軍事的雑学

軍事的雑学|「F-35」と旧式化した空対空兵器「AIM-120」で、中国のステルス機に対抗可能か?

米国のナショナル・インタレストが、中国が開発した、ステルス戦闘機「J-20」の脅威について興味深い記事を書いていた。

参考:The Real Reason China’s J-20 Fighter Is a Threat

旧式化したAIM-120 AMRAAMで、中国の「PL-15」に対応できるのか?

米国を中心とする西側諸国が運用を始めた、第5世代ステルス戦闘機「F-35A ライトニングⅡ」にとって、最大の脅威が中国初の第5世代ステルス戦闘機「J-20」だ。

ステルス性能の完成度や、電子機器の先進性、ネットワーク機能などF-35は、J-20よりも優れている点が沢山あるが、逆にJ-20に劣っている部分もある。J-20がF-35よりも優れいる点は、空対空ミサイル「PL-15」を搭載し運用出来るという一点に尽きる。

出典:Public Domain F-35A

中国が開発した長射程の空対空ミサイル「PL-15」は、米国の「AIM-120 AMRAAM」と比較しても遜色ない性能、射程だけで言えば、「AIM-120 AMRAAM」を軽く抜き去り、欧州のミーティアに匹敵すると言われている。

PL-15の最大射程は300kmもあり、「AIM-120 AMRAAM」の最新バージョンのD型(射程180km)と比べても、圧倒的な射程を誇る。しかも、アクティブ・フェーズド・アレイレーダーを備え、有視界外から発射可能で、最高速度はマッハ4に達し、狙われた航空機は回避は困難だ。

2015年に「PL-15」が初めて公開されたと時、米太平洋空軍司令官だったハーバート・カーライル大将が、「非常に危険な兵器」だと懸念を表明していたほどだ。

Attribution: FFA P-16 / CC BY-SA 4.0 AIM-120 AMRAAM

この問題を更に難してくしているのは、PL-15に比べて旧式化したと言ってもいい、米国の空対空ミサイル「AIM-120D」を置き換える新型ミサイルが存在しなこと。米国は「AIM-120 AMRAAM」のラムジェット版の開発計画があったが、欧州がミーティアの採用を選択したため計画が頓挫した。

その後、米空軍、米海軍、米海兵隊が、「AIM-120 AMRAAM」と、「AGM-88 HARM」を置き換える目的で共同開発しようとした「次世代空対空ミサイル」は、2013年当時のオバマ政権に開発予算を取り消されたため、またも計画も頓挫した。

その後、2017年に「AIM-120D」を置き換える為の「長距離交戦兵器」の研究が始まったと言われているが、計画の詳細は全く不明で、計画の進展状況さえ聞こえてこない。

現在F-35が使用しているソフトウエアのバージョンは「ブロック3F」で、現在開発中の「ブロック4」が実用化されれば、恐らく「PL-15」と同性能の「ミーティア」搭載が可能になるが、米国としては、安全保障の観点から主要兵器の国産にこだわるため、米軍が「ミーティア」を採用することは無いだろう。

そうなると、現在、使用している「AIM-120」の改良型を研究していない米軍は、謎の「長距離交戦兵器」が姿を現すまで、旧式化した「AIM-120D」を使い続けることになる。

即ち、米国の「AIM-120D」と、中国の「PL-15」との空対空ミサイルの性能ギャップは、当分の間、差が縮まることはないという意味だ。

中国に強みがあるように、米国も強みがまだ残ってる。

しかし、米国には米国の考えがある。

恐らく、実戦において、カタログスペック上の“最大射程”で、空対空ミサイルを発射する機会はない=現状のシステムでは、ミサイルの最大射程をどれだけ延長しても、その長射程を活かしきれないと言う意味だ。

これは、どういう事かと言うと、現在の戦闘機のシステムは基本的に、戦闘機に搭載されたレーダーで補足した敵に対して、ミサイルを発射し攻撃を加える。戦闘機に搭載されたレーダーの性能も向上しているが、これもカタログスペック上の最大探知距離など当てにならない。

敵機が、ステルス機なのか非ステルス機なのか、ジャミング環境下か否かなど、あらゆる要素が複合的に作用しあい、最大探知距離で敵機を確実に捕捉することなど稀な話だ。

出典:Public Domain アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦

現在、米軍が進めているのが戦闘のネットワーク化(共同交戦能力)だ。自機よりも敵機に近い戦闘機、強力なレーダーを搭載している早期警戒機、海上にいるイージス艦などが捕捉した情報を「リアルタイム」で共有し、攻撃を含めた対応を行う能力のことだ。

この考え方を進化させると、単純に戦闘機、早期警戒機、イージス艦をネットワークで結ぶだけでなく、戦闘機やイージス艦が発射した兵器までもネットワークに連結し、戦闘機(もしくはイージス艦)は目標へ向けてミサイルを発射するだけで、ミサイルに直接、目標のデータを与える続けるのは、目標に近い戦闘機だったり、イージス艦だったり、早期警戒機だったりするわけだ。

カタログスペックの域を出ない戦い方の中国に対して、兵器単体の性能よりも、組織全体の総合力を高めて、兵器のスペックを最大限引き出す戦い方が米国だ。

そのためF-35とAIM-120Dには、共同交戦を可能にするための双方向データリンクや、多機能新型データリンクが搭載してある。

Attribution: emperornie / CC BY-SA 2.0 ステルス戦闘機J-20

一方の中国は、J-20を含めた中国軍全体のシステムが、「PL-15」の最大射程300kmを活かせる体制になっているか=ネットワーク化が行われているかについては、正直、そこまでのレベルには至っていない。

恐らく、中国は兵器カタログスペックの部分で、西側に追いつくことに必死だったことを考えれば、運用面についての研究は、これからの課題だろう。

中国に強みがあるように、米国も強みがまだ残ってる。

問題は、中国の追い上げ速度が尋常ではなく、米国に残された強みが有効な間に、性能的に旧式化した「AIM-120 AMRAAM」の後継ミサイルが実用化されるのか、非常に興味深い。

 

※アイキャッチ画像の出典:Attribution: Alert5 / CC BY-SA 4.0 エアショー中国2016でのJ-20

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 5月 08日

    ミサイル全般の射程において、アメリカは中国に大きく遅れを取ってる。射程がミサイルの性能の全てでは無いが、現状倍以上の射程差が出てるのはヤバい。

    • 匿名
    • 2019年 5月 09日

    PL-15は予測でも最大200kmだけど、300kmはどこの資料なのか?

    • 匿名
    • 2019年 5月 09日

    J20はステルスじゃないし機動力もF15,F16に劣るからAIM120でも問題ないようにおもう。
    AESAシーカーのミーティアを積めば一方的に勝てるだろう。

    • 匿名
    • 2019年 5月 10日

    三流ステルス機と思っていたJ-20だけど、超射程、超速度のミサイルさえ搭載できれば軍事大国アメリカの脅威にもなりかねない、ということか。
    あと20年もすればアメリカに代わり、諸外国に何の文句も言わせない超大国・超軍備国の中国が世界に君臨するようになるのかもしれない。
     中国の人口の1/10にも満たない日本は中国とどうやって付き合って行くことになるんだろう。

      • 匿名
      • 2019年 5月 25日

      アメリカがそれを黙って見てるとはおもえないけど

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