軍事的雑学

2019年ミリタリーニュース10選、米国の次世代空対空ミサイルはペレグリン? AIM-260?

新しい年を迎えてしまったが、今回も航空万能論的に2019年最も印象に残ったミリタリーニュースを10本選び、1つづつ振り返っていく第8回目だ。

※今回の記事は10月25日に掲載した記事の再掲載

米空軍が求めている新空対空ミサイルは「ペレグリン」か?「AIM-260」か?

2020年代中の完成を目指し、全く異なる2つの新型空対空ミサイルが開発されているが、果たして、この2つのミサイルは両方とも米軍に採用されるのだろうか?

米国のレイセオン社は9月、新しい空対空ミサイル「Peregrine(ペレグリン)」の開発を発表した。

このミサイル最大の特徴は、現在使用されている「AIM-120」と同等の性能を維持しながらサイズを半分にした点で、ウェポンベイに空対空ミサイルを収納するF-22やF-35にとって、非常に魅力的なミサイルとなる可能性がある。

レイセオンは、この新型空対空ミサイル「ペレグリン」について「米国と同盟国の戦闘機パイロットが、より多くのミサイルを戦闘に使用できるようになる。小型化されたミサイル本体には、高度なセンサーや誘導装置、推進システムが収められており、これは大きな技術的飛躍だ」と言っている。

問題は、ペレグリンが米空軍の要求によって開発されているものではないと言う点だ。

米空軍はロッキード・マーティン社に依頼し、中国の長射程空対空ミサイル「PL-15(200km以上)」に対抗するため「AIM-120C(105km)」や「AIM-120D(180km)」よりも射程が遥かに長い、新型空対空ミサイル「AIM-260 Joint Advanced Tactical Missile(JATM)」の開発(2021年に試射、2022年に初期運用開始予定)を進めている。

このミサイル最大の特徴は、現在使用されている「AIM-120」と同サイズならが射程距離を300km前後まで延長している点で、これは中国の「PL-15」のみならず、ロシアの「R-37M(ロケットブースター使用時で300km~400km)」や「K-77M(200km)」などの長射程空対空ミサイルに対抗するのに、欠かせないミサイルだと言えるだろう。

引用:raytheon 新型空対空ミサイル「Peregrine(ペレグリン)」

ペレグリンとAIM-260は開発コンセプトが全く異なるため、どちらが優れているのかは運用環境によって異なり、中国やロシアのような長射程空対空ミサイルを保有していない国との戦闘では、手数を増やせる「ペレグリン」の方が優れているだろうし、その逆の場合は「AIM-260」の方が優れている。

しかし、両ミサイルの最も致命的な差は「サイズ」や「射程距離」ではなく開発資金の出所だ。

米軍のミサイル・ロケット命名規則に基づき「AIM-260」と命名されたミサイルを開発しているロッキード・マーティン社には、米空軍から開発資金が提供されているが、レイセオン社の「ペレグリン」は自社資金で開発が行われているため、米空軍の要求性能をストレートに反映しているは「AIM-260」ということになる。

どけだけ優れていても「運用者」である米空軍の要求が反映されていない「ペレグリン」は、完成後の米空軍導入が約束されていないため見通しは不明瞭と言わざるを得ず、手数を増やせる「ペレグリン」の特徴は「AIM-260」を搭載した戦闘機の大量投入で実現できると言われればそれまでで、逆に「ペレグリン」は「AIM-260」の代わりを務めることが出来ない。

結局、レイセオン社の「ペレグリン」開発コンセプトは画期的に見てても、よくよく考えると他の方法で代用可能=唯一無二の性能ではないため、近年、常に予算不足に悩まされている米軍が、わざざわ資金を提供してまで開発するべき代物ではないという見方もできる。

果たして、米空軍はレイセオン社の「ペレグリン」をどのように見ているのだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:storm / stock.adobe.com

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