軍事的雑学

防衛省、海上自衛隊が装備する救難飛行艇「US-2」の後継機検討に着手

防衛装備庁は、海上自衛隊が装備する水陸両用機の救難飛行艇「US-2」後継機開発のため「技術検討役務」を公示し、これに応募する企業を募っている。

参考:令和元年度海上自衛隊が使用するUS-2型航空機及び後継機開発に関する技術検討役務の契約希望者募集要領

防衛省、US-2型救難飛行艇の後継機開発へ動く

海上自衛隊が装備している「US-2型救難飛行艇」は、新明和工業が開発(実質はUS-1の改造機)した大型の水陸両用機で、主に海洋での救難や離島などで発生した急患を輸送する用途として使用しており、海自はこれまでも対潜哨戒機「PS-1」や救難用途に特化した「US-1」と言った飛行艇運用を一貫して継続しており、もはや「伝統」と言っても良い。

この伝統は海上自衛隊の前身である「日本帝国海軍」から続くもので、飛行艇の開発も新明和工業の前身である「川西航空機」から続いている関係性を持つ。

川西航空機が初めて製造した飛行艇は、昭和7年に日本海軍に制式採用された「九〇式二号飛行艇(H3K1)」で、これは英国のショート社が開発した「KF型飛行艇」を国産化したもので、設計や技術的に大きな影響を川西航空機に与えた。

出典:public domain 展示される二式飛行艇:鹿屋航空基地史料館

この「九〇式二号飛行艇(H3K1)」は、広海軍工廠(広廠)が開発した「八九式飛行艇」や「九一式飛行艇」と比べても遜色がなく、非常に性能が良かったと言われており、同機の成功が後の「九七式飛行艇」や世界最高(開発当時)の性能を誇った「二式飛行艇(通称:二式大艇)」に繋がり、ここで培われた技術や経験は戦後、新明和工業へと受け継がれて行った。

現行の飛行艇「US-2」は時速100km程度の低速域で離水可能な上、波高3mの海面へ着水することが出来るので、海上の気象条件が整わず着水不能=任務が達成できないケースが「US-1」に比べて大幅に減るなど、飛行艇としての離水着水能力は世界最高レベルと言っても過言ではないが、問題は量産数が少なく価格が高価過ぎる点だ。

対潜哨戒機(P-1:約200億円)や早期警戒機(E-2D:約260億円)などは高度なアビオニクスを搭載しているため高価になりがちだが、救難用途の「US-2」は対潜哨戒機や早期警戒機などと比べると簡素なアビオニクスしか持っていないにも関わらず1機あたり約100億円もの費用が必要で、US-2に関心を持つ国はあっても価格がネックとなって輸出が実現しないため価格が下がらず、価格が高いので輸出も出来ないという連鎖に陥っている。

しかし今回、防衛装備庁が「US-2」後継機開発のための「技術検討役務」を公示したということは、海上自衛隊が今後も飛行艇の運用を続けていくという意志の現れであり、恐らく「US-2」後継機として開発される新型飛行艇は「US-2」の性能を維持しつつ、量産数を増やす=海外輸出を前提にコストダウンを図り、民間用途として使用しても「US-2」の着水能力が十分発揮できるよう改良が施されるのではないだろうか?

出典:海上自衛隊 US-2

補足:US-2を民間で運用するには、航空機の設計が安全性及び環境適合性の基準を満たしていることを証明するため形式証明を取得する必要があり、これを取得すると着水時の進入速度に制限が付き、世界最高レベルの荒海着水性能が活かせなくなるというジレンマを抱えていた。

この「技術検討役務」に応募するには、US-2の設計や構造、性能に関する知識や技術を持っていることを求められており、事実上、US-2の機体を開発した新明和工業(主契約)しか適任がいないと言っても良い。

恐らく、新明和工業がUS-2後継機開発のための「技術検討役務」を請け負うことになるだろう。

少し先の未来に完成するであろう「次世代飛行艇」は、私達にどのような姿を見せてくれるのだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:海上自衛隊 US-2

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コメント

    • 全てF-35B
    • 2019年 11月 22日

    離島交通に有効だとおもうのだが、何故活用されないのか?

