軍事的雑学

建造費1.4兆円!米海軍新型「フォード」級空母、カタパルトを「電磁式」から「蒸気式」に変更?

トランプ大統領は日本訪問中に、横須賀の海軍基地を訪れ、強襲揚陸艦「ワスプ」で海軍・海兵隊の将兵を前に、ジェラルド・R・フォード級空母が装備予定の「電磁式航空機発射システム “Electromagnetic Aircraft Launch System”(通称:電磁式カタパルト)」について批判を繰り返した。

参考:New US Aircraft Carriers’ Catapults Will Use… STEAM, Trump Says

誰もがイノベーションを望んでいるが、ジェラルド・R・フォード級空母はやり過ぎ

トランプ大統領は、以前から電磁式カタパルトについて、批判を繰り返してきた。

彼の主張と要求はこうだ。

米国の空母は、実際の使用で、誤作動を起こす可能性がある新型の「電磁式航空機発射システム」ではなく、伝統的な「蒸気式カタパルト」を装備するべきだ。蒸気式カタパルトは約65年間、完全に機能し役割を果たしてきた。私達は9億ドル(約980億円)のコストを、新型のシステムに投じているにも関わらず、このシステムが、あらゆる環境下で確実に動作するのか誰も知らない。

次から次へと、新しい物が出てきて、誰もがイノベーションを望んでいるが、これはやり過ぎだ。

新しい空母を建造する際、新型のシステムから、蒸気式カタパルトへ設計を改めるよう命じることを検討している。

トランプ大統領は、強襲揚陸艦「ワスプ」を訪れた際、出迎えた将兵に「電磁式航空機発射システム」と、「蒸気式カタパルト」について、現場の意見を聴取した。その結果、兵士らは「蒸気式カタパルト」を支持していることが分かった。

出典:public domain

これは、上院軍事委員会所属の民主党議員、ティム・ケイン氏が、新型の「電磁式航空機発射システム」を搭載したジェラルド・R・フォード級空母を、新たに2隻調達する計画を発表したことに対応した発言と見られる。

開発中の「電磁式航空機発射システム」等の新しいテクノロジーを採用したジェラルド・R・フォード級空母は、「蒸気式カタパルト」を装備した空母に比べ、航空機の発艦効率を改善し、維持費を大幅に削減することが可能で、空母の艦体寿命50年の間に、約40億ドルもの保守費用を節約することが出来ると米海軍の関係者は話している。

新型空母建造に130億ドルも必要なら、ニミッツ級空母を2隻建造した方がマシ

もし、これが事実なら、なぜトランプ大統領は批判を繰り返すのか?

トランプ大統領は「電磁式航空機発射システム」について言及しているが、実際にはジェラルド・R・フォード級空母が採用した、数々の新しいテクノロジーが、空母建造計画のスケジュールを遅らせ、調達価格がどんどん上昇している事に対する批判だと思っていい。

ニミッツ級空母の最終艦「ジョージ・H・W・ブッシュ」の建造費は62億ドル(約6800億円)だった。

出典:public domain 建設中に乾ドックに座っているジェラルドR.フォード

しかし、ジェラルド・R・フォード級空母の1番艦の建造費は、当初51億ドルで、それが80億ドルに増え、艦体は完成しているのに、「電磁式航空機発射システム(EMALS)」や、「新型着艦制動装置“Advanced Arresting Gear”(AAG)」、「先進型兵器エレベーター“Advanced Weapons Elevators”(AWE)」の開発遅延のおかげで、実戦任務への投入が2年遅れ、2019年1月時点での建造費用は130億ドル(約1兆4000億円)を越えた。

幾ら先進的なシステムで、効率が改善したり、経費を削減出来ると行っても、1隻の空母を建造するのに130億ドルも必要なら、62億ドルのニミッツ級空母を2隻建造した方がマシと、トランプ大統領は言いたいのだろう。

ここまで建造費用が膨れ上がった原因は以下の通りだ。

電磁式航空機発射システムは、異なる機種、任務によって異なる兵装を搭載した艦載機を、どれ位のパワーで、どの程度の加速率で、発射すれば機体にどの程度の負荷がかかるのかデータが不足しているため、未だに調整中で、システム自体の不具合も完全潰しきれておらず、未だに不具合の報告が上がってくる。

新型着艦制動装置は、従来の油圧式ではなく、電磁気と水圧でアレスティング・ワイヤーの制動を行うが、故障率が異常に高く、発艦効率を高められる「電磁式航空機発射システム」で、多くの艦載機を発艦させても、着艦させることが出来ない。

4日間連続で、故障をせず艦載機を着艦させられる可能性は0.001%で、1日間、故障をせず艦載機を着艦させられる可能性は0.2%以下と言われているほど信頼性が確立されていない。

先進型兵器エレベーターは、ミサイルや爆弾を飛行甲板へ運ぶためのエレベーターを、電磁力で作動させるもので、艦の奥底にある弾薬庫から航空機の整備が行われる格納庫へ繋がるエレベーターが7基、格納庫から飛行甲板へ繋がるエレベーターが3基、計11基の兵器用エレベーターがある。

しかし、エレベーターを制御するためのソフトウェアに問題があり、正常に作動するエレベーターが一つない状態で空母「ジェラルド・R・フォード」は、2017年7月に就役したと言うから驚きだ。

2019年3月時点で、2基のエレベーターが正常に動作するようになったと報告があったが、残りの9基についての詳細は不明だ。

果たして、いつになれば、空母「ジェラルド・R・フォード」が正常に作動するようになるのか、誰も知らない。

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain

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コメント

    • 名無し
    • 2019年 5月 30日

    ゴム式カタパルトにすれば多分100万円くらいで作れるよ、きっとね。

    • 匿名
    • 2019年 5月 30日

    最後の方、エレベーターが一つしか無い状態で就役したってこと?
    一つない状態ならまだ分かるが一つしか無いだととんでもないな…
    アメリカも今までなら力づくで解決してきた問題もソフトウェア関連になるとダメダメなのかねぇ…
    F-35やその支援ソフトのALICEもグッダグダだしな
    まともに開発完了して運用してる兵器が全然無いじゃん

    • 774
    • 2019年 5月 31日

    武器は超電磁ヨーヨー
    超電磁タツマキ
    超電磁スピン

      • 匿名
      • 2019年 5月 31日

      信頼性ゼロじゃあ、従来品に戻せという主張は確かに的を得ているなぁ。
      それにしても、1隻の値段がニミッツ級2隻分なのは高すぎる。

    • 匿名
    • 2019年 6月 01日

    最新装備を盛り込みすぎて不具合率上昇って事ですね。
    とは言うものの投げ捨てるには惜しい技術でもありますよね。
    トランプさん超電導リニアで先を行く日本に電磁カタパルトを託してみませんか?
    まあ、ジョークですが!!

    • 匿名
    • 2019年 6月 03日

    3ー4つの強襲揚陸艦を1つのスーパーキャリアに見立てて運用する方がいいのかもね
    F35Bは艦載機の歴史を変えるのかも

    • 匿名
    • 2019年 6月 23日

    新技術には色々不具合が有るのは解るが、アメリカのは桁が違うね

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