軍事的雑学

2019年ミリタリーニュース10選、欧州で進行する第6世代戦闘機プログラムの希望と問題

早いもので2019年も、あと数日で終わりを迎えるが、今回は航空万能論的に最も印象に残ったミリタリーニュースを10本選び、1つづつ振り返っていく第4回目だ。

革命的な冷却装置「プリ・クーラー」の開発を進める英国、テンペストに採用か?

今年は欧州の第6世代戦闘機に大きな動きがあった年で、英国が主導する「テンペスト」もドイツとフランスが主導する「FCAS」も、それぞれ大きな前進を見せた。

英国が主導する「テンペスト」プログラムは「FCAS」よりも1年先に発表されていたが、このプロジェクトに参加する国を見つけられず、本当にプログラムを開始できるのか不安視されていたが、7月にスウェーデンが、9月にイタリアがテンペストプログラムへの参加を表明したことで本格にプロジェクトが動き出した。

現在でも定期的に、日本にプログラムへの参加を呼びかけているテンペストプログラムだが、今年、非常に注目されるニュースがあった。

英国のリアクション・エンジン社は、超極音速空気呼吸エンジン「サーブル・エンジン」に用いられる冷却装置「プリ・クーラー」の開発を進めており、M5.0相当の環境下で作動することが確認され、この技術がテンペストに採用される可能性が高まっている。

出典:Science Museum London / CC BY-SA 2.0 サーブル・エンジンの断面図

サーブル・エンジンとは英国のリアクション・エンジン社が開発中の新型エンジンで、大気圏内ではジェットエンジンとしてM5.0以上で作動し、大気圏外ではロケットエンジンとしてM25で作動するという「極超音速複合予冷空気呼吸ロケットエンジン」のことで、2つのエンジンの仕組みを両立させる為に重要なのは、高温で流入してくる空気を如何に管理するかだ。

リアクション・エンジン社が開発した革命的な冷却装置「プリ・クーラー」は1,000度に達する高温の空気を、たった1/100秒で-150度Cまで冷却できるため、これを軍用機のジェットエンジンに利用すれば、M5.5の極超音速で飛行中でもエンジンの過剰加熱を防ぐ事ができ、既存の軍用機に設置するだけでもエンジンの性能や耐久性を飛躍的に向上させることができる。

引用:BAE Systems テンペスト

この技術には当然、英国防省が興味を示し開発資金を提供中で、米国もこの技術に関心を示しており、冷却装置「プリ・クーラー」が完成すれば当然、英国が主導する「テンペスト」に採用される可能性が高く、日本がテンペストプログラムに参加するかどうかに関係なく非常に興味を惹かれる点だ。

ドイツとフランスが主導する「FCAS」は主導権争いで時間を消耗

一方のドイツとフランスが主導する「FCAS」も6月に開催された「パリ航空ショー」で、FCASのモックアップを披露、プラグラムへのスペイン合流が発表され本格な開発に動き出すと見られていたが、こちらも一筋縄では行かないようだ。

出典: JohnNewton8 / CC BY-SA 4.0 パリ航空ショーで発表されたダッソーFCASのモックアップ

エアバス社とダッソー社は2040年までに「FCAS」を完成させるため、1日でも早くデモンストレーター(技術実証機)フェーズへ進みたいのだが、肝心のドイツとフランスが揉め始めて、一向にデモンストレーターフェーズへ進むための「GOサイン」が出ないまま、ひたすら両国の話し合いが進展するのを待つしかない状況に追い込まれた。

詳しくは経緯は過去記事に書いてあるので興味のある方は読んでみてほしい。

これはエンジン開発においてドイツ議会がフランスと同等の決定権を要求して譲らず、デモンストレーターフェーズへ進むために必要な資金の負担を拒否しているためで、ドイツ議会を説得するため両国政府は条件について話し合いを行った結果、エンジンの研究と開発の第1フェーズまではフランス企業のサフラン社が主導し、ドイツ企業のMTU社がサポートに回るが、サフラン社とMTU社は2021年末までに50対50の合弁会社を設立し、その後のエンジン開発と生産を共同で行うことで決着した。

ただし合意は両国の政府間によるもので、ドイツ議会がこれで納得せず、デモンストレーターフェーズへ進むために負担するドイツ分7,500万ユーロ(約90億円)の支出を拒否すれば、来年の1月までにエアバス社とダッソー社に与えるはずの開発費が支給できず、開発がストップしてしまう可能性が残っているため安心できない。

このように、ドイツとフランスが主導する「FCAS」は開発スタートから主導権争いが表面化し、開発自体は進んでいないが、ようやく本格的な開発に取り掛かれる環境が整ったところまでは辿りつた。

2020年、両者の第6世代戦闘機開発プログラムは、どのような動きを見せるのか引き続き注目していきたい。

 

※アイキャッチ画像の出典:英国防省

関連記事

  1. 軍事的雑学

    無力化される可能性が高い韓国F-35A、北朝鮮の新型兵器ほぼ迎撃不可能

    北朝鮮が試射を行った新型短距離弾道ミサイルと、新型大口径誘導ロケット砲…

  2. 軍事的雑学

    欧州に逃げ場はない? ロシア、極超音速兵器が欧州全体を射程圏内に収める

    ポーランドメディアは、ロシアが開発した極超音速ミサイル「KH-47M2…

  3. 軍事的雑学

    米軍需要が韓国から台湾へ? 台湾、米国と共同でF-16メンテナンスセンターを設立

    台湾の「自由時報」は17日、アジア・太平洋地域初となる戦闘機「F-16…

  4. 軍事的雑学

    米空軍、正式に「B-1Bランサー」や「A-10サンダーボルトII」など7機種の退役計画を発表

    米空軍は2021会計年度予算で要求する予算案を発表し、冷戦期に製造され…

コメント

    • 匿名
    • 2019年 12月 30日

    極超音速を出せるエンジンができても、極超音速を出すべきかという点は別問題なのでは。
    エンジンがどうかなっても機体自体の加熱や燃費、加熱時のセンサー類の動作だとか。

    偵察機やスペースプレーン向きだとは思いますけど、戦闘機では結局M2超え戦闘機が無くなったのと同じ道を歩むような。

    • 匿名
    • 2019年 12月 30日

    ムリゲーなエンジン

    • 匿名
    • 2019年 12月 30日

    特殊な仕様求めるスウェーデンのいるテンペストとか、艦載機仕様で揉めそうなFCASとかどう落とし所見つけるんだろうか

      • 匿名
      • 2020年 1月 01日

      >特殊な仕様求めるスウェーデンのいるテンペスト

      その上、万が一にも日本が合流したら﹙特殊な仕様の綱引きで﹚悲惨なことになりそうですね。

    • 匿名
    • 2019年 12月 31日

    プリクーラーってただの「高性能な液体ヘリウムとの熱交換器」だよね。
    しかも最終的な冷却手段は燃焼直前の液体水素。
    たんまり抱えた液体水素を気化→燃焼させながら
    消費して短時間で大気圏離脱するのが目的の
    宇宙機だから使える装置を戦闘機でどう使うのか。
    液体ヘリウムだけを頼りに気化する端から排出してく
    アフターバーナー的な「ここ一番の加速装置」として
    使うとしたら、使わない間に結露・凍結しそう。
    当然そんな事に英米国防関係者が気づかないはずも
    ない訳で、もし本当に興味示してるとしたら
    極超音速ミサイル用とかじゃない?

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

PAGE TOP