      • 匿名
      • 2019年 11月 23日

      では君のポケットマネーで100億だしてくれたまえ。もちろん運用費飛行機以上だがいいよな。

      • 匿名
      • 2019年 11月 23日

      不思議なことに、田舎や離島ほど「空港」を欲しがる。百~千億円単位の金かけて山や丘を削り、海や畑を埋め立てて空港を作る。その維持費も補助金に頼る。しまいに航空会社に補助金支給して空路を維持してもらう。旅客機型飛行艇の購入と維持に補助金出す方がはるかに安上がりだと思う。数が増えれば機体も部品も価格が下がる。自然破壊も避けられ、空路の廃止も簡単。

      • 匿名
      • 2020年 3月 22日

      あの、最初から民間旅客機として設計されている三菱のMRJですら型式認定が取れないのに、軍用機として設計されたUS-2が型式認定が取れるわけがない。

      だから、民間で営業路線には使えないよ。

    • H氏の遠い親戚
    • 2019年 11月 22日

    この機体のSTOL 性能を活用して、まず、陸用機としてみては?。「強風」「紫電」「紫電改」・・・・。

      • 匿名
      • 2019年 11月 23日

      やっぱ、そっちを夢見たいよね。
      双発陸上機にすれば、ボンバルディアの8型に代わる機体になるかと思う。

    • 匿名
    • 2019年 11月 22日

    コイツは極端な話、海上を飛んでる限り墜落しないから良いな
    主翼が折れるか胴体に亀裂が走るかでも無い限りなんとなく死ななそうだ

    • 匿名
    • 2019年 11月 23日

    下品なイタリアンレッドに塗ろうぜ!!

      • 匿名
      • 2019年 11月 23日

      痛US-2 ( >д<)、;'.・

    • 匿名
    • 2019年 11月 23日

    昔、厚木にランディングするUS-1をよく見たけど正面と横からで印象が違うあの独特のフォルムは中々魅力的

    • 匿名
    • 2019年 11月 24日

    新明和工業での技術の継承の為の新規発注ってだけでは?
    新造を発注しないとね。
    US-2は7艇でしたっけ?(試作1号、2号を含む)

    世界でも飛行艇の需要は少ないから大量発注は無いのでは?
    確かに飛行場が不要って利点はあるけど、メンテ費用が嵩むから、発展途上国では運用・維持が厳しい
     後、民間用(つまりは民間機として運用する認証を取るには)「着水時の進入速度が失速速度の130%に制限されSTOL性能を活かした荒海着水が不可能」by wiki (航空ファンが出典)なので、荒れた海への着水能力をアピールできない

    • 匿名
    • 2019年 12月 18日

    結局インドへ輸出はの話しは流れたんかな

    金持ちインド相手なのに金は日本が貸してインドへ技術移転までさせられるなんかバカバカしい取引だけど・・・
    あーおまけに軍で使うから救助艇以外の用途でも設計しろって言われてるね
    しかし輸出実績欲しさに技術移転して大丈夫なんかね  

    • 匿名
    • 2020年 3月 05日

    結局、今の設計では量産しても余り価格が下がらないってことなんでしょう。
    どうせ量産しないし、性能追及で…。なんて前提で作ったのかな。

    • 匿名
    • 2020年 3月 28日

    カナダの飛行艇は10億円ですからねー
    そっちかっちゃいますよねー

    • 匿名
    • 2020年 6月 10日

    エンジン馬力をもう少し欲しいな。6000馬力程度あれば申し分ない。
    ペラも6枚翅で無く、E-2Dアドバンスド・ホークアイのような8枚後退翅で空気抵抗少ない最新型にして欲しい。

    • 匿名
    • 2020年 6月 16日

    昨年夏の幕張の浜で見た着水・離水が想像以上の低速で、あのサイズと相まってかなり非現実感たっぷりでした。まるで飛行船の様な速度感で、エアレーサーとの対比が面白かったです。こういう飛行艇有った方が面白いのに。(面白いだけでは製作・維持できないのだろうけど)
    東京湾での離着水はもう見れないですかね・・・。

    • 匿名
    • 2020年 7月 27日

    作るでしょう。
    本来、目立ちたがりのテレビキャスターと盲人ヨットマンを救出するためでなく、将来の在日米軍司令官や未来の統合幕僚長、つまり高い金銭と時間をかけて養成した自軍パイロット救出のためにある航空機なのだから海洋国家である以上日本が開発し続けるしかないと日本人は考えなくてはいけないし、この分野はお任せすると米軍も考えているでしょう(金は出さないけど)。

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