米国関連

欧州に追いつく?F-35はアップグレード実行で「第6世代機戦闘機」に到達

ロッキード・マーティンは、最終的にF-35が高度なネットワック機能を備えた第6世代戦闘機までアップグレードされるだろうと話した。

参考:Lockheed hypes F-35′s upgrade plan as interest in ‘sixth-gen’ fighters grows

ロッキードは欧州の第6世代機戦闘機を、真の第6世代機とは見ていない?

パリ航空ショーで第6世代戦闘機が注目を集めている事についてロッキード・マーティンは「第5世代機から第6世代機へは、第4世代機から第5世代機にかけて見られたような“大きな飛躍”が起こる可能性は低く、第6世代機は第5世代機へは“進化の延長線上”程度になる可能性が高い」と指摘し、F-35はアップグレードを行うことで、第6世代戦闘機に到達することを目指していると話した。

出典:Rob Shenk / CC BY-SA 2.0 航空ショーで展示飛行を行うF-22

これは第4世代機から第5世代機への“大きな飛躍”の一つに形状制御技術を用いた「ステルス」の実用化があって、第4世代機から第5世代機へのアップグレードが不可能だが、第5世代機のF-35は、搭載された電子装置のアップグレードを行えば、高度なネットワック機能や、無人機制御、F-35自体の無人機化など、第6世代戦闘機が獲得する能力の追加が可能で、F-35は第6世代機への進化が可能と言う意味だ。

このような将来のソフトウェア的能力向上に対応するため、F-35は、2020年代に予定されている「ブロック4」へのアップグレードの中で、搭載電子機器のリフレッシュが行われる。

Tech Refresh 3と呼ばれる電子機器のリフレッシュで、F-35の頭脳として各種センサー、電子戦、通信、誘導制御、操縦席およびヘルメットディスプレイのデータを処理するための新型の次世代統合コアプロセッサ(ICP)を採用することになっており、これにより情報処理能力は25倍に向上し、将来、ソフトウェアの追加やアップグレードを行う際のマージンを確保する。

出典:Public Domain F-35A

Tech Refresh 3は、2023年、ロット15で製造予定のF-35から組み込まれる予定だ。

F-35のソフトウエア更新は、Tech Refresh 3以降、細分化される予定で、数年に1度ではなく、毎年更新されていく。そのためF-35の能力向上のスピードは、今以上に加速していくはずだ。

この様な技術的な土台を基に、F-35の進化の範囲は、欧州が定義する第6世代機の領域にまで手が届くことになり、ロッキード・マーティンが言うように、第5世代機と第6世代機の間に“大きな飛躍”は無いのかもしれない。

もう少し正確に言えば、欧州の定義する第6世代機と、第5世代機のF-35に、絶望的になるほどの決定的な技術差が無いと言う意味だ。

ロッキード・マーティンが考える第6世代機の定義は別なところにあり、欧州を中心に、第5世代戦闘機をスキップして開発されている第6世代機戦闘機は、せいぜい第5.5世代程度、マーケティングのために「第6世代機戦闘機」と名乗っているだけと、心の中で思っているのかもしれない。

 

※アイキャッチ画像の出典:US Air Force / Airman 1st Class Caleb Worpel

AIM-120を超える長射程実現!米空軍、新型空対空ミサイル「AIM-260」公表前のページ

ドイツ空軍所属のユーロファイター・タイフーン2機、空中で衝突し両機とも墜落次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    50万人に近づく死傷者数、ウクライナ軍が約19万人でロシア軍が約30万人

    ワシントンポスト紙は「年内にウクライナ軍がメリトポリに到達するのは困難…

  2. 米国関連

    バイデン大統領、予想より早くカーブルが陥落したのは指導者が抵抗することを諦め逃げ出したせい

    バイデン大統領は「アフガニスタンの政治的指導者はタリバンに抵抗すること…

  3. 米国関連

    ウクライナが待ち望む防空システム、NASAMSを扱うための訓練を開始か

    米Politicoの記者は「ウクライナ軍の兵士はNASAMSを扱うため…

  4. 米国関連

    数時間後に米空軍がB-21を公開、世紀の瞬間をYouTubeで視聴可

    12月2日はノースロップ・グラマンが予告していたB-21の公開日で、も…

  5. 米国関連

    GA-ASIがLongShotを受注、第4世代機や空対空ミサイルの交戦範囲を拡張

    ジェネラル・アトミックスがLongShot Programのフェーズ3…

コメント

    • 匿名
    • 2019年 6月 24日

    何が優先して要求されてるかも明確ではないからかも…
    戦闘機も戦車の、ようにお飾り要素が高くなってきているのかもしれない

    • 匿名
    • 2019年 6月 24日

    だいたい第六世代機の定義が決まっていない。
    未だに数十年前の機体が大部分をしめているんだから、ネットワークを持ち高性能なAESAを装備してスーパークルーズが可能なステルスなら対地対空対艦、あらゆる状況で圧倒的に有利に戦える。

    • 匿名
    • 2019年 6月 24日

    そもそも「第5世代機」という呼称がロッキード・マーティンのマーケティングワードで、そこから後付けで第1〜第4.5世代機が定義されてますから、LM社が「F-35をアップグレードすれば第6世代になる」と言ってしまえば終わりですからねぇ。
    ブロック4ソフトウェア+搭載電子機器のリフレッシュでまた使えない在庫保守パーツが出てきそうなので、F-35の兵站システムであるALISが改善されないと「F-35 第6世代機版」は新造機+新造機用保守パーツで買ったほうが手っ取り早くなってしまいそうですが。

    • 匿名
    • 2019年 6月 24日

    それもいいけどF-22のアップグレードもですね…

    • 匿名
    • 2019年 6月 24日

    訓練だとスターファイターでもF15撃墜できてるし、こないだMig21でF16撃墜してるし世代差ってのも絶対的なもんじゃない

    • 匿名
    • 2019年 6月 25日

    やはり実質F-35は第5.5世代戦闘機であると考えるべきなのか。

    • minori252
    • 2019年 6月 27日

    F-35Bのリフトファンを大型の発電機に換装して、そこで得られる大電力を機体外部の指向性エネルギー兵器ポッドで利用することを想像することがある
    こうすると、日本が第六世代戦闘機としてi3ファイターで実現しようとしているinstantな攻撃が可能になる

    この時足りない航続距離は主翼をF-35Cのものに換装して補うとか、そういうことを考えられるのはF-35の面白いところ

    そういう意味ではF-35の拡張性って本当に優れていると思う

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  2. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  3. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  4. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  5. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
PAGE TOP