軍事的雑学

300機以上の新規受注を獲得した戦闘機市場、2021年に最も売れた戦闘機は?

2021年にロシア製や中国製以外の戦闘機(軽戦闘機/軽攻撃機として使用可能な高等練習機も含む)には329機以上の新規発注が殺到したが、最も人気を集めた戦闘機はどの機種だろうか?

個人的に受注0件に終わった競合が2022年に巻き返しに出ることを期待している

現在、海外市場で入手可能な新規製造の戦闘機(ロシア製と中国製は情報が曖昧なので除外)はF-15EX、F-16V、F/A-18E/F、F-35A/B、ラファールF3R、タイフーン・トランシェ4、グリペンE/F、テジャスMK.1Aの7機種で、高等練習機の能力を拡張して軽戦闘機/軽攻撃機として使用可能な機種(M-346FA、FA-50、ヒュルジェット、L-39NG、A-29、AT-6、PC-21、ヒュルクシュC)まで含めると計15機種の航空機が売りに出されており、2021年に最も新規受注を獲得したのは、、、

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Alexander Cook AtlanticTrident21に参加中のラファール

1位:ラファールF3R×128機受注 累計契約額220億ドル以上

フランス防衛産業界にとって2021年はアタック級潜水艦契約を失うというショックがあったものの全体な新規受注は堅調に推移、特にラファールはスイスやフィンランドでF-35Aに競り負けたものの4ヶ国から計128機(ギリシャ×6機、エジプト×30機、クロアチア×12機、アラブ首長国連邦×80機)の受注を獲得して契約総額は200億ユーロ/約2.6兆円を超えると予想されており、インドネシア空軍、セルビア空軍、インド海軍が導入を検討中なので2022年も新たな契約を獲得するかもしれない。

出典:Lockheed Martin

2位:F-35A×100機受注 累計契約額150億ドル以上

F-35の中で空軍仕様のF-35Aは競合に競り勝ちスイス空軍(36機)とフィンランド空軍(64機)の次期戦闘機に選ばれ150億ドル以上の契約を獲得したが、2021年に受注ラッシュを見せたラファールに及ばず2位に甘んじる結果となった。しかしF-35AはグリペンEと共にカナダ空軍が検討を進めている次期戦闘機の最終候補に選ばれており、スペインも空軍のレガシーホーネットと海軍のAV-8Sの後継機としてF-35AとF-35Bに関心を示しているため2022年はラファールを抑えて1位の座を奪取するかもしれない。

出典:Ministry of Defence / GODL-India テジャスMK.1

3位:テジャスMK.1A×83機受注 累計契約額65億ドル以上

2021年の新規受注で3位の座に輝いたのはインドの国産戦闘機テジャスMK.1Aだが、これはインド空軍からの発注と競合機(F-15EX、F-16V、F/A-18E/F、タイフーン・トランシェ4、グリペンE/F)が2021年に新規受注を1件も獲得出来なかったことが重なったために起きた珍事であり、本当の勝負は提案しているマレーシア空軍やアルゼンチン空軍の受注が獲得できるかどうかだ。

出典:アエロ・ヴォドホディ

4位:L-39NG×12機 累計契約額2.2億ドル以上

先程も述べたがF-15EX、F-16V、F/A-18E/F、タイフーン・トランシェ4、グリペンE/Fは2021年に新規受注を1件も獲得出来なかったため、4位にランクインしたのはチェコのアエロ・ヴォドホディが開発したL-39NGで2021年にベトナム空軍が12機発注した。本機は高等練習機だが5つの外部ハードポイントを備えているため1.2トンまでの兵器(空対空ミサイル、精密誘導爆弾、ロケット弾、ガンポッドなど)を搭載して軽戦闘機/軽攻撃機運用することも可能だ。

出典:Korea Aerospace Industries modified / CC BY-SA 4.0

5位:FA-50×6機 累計契約額2.3億ドル以上

5位にランクインしたのは韓国航空宇宙産業(KAI)が開発した高等練習機T-50の軽攻撃機仕様「FA-50」でインドネシア空軍が導入済みのT-50i(FA-50のインドネシア仕様)を追加導入するため新たに6機を発注したが、セネガル空軍、ペルー空軍、スロバキア空軍がFA-50に関心を示しており、KAIはFA-50を完全なマルチロール機にアップグレードしたFA-50/Block20を開発中でマレーシア空軍の次期軽戦闘機に提案されている。

因みにFA-50の原型であるT-50は米空軍と米海軍が最低でも100機以上調達を予定している戦術訓練機にロッキード・マーティンと挑戦する予定でコチラも目が離せない。

以上が2021年に新規受注を獲得した戦闘機(軽戦闘機/軽攻撃機として使用可能な高等練習機も含む)ランキングで、6位にはT-6ベースのAT-6(タイ空軍が6機発注/1.4億ドル)が続くのだがココまで来るともはや多くの人は興味を示さないの省略しておく。

2021年に新規受注を獲得できなかったF-15EX、F-16V、F-18E/F、タイフーン・トランシェ4、グリペンE/Fは既存の契約で確保してるバックオーダーがあるため生産ライン維持に困ることはないが、恐らくF/A-18E/Fのバックオーダーは米海軍が2021年度予算で発注した24機と2022年度予算で発注する12機のみ(ドイツ発注は白紙化)で、2023年度予算で議会がF/A-18E/F発注打ち切りを認めてインド海軍需要を逃せば新造機の生産ラインは終焉(BlockII→BlockIIIへのアップグレードラインは維持)を迎える可能性が高い。

果たして2022年はどの機種が最も多くの新規受注を獲得するのだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Alexander Cook

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コメント

    • 匿名
    • 2022年 1月 09日

    ラファールが一位!
    おめでとう!

