軍事的雑学

300機以上の新規受注を獲得した戦闘機市場、2022年に最も売れた戦闘機は?

昨年の戦闘機市場はラファールに人気が集中して注目を集めたが今年も300機以上の戦闘機が売れており、2022年に最も多くの受注を獲得した戦闘機はどの機種だろうか?

2022年にぶっちぎりで支持を集めたのはF-35A、大人気だったF-16Vは顧客が購入を敬遠

現在、海外市場で入手可能な新規製造の戦闘機(露中は情報が曖昧なので除外)はF-15EX、F-16V、F/A-18E/F、F-35、ラファール、タイフーン、グリペンE/F、テジャスMK.1Aの7機種で、高等練習機の能力を拡張して軽戦闘機/軽攻撃機として使用可能な機種(M-346FA、FA-50、ヒュルジェット、L-39NG、A-29、AT-6、PC-21、ヒュルクシュC)まで含めると計15機種の航空機が売りに出されており、2022年に最も新規受注を獲得したのは、、、

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Kevin Long

1位:F-35A×187機受注 累計契約額324億ドル以上

F-35Aは2023年にフィンランド(64機)、カナダ(88機)、ドイツ(35機)から受注を獲得、ギリシャ、チェコ、タイもF-35A導入に向けて動いているため今後も導入国が増えると思われるが、F-35Aを購入できる潜在的な顧客=米国の同盟国は限られており、英国、イタリア、オーストラリアは国防戦略の見直しを進めているため調達数を削減する可能性も浮上、有人機中心だった航空作戦のあり方も将来的に「有人機と無人機による協調作戦」に移行するためF-35の総生産は予定よりも少なくなるかもしれない。

この減少分を穴埋めするには中東諸国や北アフリカ諸国にF-35を売るしかないのだが、バイデン政権は人権を重視する武器輸出ポリシーを掲げているため中々難しいものがある。

関連記事:破格の条件が成立、フィンランドがF-35A調達契約とサプライチェーン参加協定に署名
関連記事:カナダ、CF-18A/B後継機選定プログラムの勝者にF-35Aを選定
関連記事:ドイツがF-35Aの導入契約に署名、独企業のサプライチェーン参加を要求
関連記事:タイ空軍が米国にF-35A売却を打診、米議会の回答は来年の夏頃になる予定
関連記事:チェコ政府がグリペンの後継機としてF-35Aを選択、導入規模は24機
関連記事:ギリシャメディア、まもなく政府はF-35A調達を正式に決定する

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Alexander Cook AtlanticTrident21に参加中のラファール

2位:ラファール×42機受注 契約額81億ドル以上

ラファールは2022年にギリシャ(6機)、エジプト(30機)、クロアチア(12)、アラブ首長国連邦(80機)から128機を受注したが、2023年はインドネシアからの42機受注に留まっており、コロンビアに提案しているという位しかニュースがものの「仏航空産業界は2022年の受注分だけで4年~5年分の仕事量を確保した」と言われているため、強引に新規受注を取りに行く必要性は今のところない。

因みにラファール導入を新規に検討しているのはセルビア、コロンビア、インドが海軍向けにラファールの追加導入を検討(F/A-18E/Fと競合)している。

関連記事:42機のラファールを調達するインドネシア、米国も36機のF-15EX売却を承認
関連記事:クロアチア空軍との軍拡に火がついたセルビア空軍、大統領にラファール導入を提案
関連記事:コロンビアがクフィル後継機調達計画を再開、ラファールが有力候補に浮上

出典:한국항공우주산업

3位:FA-50×48機受注 契約額30億ドル以上

FA-50は2022年にポーランドからFA-50 Block10×12機、Block20(FA-50PL)×36機を受注して世界中から注目を集めたが、コロンビア空軍が次期練習機にFA-50を、マレーシア空軍がBlock20を導入するという報道(契約を締結したとう報道はない)があり、エジプトのアラブ工業化機構が韓国航空宇宙産業とT-50/FA-50の現地製造で合意して協定に署名(合意内容は不明)したと発表。

さらにエアバスも韓国産業界との協力拡大のため「FA-50の欧州輸出を共同推進したい」と韓国政府に提案しているため、今後も新たな受注を獲得する可能性が高い。

関連記事:韓国製攻撃機の欧州上陸が確定、ポーランドがFA-50の本契約に署名
関連記事:マレーシア空軍はテジャスではなくFA-50を選択か、但し揉める可能性も
関連記事:エジプトと韓国がT-50/FA-50の現地製造で合意、アラブ工業化機構が協定に署名
関連記事:エアバスD&S、FA-50の欧州輸出を共同推進したいと韓国に提案

