軍事的雑学

軍事的雑学|最凶の外交カードを切るか?米国がF-35導入問題で揺れるトルコに強烈な一撃

米国は、依然としてロシア製地対空ミサイル「S-400」導入を強行するトルコに対し、キプロス問題を持ち出して強烈なパンチを浴びせた。

参考:We will no longer accept Turkey’s aggression in East Mediterranean – U.S. Senator

因縁の隣国、ギリシャ支援で新たな圧力を掛ける米国

米民主党所属の上院議員、ロバート・メネンデス氏が、東地中海におけるトルコの侵略を、これ以上容認しないと発言した。

これは明らかに、東地中海に浮かぶキプロス島の分断問題を指した発言だ。

メネンデス氏は「米国は、NATOの下でギリシャが約束を果たす目的で支援を強化し、武力ではなく話し合いによる再統一を促進させるため、キプロス共和国に課していた武器禁輸装置の解除を検討する」と話したと言う。

トルコとギリシャは世界一仲が悪く、この両国が国交を結んでいるのが不思議だと言われるほどだ。

そのギリシャを支援(恐らく軍事的な意味)し、トルコが不当に侵略し建国した北キプロス・トルコ共和国と分裂状態にある、キプロス共和国への武器禁輸を解禁するというのは、トルコの安全保障を脅かすのに十分な措置だ。

出典:public domain 分裂状態のキプロス島、左下がキプロス共和国、右上が北キプロス・トルコ共和国

私たち日本人に置き換えれば、米国が竹島を不当に占領しているのは韓国だと認定し、日本へ竹島奪還のため、ニミッツ級空母を売却すると言っているようなもの。

キプロス問題:
1960年に英国から独立し、英国連邦に加盟したキプロス共和国では、多数派のギリシャ系住民によるギリシャとの併合の声が高まっていた。一方で少数派のトルコ系住民は、キプロスをギリシャ系とトルコ系に分割し、それぞれがギリシャとトルコへ帰属するべきと主張。 1974年に、ギリシャが支援した併合強硬派がクーデターを起こし大統領を追放。これにトルコが反応し、トルコ系住民の保護を名目にキプロス共和国への侵攻を開始。首都のニコシアから北側を占領し、北キプロス・トルコ共和国を建国してしまう。それ以降、キプロス島では分断状態が続いている。

トルコのエルドアン政権は国内選挙で躓く

一方のトルコ国内では、3月末に行われた統一地方選で、エルドアン大統領が率いる与党、公正発展党が首都アンカラ、トルコ最大の都市イスタンブールの市長選で敗北。この結果に公正発展党は、票の集計に不正があったとして票の再集計か、選挙のやり直しを要求した。

トルコメディアは、このようなエルドアン政権と与党の行動を、もはやは法律などを守る気はなく、選挙によって選ばれたという合法性すら気にもしていないと論じている。

エルドアン大統領と与党にとって皮肉なのは、今回の選挙を決定づけたのが、今まで散々弾圧を加えてきたクルド人が持つ票だったということ。

出典:pixabay

ロシアからのS-400導入によって、米国からF-35の供給凍結、トルコで生産されたF-35構成部品の採用停止で、国内産業が受ける経済的ダメージ(一説によると100億ドル規模)に国民が愛想をつかしたため、野党、共和人民党や改善党へ票が流れた。

そのため与党と野党との票差が僅差になったところへ、総得票の20%程度といわれるクルド人票が野党に流れ込み、エルドアン大統領が率いる与党の敗北を決定づけた。

米国による圧力:
米国の外交筋は、トルコで製造されたF-35の部品の採用停止で、トルコ産業が被る損失は100億ドルを超えるだろうと脅している。さらにF-35の部品を製造しているトルコ企業に対し、NATO加盟国と共同でトルコの国際的なプロジェクトへの参加や取引を制限することで、圧力を強化する方向に出た。その一例として、トルコがアグスタウェストランド社から、攻撃ヘリ「A129 マングスタ」のライセンス製造権を得て開発した、攻撃ヘリ「T129 ATAK」の輸出を制限だ。このヘリに搭載されたエンジンは、米国のハネウェル社と、英国のロールスロイス社の合弁企業「LHTEC」が製造している。

エルドアン大統領は、統一地方選に敗北するまでは、米国とロシアを天秤にかけ、上手く立ち回っていたかのように見えたが、今回の選挙敗北で一気に形成が逆転してしまった感がある。

選挙結果に付け込むような形で、米国が、ギリシャ支援、キプロス共和国への武器禁輸を解禁という爆弾を投げつけ、選挙敗北に揺れるエルドアン大統領を政権から引きずり降ろそうとしている。

Attribution: Kremlin.ru / CC BY 4.0 エルドアン大統領とプーチン大統領が2015年6月13日にバクーで二国間協議中

逆に、ロシアとしては窮地に陥ったエルドアン大統領に恩を売り、手なずけるには絶好のチャンスだ。

今年中には、ロシアからの天然ガスパイプライン「トルコストリーム」が完成し、トルコ南部ではロシア企業による初の原発建設が進んでいる。落ち込んだトルコ経済のために離れていった支持を、これ以上悪化させない為にも、この計画による安定的なエネルギー確保は、現在のエルドアン大統領にとって命綱だ。

トルコストリーム:
ロシア南部からトルコ北西部まで、黒海海底を長さ930kmのパイプラインで結ぶ計画。年間300億立方メートル以上のガス輸送が可能になり、その半分がトルコ向け。残りは欧州向け。

果たして、米国の巧妙な攻撃によるエルドアン大統領への支持基盤崩壊工作が、エルドアン大統領による支持基盤の立て直しを上回れるのかどうか。表立った外交的支援を行っていないロシアが、トルコ救済(というより、エルドアン大統領救済と言ったほうがいい)に動くのかどうか。

ダイナミックに情勢が動くトルコの問題から、ますます目が離せなくなってきた。これは、どんなTVプログラムよりもスリリングで、展開の予想が困難な極上の政治ショーだ。

果たして、どんな結末が待っているのか?

管理人程度の頭では、まったく予想がつかない。

 

※アイキャッチ画像の出典:pixabay

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 4月 16日

    ロシアとは「S-400」の契約を交わしたんでしたね。
    どうなるのやら注目ですね。

    • 匿名
    • 2019年 4月 18日

    国益に反する事をする国は躊躇なく制裁する。
    どっかのやるやる詐欺国とは大違いだ。

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