    16
    • samo
    • 2022年 1月 09日

    この記事に補足するとしたら、
    F-35以外は、そのほとんどが「あくまでも追加の調達である」こと。
    大部分が予定調和の上での調達なので、F-35を除くと新規顧客の獲得にはあまり至っていない点は留意すべき点

    33
    • ポン
    • 2022年 1月 09日

    なんかF-16って輸出イケイケなイメージだったけど去年はそうでもないのか
    多くの国が採用したからそれらとの差別化を図るために他機種が伸びたりしたんですかね?

    14
      • ポリバケツ
      • 2022年 1月 09日

      F-16を欲しいような国はどこも既に導入済みってことだね。
      去年の新規発注がなくても輸出イケイケなイメージがあるのはそれだけよく売れた良い戦闘機って証。

      ちなみに、2929機が稼働中で129機が注文中

      10
      • G
      • 2022年 1月 09日

      F-16そのものはコストパフォーマンスも拡張性も良かったため多くの国に売れましたが、F-16Vはその拡張性をあますことなく使い様々な機能を追加した結果、コストパフォーマンスが大幅に低下したのが原因かと
      F-16Vの5世代戦闘機との相互運用性など、中小国には金がかかるだけのオーバースペックな部分が少なくないように思われますし

      5
    • 無無
    • 2022年 1月 09日

    清々しいくらい他人事感高め
    こちとら勝ち負け以前だから、みんな頑張ってるねと素直に誉め称えられるよ

    12
    • sinn
    • 2022年 1月 09日

    前に自民の有志議員が次期戦闘機を輸出しろって言ってたけど、こんな熾烈な戦いの中で勝てる要素がないんだよなぁ。
    ロールス・ロイスとIHIが組んだエンジンを双方が使うなら、価格も抑えられるだろうし、単体のエンジンとしては輸出できるかもしれないけど。

    10
      • 無無
      • 2022年 1月 09日

      そこまで悲観はしないよ、経済状況とか国際情勢で需要は変動するから、タイミングの問題。
      しかし、サーブのやったように、販売ノウハウに長けた海外大手と組んでセールスしないと、防衛省相手の馴れ合い世界しか知らない国内防衛産業に勝ち目はあるまい

      14
        • 幽霊
        • 2022年 1月 09日

        いや無理だろ
        輸出の為に現地生産や部品製造なんかを日本が提案できるか?
        提案したとして日本国内の反発が酷くて成立しないと思うぞ。
        それに完成品だけの輸出に成功したとして輸出先の国で紛争が起きた場合日本はちゃんとアフターケアができるのか?

        17
          • 無無
          • 2022年 1月 09日

          そのために国外企業と組まなきゃ
          国内の法整備だって、いつまでも現状ではない
          ある意味中国のおかげで日本も変化する時期が早まる

          21
            • 匿名
            • 2022年 1月 09日

            そのとおり。
            日本にとって中国は確かに脅威なのだから、平和憲法改正と軍備増強を国内世論に訴えるチャンスなのです。
            別に驚く事ではありません。日本も外国と同じ様な普通の国になるだけのことです。

            19
          • バーナーキング
          • 2022年 1月 09日

          オフセットって別にガチガチの最新軍事技術を移転しなくたっていい訳でな。
          最新戦闘機の主要部品の現地生産なんてアメリカだって共同開発国以外にはほとんど認めてないし。
          売上を現地に投資して民間工場(自動車やその部品やら繊維やら)作る、とかならむしろ得意分野だろ。

          13
      • TT
      • 2022年 1月 09日

      すぐに出来るなんて正直誰も思ってないでしょう。
      でも、やろうとしないことは永久に出来ませんので、国家戦略を確と定めたら後は何十年でも努力するまでですよ。
      今の所そこまで覚悟があるかというと、それが国民的議論になるような国でもないのでなんとも。

      輸出先で紛争が起こったら?しれっと遺憾の意を表明して頬被りをすればなんとかなるでしょう。
      冗談はともかく、以前無無さんが書いていたように、こちらが当該国の政治・軍事オプションに影響を及ぼし紛争をコントロールする側になるのだという積極的な見方も出来ると思います。

      15
    • 無印
    • 2022年 1月 09日

    F/A-18E/Fがインド海軍に採用されたらヴィクラマーディティヤにも搭載されるだろうから、かつてのソ連艦にアメリカ製戦闘機が乗るという夢の組み合わせがあぁぁ
    まぁラファールなんだろうなぁ
    デビュー当時はイマイチ売れなかったけど、地道に営業続けて売れた歌手やアイドルを見てる気分だ

    7
    • 匿名希望
    • 2022年 1月 09日

    ラファール頑張ってるけど、UAEだけで80機も注文をしてるのか

    2
      • 昨日のジョー
      • 2022年 1月 09日

      たぬきってどうやってるんですか?

      9
        • 匿名希望
        • 2022年 1月 09日

        Googleアカウントで設定した画像なんですけど

        もう画像削除してるのにこのサイトでは見えちゃうんですね

        匿名希望なのに…

        2
    • もり
    • 2022年 1月 09日

    ミリオタとしては第4世代機が売れるのは面白いな
    しかし戦闘機販売が好調な世の中、どうなってしまうんだ世界は

    1
      • DEEPBLUE
      • 2022年 1月 09日

      ジャッジメントに問い合わせ殺到でSu57はそうでもないらしいですし、4.5もしくは4.75世代で十分なんでは?

      1
        • 無名のミリオタ
        • 2022年 1月 09日

        チェックメイト

        9
    • ブルーピーコック
    • 2022年 1月 09日

    受注数が少ないとはいえ、チェコのL-39NGが4位とは意外だった。

    3
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