出典:AIRBUS

4位:タイフーン×20機受注 契約額20億ユーロ以上

スペインは機体寿命が尽きるEF-18A+の後継機にF-35Aとタイフーンが提案されていたが「Captor-E/MK.1を搭載したタイフーンを導入する」と発表、エアバスは4ヶ国の開発国(英国、ドイツ、イタリア、スペイン)と共同で2019年頃からタイフーンの新バージョン(Long-Term Evolution/LTE)の開発に取り組んでおり、スペインの導入時期とLTEの完成時期が一致するため「スペイン空軍が導入するタイフーンはLTEバージョンでトランシェ5になるのではないか?」と噂されている。

タイフーンの新規受注で見込みがあるのはエジプトだが、2021年から何度も「まもなく契約に署名する」と言いつつ何の動きもないので正直微妙と思うものの、これ以外にニュースがないのでタイフーン・プログラムに関与するサプライヤーは導入国の投資=アップグレード需要などに期待するしかない。

関連記事:スペイン空軍のF-18A後継機問題、F-35Aではなくタイフーンを選択

出典:Lockheed Martin

5位:F-16V×8機受注 契約額13億ドル以上

ブルガリア議会はF-16Vを8機追加で調達するための資金を承認、米国務省も2月に「ヨルダンにF-16V×16機を推定42.1億ドルで売却する可能性を承認して議会に通知した」と発表したが、ヨルダンとの契約が成立したのか続報がないため、2022年にロッキード・マーティンが受注したF-16Vはたったの8機だ。

しかも2021年は新規受注が0だったので2年間で8機しか受注できておらず、あれだけ人気が集中していたF-16Vが失速しているのは「発注してもいつ届くのか?」という部分に原因があり、安全保障環境が悪化したことで「出来るだけ早い入手可能な機種(特にF-35Aを導入するNATO加盟国が売りに出している中古F-16C/Dは即買い手が決まっている)」に人気が集まっているからだろう。

出典:Israel Aerospace Industry イスラエル企業が製造したF-16Vの主翼

F-16Vを構成する各コンポーネントの製造は国際的なサプライヤー(主翼はイスラエル企業、F-16Vの中央胴体、後部胴体、コックピットの構造体はポーランドのPZLミエレツなど)に依存しており、COVID‑19の影響で各コンポーネントの納品予定が狂ってしまい納期の予定は1年遅れで進んでいる上、バックオーダーを100機以上(旧型機からのアップグレード作業も含めるともっとある)も抱えているため今から注文を入れても納期が読めないのかもしれない。

関連記事:米国、スロバキアにF-16Vの引き渡しが1年遅れて2024年になると通知
関連記事:製造が大幅に遅れているF-16V、台湾発注分も引き渡しが1年遅れ

以上が2022年の戦闘機市場における成果で「F-35Aに需要が集中している」と言えるが同機は導入国が限られるため、ラファールなどの第4.5世代機が受注を伸ばす可能性があり、インドが開発を進めているテジャスMK.2には16ヶ国が関心を寄せていると報じられているので「第5世代機ではない」と売れないというわけではない。

果たして2023年はどの機種が最も多くの新規受注を獲得するのだろうか?

出典:Ministry of Defence / GODL-India テジャスMK.1

今日・明日で仕事納めだという方も多いと思いますので一先ず1年間お仕事ご苦労さまでした。今年はウクライナ侵攻が勃発したため安全保障関係の話題に関心が集まった一年で大変でしたが、今年の年始年末も特に出かける用事はないので酒を飲みながらダラダラと更新を行うかもしれません。

とにかく航空万能論GFを覗いてくれた多くの方に感謝を、そして良いお年を!

関連記事:300機以上の新規受注を獲得した戦闘機市場、2021年に最も売れた戦闘機は?

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Hiram Martinez

ウクライナ軍が鹵獲した2,000輌以上の戦車や装甲車、大半が役立たず前のページ

ウクライナが無人機を迎撃できる無人機を開発中、まもなく状況が変化する次のページ

関連記事

  1. 軍事的雑学

    ロシア軍がザポリージャ原子力発電所を攻撃する理由、ウクライナ支援の中止を要求か?

    エスカレートするザポリージャ原子力発電所へのロシア軍による攻撃は「放射…

  2. 軍事的雑学

    米国がウクライナNATO不加盟確約と報じるのはロイター日本語版だけ?

    ロイター(日本語版)は「米国が来週中に提出する文書の中にウクライナのN…

  3. 軍事的雑学

    ウクライナ軍公開のM49A2榴弾に漢字の印字、日本提供という指摘も

    ウクライナ軍の領土防衛隊が漢字が印字されたM49A2榴弾の写真を公開、…

  4. 軍事的雑学

    10/13更新|各国がウクライナに提供している装備や物資のリスト

    世界各国がウクライナに支援している(重装備を除く)武器や物資の一覧表で…

  5. 軍事的雑学

    300機以上の新規受注を獲得した戦闘機市場、2021年に最も売れた戦闘機は?

