極めるつもりなのだろう。

恐らくスウェーデンは、水面下で英国と「テンペスト・プロジェクト」について交渉はしていたが、まだ正式に決断できるほど議論が煮詰まっていないにも関わらず、上記のような事情から英国に、今回の了解覚書への署名を頼まれたので、協力する代わりに保険として、表現が曖昧な形で「おためし期間」の設定を要求したと考えれば、この奥歯に物の挟まったような了解覚書にも納得がいく。

出典:Jason Wells / stock.adobe.com スウェーデンのグリペン

スウェーデンにしてみれば、1年の「おためし期間」中に、新たな参加国が現れプログラム自体の規模が大きくなれば、ビジネスチャンスと捉え正式に「テンペスト・プロジェクト」に参加しても良いし、目立った動きがなければ共同研究を打ち切るか、グリペンのアップグレードの関する共同研究に協力範囲を絞れば良いだけで、特にリスク無く英国に「貸し」まで作れるのだ。

このように仮定するならば、プログラムを主導する英国とって「テンペスト・プロジェクト」を現実的に「成立」させるためには、スウェーデン参加をに匂わせ、この1年で新たな参加国を確保することができるのかが勝負の分かれ目になるだろう。

あくまで、この話は管理人による仮説なため、間違っている可能性があることを留意してほしい。

既に幾つかの英国メディアでは、英国とスウェーデンが「共同開発」するテンペストは、第2次大戦の伝説的な戦闘機「スピットファイア」にような象徴的な第6世代戦闘機になり、ゲームチェンジャーとなるだろうと書き立てている。

スピットファイアはドイツの攻撃から「英国の未来」を守ることに成功したが、果たしてテンペストは、「英軍需産業の未来」を守ることが出来るだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:Gary Blakeley / stock.adobe.com Supermarine Spitfire

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 7月 22日

    この件の裏が何にせよイギリスはテンペストプロジェクトを進める気があるのは確かということですね。

    • 匿名
    • 2019年 7月 22日

    共同開発ではなく、日本がXF9-1エンジン(あるいはXF5エンジンのパワーアップ型)とAESAレーダーユニットをサーブに提供して、サーブの後継機戦闘開発を援助したらいいんじゃないかな。
    日本は殆ど懐が痛まないし安価にF-3の下の戦闘機を入手できる。
    エンジンとレーダーを抜けば20~30億で手に入るだろう。
    F-2やF-15の延命に金をつぎ込むよりはるかに効果的。

      • 匿名
      • 2019年 7月 23日

      小型ジェット旅客機一つ満足に作れない日本は航空宇宙産業後進国だよ
      アナタはどれだけ上から目線で思い上がった事言ってるか、自覚持ってる?

        • oominoomi
        • 2019年 7月 23日

        民間機は軍用機より簡単、とかいう勘違いは恥ずかしいですよ。
        それにスペースジェットの事を言ってるんなら、もう初飛行はとっくに終えてFAAの型式証明を得るため審査を受けているところで、これをパスすれば晴れて世界の空を飛べるようになります。
        因みにお隣の「航空宇宙産業先進国」が米国の支援を得て開発したARJは、CAACの型式証明しか取得していないので、ほぼ中国々内専用機です。

        • 匿名
        • 2019年 8月 16日

        近代的なジェット戦闘機を作るには、AB15トン以上のエンジン、れドームを含めて機体と一体化したAESAレーダー、ベクタードスラストの双発エンジン制御とフライバイライトの統合、低RCSステルスデザインとそれを補完する電波吸収塗料。
        こういった技術を日本はすでに手に入れている、ロシアはおろかアメリカでさえ持っていないものもある。
        国産のP-1とC-2は主要パーツの共用化を図り、合計開発費は7000億程度だがEUで共同開発したA400Mは数兆の金をかけてC-2の一段下の性能の輸送機しか作れなかったし、P-1は旅客機を改造したP-8よりはるかに軍用機然としている。
        両機とも今は自衛隊専用で数が出ないのに新型機としては国際的な基準より大幅に安い。
        同じようなことが出来る国はどこにもない、F-3も重要な部分は開発が完了間近だからゴーサインが出れば炎上することもなく完成するだろう。
        どこかの国のように設計からエンジン・AESAレーダーまで他国に頼って二線級の機体を作る国とはレベルが3枚ほど違う。

          • 2019年 10月 04日

          日本はF-15の初期型もF-35で代替すると決めた以上、F-3の登場はF-15J改やF-2の退役と入れ替わりになるだろう。
          ならばそれは2040年前後になり、2080年ぐらいまで日本を支えなければならない。
          確かに日本は各種要素の技術を備えてはいるが、それを超音速戦闘機としてまとめあげる経験では圧倒的に米露や欧州より負けてる。

          エンジンについては、現在はGEが強くてP&WとRRが続く3強体制になっている。
          日本の新型エンジンは、性能が向上してきているので評価できるけど、AETDエンジンなどの次世代エンジン開発で世界をリードするGEには届かないだろう。

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