軍事的雑学

2019年ミリタリーニュース10選、将来の戦場に不適格な「早期警戒管制機」は絶滅種か?

2020年を迎えてしまったが、今回も航空万能論的に2019年最も印象に残ったミリタリーニュースを10本選び、1つづつ振り返っていく第9回目だ。

あと10数年で大型の早期警戒管制機は消えゆく運命か?

米国が他国に対し絶対的な「航空優位」を確保できているのは、航空戦力のステルス化と巨大なレーダーを搭載した早期警戒管制機(早期警戒機を含む)の存在が大きい。

特に、米国本土の支援が届きにくい遠く離れた空域での作戦中、戦闘機や爆撃機が能力を十分発揮出来ているのは、米空軍の早期警戒管制機「E-3 セントリー」や米海軍の早期警戒機「E-2 ホークアイ」の存在によるところが大きいが、その分、運用に掛かるコストも馬鹿にならない。

出典:public domain アメリカ空軍のE-3

高価な電子機器を多く搭載しているので機体価格が高価な上、導入後も性能維持や向上のためのアップグレードにかかるコストも非常に高価で、早期警戒管制機(早期警戒機を含む)を「大規模」に運用している国や組織は米国とNATOぐらいしかなく、この分野では質と量においてロシアや中国を圧倒している。

しかし、この絶対的な「航空優位」を突き崩す兵器が、次々とロシアから現れ始めた。

ロシアは、米国やNATOに著しく劣っている早期警戒管制戦力の差を埋めるため、新型の早期警戒管制機「A-100」の開発を進めており、近い将来、質の面では米国やNATOに追いつくだろうと見られているが、この機体は非常に高価で調達できる数に限りがあるため、数の面での劣勢を縮めることは難しい。

そのためロシアは、欧州における米国やNATOの早期警戒管制戦力を近づけない=アクセス拒否を実現することで不均衡な現実を打破しようと目論んでおり、そのために開発されたのが超長距離迎撃ミサイル「40N6」や極超音速空対空ミサイル「R-37M」だ。

超長距離迎撃ミサイル「40N6」は、ロシアの防空システム「S-300V4」や「S-400」、来年には実戦配備に就く最新型の「S-500」に接続して運用するよう設計されており、射程距離は最大で400km以上、マッハ12以上(マッハ14という説もあり)で飛翔し、水平線下の目標を迎撃するための自律的センサーやデーターリンクを備えている。

出典:Vitaly V. Kuzmin / CC BY-SA 4.0 ロシアの空対空ミサイルR-37

さらに最高速度マッハ6、使い捨てのロケットブースターと連結し発射すれば射程を300km~400km程度まで延長可能な極超音速空対空ミサイル「R-37M」を、戦闘機に搭載し運用した場合、影響を与える範囲は優に1,000kmを超える。

もし、40N6が欧州にあるロシア領の飛地である「カリーニングラード」と、ウクライナから奪った「クリミア半島」に配備し、R-37Mを搭載した戦闘機が欧州との国境沿いを彷徨くようなことになれば、消耗することを前提にしていない米国とNATOの早期警戒管制機(早期警戒機を含む)は、このミサイルの影響圏外へ後退すること余儀なくされる。

そうなれば、米国の絶対的な「航空優位」を支える2つの柱の内、早期警戒管制戦力を排除=無力化することができ、バックアップが受けられないステルス化された航空戦力の効果や威力が落ちるという寸法だ。

出典:public domain アメリカ空軍のC-130

しかも、早期警戒管制下の空域が後退すれば、戦術輸送機の活動空域もそれに合わせて後退しなければならないため、前線を支える地上軍の兵站維持に与える影響は非常に大きく、米国やNATOはロシアの長距離ミサイルの脅威を無力化する方法を発見するか、従来の航空作戦を根本から見直す必要に迫られている。

それを見越しての動きなのかは不明だが、米国では予算の都合上、対地版早期警戒管制機E-8や早期警戒管制機E-3を2023年までに全機廃止することが検討されており、NATOも2035年までにE-3を廃止し、全く新しい手段で置き換えることを表明している。

米国が現在、F-35や無人機のセンサーが取得した情報をリアルタイムで共有(軍全体のネットーワーク化)を進めてるのも、分散したセンサーから得られた情報を統合し、後方から管制を行う=擬似的な早期警戒管制網を構築することを狙っており、NATOもE-3を置き換えるため、米国と同じようなシステムの構築を考えているのかもしれない。

結局、大型の早期警戒管制機という機種は、あと10年ほどで消えゆく宿命なのかもしれない。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Michael Battles

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 1月 03日

    携行対空ミサイルが進化しても攻撃ヘリが無くなってないように、これも無くなったりはしないでしょう
    代替手段が実用レベルで上がってきていない内は特に、危機感も妄想の域を出ないということです

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