軍事的雑学

AIM-120Dではなく、射程の短い「AIM-120C-7」を購入した日本の真意は?

米国防総省は、日本に対し空対空ミサイル「AIM-120 AMRAAM」の売却を承認したと発表した。

参考:Japan – AIM-120C-7 Advanced Medium-Range Air-to-Air Missiles (AMRAAM)

射程の短い「AIM-120C-7」を購入した日本の真意は?

今回、売却の承認が下りたのは、F-35のウェポンベイにも搭載可能な「AIM-120C-7」160発に、保守部品、技術的なサポートプログラム等含まれた、総額3億1700万ドル(約350億円)の契約だ。

米国防総省は「主要同盟国の安全保障を向上させることは、アジア太平洋地域における政治的安定や経済的発展の原動力で、米国の外交政策と安全保障に寄与するだろう。強力で効果的な自衛力の向上と維持を助けることは、米国の国益にとって不可欠だ」と話した。

Attribution: FFA P-16 / CC BY-SA 4.0 AIM-120 AMRAAM

気がかりなのは、今回、日本が購入する「AIM-120C-7」は、米空軍や米海軍でも未だに使用されているが、これは在庫の「AIM-120C-7」を消費するため優先的に使用されているだけで、新規の調達は最新型の「AIM-120D」に移っている。

AIM-120Dは、AIM-120C-7より射程が長いのが特徴で、最大射程は180km(C-7は100km)に達し、最高速度もマッハ4.0まで引き上げられた。さらに双方向データリンク、GPS拡張慣性計測装置を使用した精度の高い誘導が可能な点も、AIM-120C-7から改良された部分だ。

出典:航空自衛隊 F-35A

最新型のAIM-120Dは、F-35で使用されているソフトウェア「block3F」から運用可能になっている。

このAIM-120Dは、米空軍や米海軍だけが調達してる訳ではなく、2016年、オーストラリアはAIM-120Dを450発の売却を米国に要求し、2017年に売却の承認が下りている。

今回、日本政府がAIM-120C-7を160発要求をした時点で、オーストラリアへ、AIM-120D売却承認の情報は伝わっていたはずだ。

それでは、どうして日本は「AIM-120D」ではなく「AIM-120C-7」を選んだのか?

これは日本が現在、導入を進めているF-35Aに搭載すると言う意味もあるが、主な目的はAIM-120の搭載能力を獲得した「F-15J改修機」向けの調達という意味合いが強い。

出典:航空自衛隊 F-15J

米空軍が運用中のF-15Cは、搭載レーダーを「AN/APG-63(V)3」にアップグレードし、AIM-120DやAIM-9Xの運用能力を獲得しているが、日本の「F-15J改修機」に、AIM-120Dの運用能力があったとしても、搭載している「AN/APG-63(V)1」の探知距離では、射程180kmのAIM-120Dを活かすことが難しい。

AIM-120Dの運用能力があるF-35Aを装備した「第302飛行隊」が正式に発足したばかりで、とりあえずF-35とF-15J改修機で使用可能なため無駄になりにくい「AIM-120C-7」を調達しつつ、日英共同開発中の「新型空対空中距離ミサイル」開発が上手く行けば、これを導入し、開発が上手く行かなかった場合、AIM-120Dを導入する腹づもりではないだろうか?

補足:新型空対空中距離ミサイルとは、英国のMBDA社が開発した「ミーティア」空対空ミサイルを、F-35のウェポンベイに搭載出来るようサイズを見直した「JNAAM」に、日本が開発したAAM-4B空対空ミサイルのアクティブ・レーダー・ホーミングシーカーを搭載するというもの

一見、これは賢い判断のように見えるが、急速に能力を向上しつつある中国軍の様子を見ると不安がないわけではない。

まず、新型空対空中距離ミサイルの開発には時間がかかり、試作ミサイルの試射が2023年度に行われることになっているため、仮に開発が順調に進んでも、新型空対空中距離ミサイルが実用化されるのは、2020年後半以降だ。

Attribution: emperornie / CC BY-SA 2.0 ステルス戦闘機J-20

中国軍のステルス戦闘機「J-20」が装備している、「AIM-120D」をも上回ると言われる長射程の空対空ミサイル「PL-15」に対し、恐らく10年程度、射程の短い「AIM-120C-7」で対抗すると考えると、無駄になっても良いので、AIM-120Dを早急に導入すべきだ。


果たして、射程の短い「AIM-120C-7」を購入した日本の真意はどこにあるのだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:pixabay

関連記事

  1. 軍事的雑学

    米空軍は大型爆撃機が足りない?ステルス爆撃機「B-21」追加調達、B-1、B-2退役延期を求める

    MITERは米国政府から提供される資金によって、政府機関のサポートを行…

  2. 軍事的雑学

    軍事的雑学・知ってたら凄い|「超弩級戦艦」の由来を知ってる?

    戦艦大和も、戦艦長門も、戦艦金剛も、さらにイスカンダルまで行った宇宙戦…

  3. 軍事的雑学

    F-35Bと小型空母・強襲揚陸艦の組合せが人気!オーストラリアのF-35B導入議論

    STOVL(短距離離陸・垂直着陸)タイプのF-35B実用化で、カタパル…

  4. 軍事的雑学

    軍事的雑学|敵魚雷を魚雷で撃つ?潜水艦の未来に革命を起こす『魚雷迎撃用魚雷』が開発中!

    米海軍が、向かってくる魚雷を、小型魚雷で迎撃するため本腰を入れたようで…

  5. 軍事的雑学

    軍事的雑学|「F-35」と旧式化した空対空兵器「AIM-120」で、中国のステルス機に対抗可能か?

    米国を中心とする西側諸国が運用を始めた、第5世代ステルス戦闘機「F-3…

  6. 軍事的雑学

    軍事的雑学|遂に始まった!Google Earthが捉えた中国ステルス戦闘機「J-20」実戦配備の実…

    中国空軍が、ステルス戦闘機『J-20』を作戦部隊に配備したと発表したが…

コメント

    • 匿名
    • 2019年 5月 23日

    予算がないんでしょうね
    イージスアショアも妙にケチってデータリンクしないみたいですし

    • 匿名
    • 2019年 5月 26日

    AAM‐4の存在を忘れてませんか?

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

最近の記事

関連コンテンツ

PAGE TOP