    2021年にロシア製や中国製以外の戦闘機(軽戦闘機/軽攻撃機として使用…

コメント

    • お腹がポンポコリン
    • 2022年 12月 28日

    今年も一年楽しませて頂きありがとうございました。
    管理人さんと同じくダラダラお酒飲みなから更新を待ってますね。

    36
    •  
    • 2022年 12月 28日

    えっ!?
    こんな大人気戦闘機F-35を在庫処分でアメリカから押し付けられたと主張している軍事専門家()が日本に沢山居るんですか!

    50
    • zerotester
    • 2022年 12月 28日

    一部の人々の間でF-35のネガティブキャンペーンが盛んでしたが、現実として「一番いい戦闘機を頼む」とF-35になります。買えない国(そこまで必要ない国)がラファール、タイフーン、F-16Vなどを選ぶ感じで。日本は第5世代もある中国軍が仮想敵なのだからF-35しか無いでしょう。継続的なアップデートもありますし、F-22とかにせずにF-35で良かったと思います。

    今後の拡販が難しいかもと管理人さんは書かれていますが、しばらくは受注分がたくさんあるし、アップグレードもあるので食いつなげるのではないでしょうか。生産ラインが閉じると維持費が高くなるので長く売れるといいですね。

    管理人さん一年間ありがとうございました!

    49
    • りんりん
    • 2022年 12月 28日

    本年も様々な記事を提供していただき、どうも有り難うございました。
    管理人様と皆様、そして世界にとって来年が良い年でありますように。

    15
    • 無無
    • 2022年 12月 28日

    戦闘機市場におけるロシアの失速という意外性と、無人機をも含めて新興国の勢いを実感した1年でした、
    来年も共々に長寿と繁栄を

    9
    • ななし
    • 2022年 12月 28日

    本年も精力的な記事更新をありがとうございました。
    管理人さんも良いお年を。

    15
    • vfgt4
    • 2022年 12月 28日

    中国のJ-10Cはパキスタンから36機受注(現在12機納入)しましたが、これはギリギリ2021年のお話ですかね?
    ロシアによるウクライナ侵攻の影響でF-35の受注数は増えましたね…。

    1
    • ボリス
    • 2022年 12月 28日

    管理人様
    本当に貴重な情報をご提供頂き有難う御座いました!
    そして来年も楽しみしております。

    厳寒が続きますので、お体を大事になさってくださいませm(__)m

    8
    • ホテルラウンジ
    • 2022年 12月 28日

    管理人さま
    本年も様々な記事を紹介、解説していただいてありがとうございました。
    お陰で多様な最新の軍事情報を得る事ができ、充実した楽しい年を過ごすことが出来ました。
    よいお年をお迎えください

    6
    • クローム
    • 2022年 12月 28日

    自社製品が2つランクインし、FA-50にも技術提供しているロッキード•マーティンが圧倒的ですね。
    F-16に至っては受注を捌ききれないという嬉しい悩みもあるようで。
    いつか三菱も名を連ねて欲しいものです。

    皆さん良いお年を

    7
    • 匿名希望係
    • 2022年 12月 29日

    どう考えても製造ライン足りてないんだよな>F-16

    1
    • α
    • 2022年 12月 29日

    頑張れテジャス!

    管理人さんも今年もお疲れ様でした。よいお年を!!

    2
    • 暇人28万号
    • 2022年 12月 29日

    管理人様!いつもありがとうございます!
    来年も無理なく良記事をよろしくお願いいたします。

    1
    • ブルーピーコック
    • 2022年 12月 29日

    管理人さんも今年はありがとうございました。

    まだまだ新造されて飛ぶ第4世代機もさることながら、第2世代戦車や牽引砲などの古強者もまだまだ現代戦で使えるということを証明し、世界中で砲弾や整備などの補給問題が顕になり、日本もついに防衛関連で一歩を踏み出すという個人的にオドロキと激動の年になりました。20年以上前の書籍に描かれたミリタリーの未来とは全く違うなあ。

    自分としては来年は無人機のカンブリア爆発が収まってほしいなあ。無理だろうけど。似た形と細かなバージョン違いが多すぎてオジサン覚えられないよ。

    1
    • 大福
    • 2022年 12月 29日

    数年前に輸送機カッコイイ!からたどり着いたこちらのブログでしたが、今年も良質な記事を読ませて頂きありがとうございました。
    特に今年はウクライナの事もあり、平和や安全保障に関して考えさせられた一年でした。

    そして管理人さんをはじめ、ここに来る皆さんの知識、考察にただただ敬服するばかりでした。
    ミリタリーを語るということは、軍事だけでなく、政治、経済、歴史等、多岐に渡り学ぶ必要があるのですね。
    (カッコイイ!を語るのも多いにアリだと思いますが(笑))
    来年もまたこちらで勉強したいなと思います。

    管理人さん今年も一年間お疲れ様でした。
    来年もよろしくお願い致します。
    (新型機とか某音速ヘリとか語れる世の中になると良いですね!)

    1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  2. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  3. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  4. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  5. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
PAGE TOP