欧州関連

訓練も通信も敵との交戦も無理? ドイツが手を焼くプーマ歩兵戦闘車の欠陥

ドイツが導入中のプーマ歩兵戦闘車は欠陥が多すぎて実戦に投入するには危険すぎ、訓練を行うにもスペアパーツ不足で動かず、問題を解決するには馬鹿げた改修コストが要求される始末でもう手に負えない。

参考:Kaum zu fassen, womit unsere Soldaten jetzt trainieren müssen!

敵と交戦するにはリスクが高すぎるプーマ装甲歩兵戦闘車

ドイツ陸軍のプーマ歩兵戦闘車は複雑なメンテナンスとスペアパーツ不足の問題で「280輛中53輛(約19%/2019年のデータで稼働率23%という数字も存在する)」しか動かすことが出来ずにいるが、仮に全ての車輌が動いたとしても「敵と遭遇する可能性が高い前線で活動するにはリスクが高すぎる」と言われている。

出典:Dirk Vorderstraße/CC BY 2.0

まずプーマに搭載されている電子機器やソフトウェアは頻繁にクラッシュするため「長距離を移動したり敵と交戦するにはリスクが高い」と、暗号化された音声やデーターを高速でやり取りするための通信機も装備されていないため「前線で交信を行えば高い確率で交信内容を傍受される」と警告を受けている。

正確には現在の通信装置でデーターの送受信は可能だが、時代遅れなほど低速(帯域幅が狭い)なため「限定された範囲で非常にゆっくりとならデータの送受信が出来る」というレベルと言われており、無人機の活用や戦闘機と情報共有が当たり前の時代において「全く似つかわしくない通信性能」というのは間違いない。

出典:Dirk Vorderstraße/CC BY 2.0

それでもドイツ軍だけが困るのなら救いもあるのだが、ドイツは2023年からVJTF(NATOの高高度即応統合任務部隊:Very High Readiness Joint Task Force)の指揮を引き継ぐ事にことが決まっており、これに参加する第37装甲擲弾兵旅団は、上記の問題を改修したプーマVJTF(40輌)を受け取る必要がある。

この問題は2017年から指摘されていたので「直ぐに対応していれば時間的な余裕はたっぷりと残されていた」と言えるのだが、プーマVJTFへの改修が認められたのは2019年後半(運用テストは2020年いっぱい掛かる見込み)で、40輛の改修コストに約6.5億ユーロ=1輛あたり1,600万ユーロも要求されているため「馬鹿げたコスト」だと批判されている。

国防省はプーマを350輛調達するのに約30億ユーロ(1輛あたり約800万ユーロ/単価ではなく関連費用込みの平均取得コスト)と見積もっていたが、2019年に議会へ報告した時点でプーマの調達コストは2倍(約60億ユーロ)に増加していたことが発覚、さらに調達したバージョンのままでは重大な欠陥を抱えているため最終的に全てのプーマをVJTF仕様に改修する必要があり、これに50億ユーロ以上の費用が必要になるため「馬鹿げたコストだ」と批判されているのだ。

 

※アイキャッチ画像の出典:Boevaya mashina / CC BY-SA 4.0 歩兵戦闘車プーマ

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 1月 27日

    かつてのドイツ軍は見る影もなく…

    7
      • 匿名
      • 2020年 1月 27日

      栄枯盛衰は歴史の必然

      2
        • 匿名
        • 2020年 1月 28日

        驕れるドイツも久しからずや

        2
    • 匿名
    • 2020年 1月 27日

    韓国からK21でも導入した方が良いんじゃないか

      • 匿名
      • 2020年 1月 27日

      それも選択肢の一つと思えてしまえるのが、辛いところ

      3
      • 匿名
      • 2020年 1月 27日

      イスラエルから買ったら、ニュースになるけどね

      2
    • 匿名
    • 2020年 1月 27日

    EUで1人勝ちでウハウハしてた時期が長かったけど金儲けばっかりでボケちゃったのかねドイツは。
    まぁクネの大嘘告げ口外交に乗っかってクネと一緒に日本は謝れって言ったメルケルババアがまだ居座ってるからどーでもいいけど
    ナチに責任全部おっかぶせてる奴が何様だっての

    3
      • 名無し
      • 2020年 1月 27日

      EU破綻は確実だから、当分浮かび上がれないだろう。
      かては戦車でブイブイ言わせてた国が、いったいどうしたらこうなる。
      メルケルもムンも東側出身だから、自国の壊滅を目指してるようにしか見えない。
      そしてさすがイギリスは機を見るに敏、伊達に長い間大英帝国をやってるわけじゃない。

      4
    • 匿名
    • 2020年 1月 27日

    アディダスかナイキに変えた方が良さそう

    4
    • 匿名
    • 2020年 1月 27日

    ドイツ連邦軍を崩壊させるにはメルケル一人いればイイなんて誰が思っただろう

    3
      • 匿名
      • 2020年 1月 27日

      ポーランド系ということから、一部に危ぶむ声はあったけど。

      1
    • 匿名
    • 2020年 1月 27日

    軍事費削減して人を減らしたらこうなるという見本ですかね
    日本でもやたら軍事費削減を唱える連中がいますが

    5
      • 匿名
      • 2020年 1月 27日

      日本に居るからと言って日本人とは限らないのが何とも。
      日本人でも、韓国政府が公言する多額の日本世論工作費で靡いている連中なのかもしれないし、
      公言してはないかが多分してるだろう中国の世論工作のお金でなびいてるのか、とか色々思ってしまう。

      5
      • 匿名
      • 2020年 1月 27日

      何がヤバイって、減らしたのが末端の下っぱじゃなくて将校を大量に首にしたのがヤバイ。
      兵器の稼働率以前に指揮官がいないから、即応がほぼ不可能で・・・貴重な指揮官は平和維持活動で海外派遣しちゃって国内に不在と言う。

      4
      • 匿名
      • 2020年 1月 27日

      その層は軍備などの質には感心無さそうなので、余計に怖いです。
      仮に極端な人減らしの弊害で何か問題起きても、要因には触れず、ただただ非難だけしそう。

      4
    • 匿名
    • 2020年 1月 27日

    ここまで混乱していながら、政変ひとつ起きないことに、ドイツ国民の意識がうかがえる。

    1
    • 匿名
    • 2020年 1月 27日

    最早ドイツ軍は解体して、他のEU軍に金だけ払った方がEU全体の為になるのでは

    3
    • 匿名
    • 2020年 1月 28日

    これ乗せる為にA400Mの仕様変更が発生して開発期間が延びたって聞いたような。
    そのプーマが現状使い物にならないレベルだとA400Mの販売にも影響出そうですし、
    EUの防衛産業的にも色々と不味いんじゃないかという気が…。

    3
      • 匿名
      • 2020年 1月 28日

      もうプーマをA400Mに載せるなんて誰も考えてないと思うぞ
      アフガンへの派兵も終わったから必要無いし、A400Mも大幅重量超過で30t迄しか載せられないようだし
      そもA400M自体、エンジンの信頼性他問題が多すぎるので販売もクソも無し(マレーシアみたいな物好きも居るが、裏じゃどうなってるのやら)

      2
        • よし
        • 2022年 10月 05日

        あのA400Mの炎上とその後の信頼性問題見てると、C-2がエンジンだけは枯れきったクッソ無難なCF6を採用した事に拍手を送りたい。

    • 匿名
    • 2020年 1月 28日

    レオ2の最新型が新造したら9億くらいだっけ?
    って考えるとばかげてるなぁ

    2
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