中国関連

中国はSTOVL型F-35Bが欲しくて堪らない、果たして独自開発は可能か?

中国、環球時報の英字紙「Global Times」は、中国はSTOVL型のステルス戦闘機を必要としていると報じている。

参考:PLA Navy needs own ‘STOVL stealth fighter’ jets to protect territory

米海軍が検証中を行っている強襲揚陸艦の空母化に対抗可能か?

中国は、空母や強襲揚陸艦を建造しているので、中国人民解放軍海軍(以下、中国海軍)は、短距離離陸・垂直着陸が可能なF-35Bのようなステルス戦闘機が必要で、このような戦闘機は、離島防衛において攻撃型ヘリよりも有効で、潜在的な海洋紛争に対処するのに効果的だと報じている。

中国の空母「遼寧」や、現在、試験航海中の国産空母「001A型」、カタパルトを装備した空母の建造に注目が集まりすぎて、中国の水陸両用戦力強化はメディアに取り上げられる機会が少ないが、着実にその戦力を強化している。

引用:South China Morning Post 075型強襲揚陸艦

中国海軍は現在、米国のワスプ級強襲揚陸艦(基準排水量28,000トン)と肩を並べても遜色のない大型強襲揚陸艦、「075型強襲揚陸艦(満載4万トン)」を建造中で、年内には進水し、2020年には就役すると言われている。

075型強襲揚陸艦は、全長250m、全幅30m、速力23ノット、エア・クッション型揚陸艇を3隻搭載し、1900人の上陸部隊の収容でき、30機程度の回転翼機を搭載できる。

出典:public domain サン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦

さらに、米海軍のサン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦を、そのままコピーしたような2万5000トンクラスの「071型揚陸艦」を、既に6隻就役させ、7番艦と8番艦の建造も進行中で、中国は揚陸艦戦力の拡充に合わせて、中国版の海兵隊である「中国人民解放軍海軍陸戦隊」の兵力を、現在の2万人から10万人に増やすことを計画しているという。

中国で、STOVL型ステルス戦闘機の必要性が叫ばれ始めたのは、恐らく全通飛行甲板を持つ075型強襲揚陸艦の登場が関係しているだろう。

米海軍は全通飛行甲板を持つ強襲揚陸艦に、米海兵隊のF-35Bを搭載し運用中で、さらに「Lightning Carrier」という新しい概念をテストしており、強襲揚陸艦にF-35Bを10機以上搭載し、空母として使用できるかを検証中だ。

もし、米海軍の強襲揚陸艦(就役中計9隻)が全て「Lightning Carrier」化すれば、F-35Bを10機以上(最大20機前後)搭載した強襲揚陸艦が、能力的に小型空母化してしまう。

米国の空母戦力に正面から対抗するため、空母建造を進めている中国にとって、強襲揚陸艦の空母化で戦力差を広げられてはたまらないと言ったところか。

Attribution: wc / CC BY-SA 4.0 2014年珠海航空ショーでの瀋陽J-31

中国は2機種のステルス戦闘機を開発したが、J-20に関しては実戦配備が始まったと言われているが、J-31に関しては、未だ試作機の範疇から脱していない感があり、両機の実用化を妨げているのは、実用に耐えるエンジン開発が難航しているからだ。

恐らく、十分な時間さえかければ、エンジン問題を解決することは可能だろうが、時間が掛かれば掛かるほど、軍事技術の開発にスイッチの入った米国の背中が遠ざかってしまう。

この様な状況で、もっとも製作難易度の高いSTOVL機用エンジンの開発が、短期間で中国に可能なのかと言われれば「難しい」と言わざるを得ない。

中国に可能性があるとすれば、リフトファンと可変ノズル付きエンジンを組合せた、Yak-38やYak-141の開発経験を持つロシアから技術を導入するしかないが、果たしてロシアが、中国のSTOVL機開発に手を貸すのかは未知数だ。

結局の所、どれだけ中国が、STOVL型ステルス戦闘機の必要性を叫んでみても、残念ながら当分の間、中国版F-35Bが登場することはない。

米国が中国からのハッキングで、F-35Bの機体制御や、F135-PW-600のデーターを奪われない限りは・・・

 

※アイキャッチ画像の出典:USMC Photo By: Lance Cpl. A. J. Van Fredenberg

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 6月 21日

    構造が複雑になればそれだけ
    チャイナボカンになる可能性が高まる

    • 匿名
    • 2019年 6月 21日

    ハッキング程度でエンジンがどうにかなるなら、とっくに最新世代大推力ジェットエンジンをモノにしてるでしょ

    • 匿名
    • 2019年 6月 21日

    データーが有っても、エンジンのブレードとかの冶金がダメよね。
    ロシアの輸出用エンジンのモンキー程度の凄さは有名(特に耐久時間)だけど、中国産のWLでしたっけ? 国産エンジンはそれよりもライフタイム・出力共に低いから・・・原型(モンキーモデルではあるけど)を持ってるのに今だロシア製エンジンのレベルに達してる無いってのがねえ。

      • 匿名
      • 2019年 6月 26日

      合金や耐熱素材で中国はまだ20年は遅れている
      製鉄で不純物の除去が悪いので脆くて錆びやすい
      それで合金作っても結局望む性能は出せない
      技術支援があった韓国ポスコですら無理なので中国はそこで躓く
      自称空母がまともに運用出来ないのも防錆技術の無さでよく壊れるから
      韓国が事国産ヘリコプターを完成出来ないのも結局防錆びと強度不足
      強襲揚陸艦では錆は致命的になる
      結局パクリでは基礎研究不足で対応素材は作れない
      なので張り子の虎扱いなんだよね

    • 匿名
    • 2019年 6月 22日

    それでも日本の遥か先を走っている中国という事実
    もう航空宇宙産業で日本が中国に追いつける確率はゼロなんだよなぁ…

      • 匿名
      • 2019年 6月 22日

      そうやってダメだと思ってると抜かれてしまうよ

        • 匿名
        • 2019年 6月 22日

        中国がネットを使っての心理戦に力を入れ出してから、この手の「日本ダメ、中国エライ、もう日本は諦めろ」論が爆発的に増えて来たよね。数に物を言わせる五毛党の活動は活発だ。

        4
          • 匿名
          • 2019年 12月 18日

          雇用が正規非正規に関わらず敵国のネットに書き込んで金もらえりゃやるよね

          2
      • 匿名
      • 2019年 12月 18日

      経済や人口はともかく 他はそうでもないでしょう。 工作お疲れ

      2
    • 匿名
    • 2019年 6月 24日

    F-35Bの開発にあたり、Yak-141の性能データおよび一部の設計データを取得した、と言う話がありますが、P&Wの3BSDノズル開発はYak-141の20年以上前からテストしていたので利用したとしても参考程度ということでしょう。
    ロシアは中国に売却した機体から散々パクられてるので、Yak-141のデータを渡したとしてもアメリカより詳細なものが得られるかは微妙ですし、そのデータだけでは自国生産できるだけのものにはならないでしょう。

    1
    • 匿名
    • 2019年 8月 10日

    F35Bはイギリスの独自の技術です。ハリアーの後継機だろう。イギリス軍のハリアーとアメリカ軍のF22のハーフと思えばちょうどいいかも。

    • 匿名
    • 2019年 12月 18日

    韓国がこっそり中露に横流ししそうw データや出来れば実物まで

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