軍事的雑学

軍事的雑学|韓国の4.5世代戦闘機「KFX」開発で問題発生?韓国とインドネシアが揉める理由

韓国の4.5世代戦闘機開発計画「KFX」事業の共同開発のパートナーであるインドネシアが、現在の契約は不利だと主張し、契約内容の再協議を要求していると言う報道が出ています。

参考:韓国次世代戦闘機事業に参加したインドネシア、契約条件の再協議要求

インドネシアの「KFX」共同開発の条件見直し要求

中央日報の報道では、インドネシア現地の「ガルド・ナショナル」の報道を元に、韓国型戦闘機「KFX」の共同開発パートナーのインドネシアが、共同開発の条件が不利だとして、韓国側に条件の見直しを求め再協議を始めたと言う内容です。

Attribution: Alvis Cyrille Jiyong Jang (Alvis Jean), KFX-2017SeoulADEXMiniature.jpg / CC BY-SA 4.0

インドネシが韓国側に要求した条件は、開発費の負担割合(開発費の20%、1兆7338億ウォンを負担)を引き下げ、技術移転される技術量を増やし、インドネシアがIKFを輸出する権利を要求していると言っています。

捕捉:IFX(インドネシ型戦闘機)とは、KFXのインドネシア版のこと。

韓国としては、現在の共同開発の条件でさえ、開発費の負担割合に合わない、インドネシア側へ大きく譲歩した内容という認識なので再協議がまとまるのか?韓国国内の反応としては、もう共同開発をやめて、韓国の単独開発にしろという声は多く上がっています。

しかし現在の韓国政権、ムン・ジェイン大統領が進める経済政策「新南方政策」において、ASEAN最大の人口(約2億4000万人)を擁するインドネシアとの関係は重要で、2017年の首脳会談で両国関係を「戦略的パートナー関係」から「特別戦略的パートナー関係」に格上げすることで合意。

捕捉:新南方政策とは、インドや東南アジア諸国との経済協力を強化させ、これらの国々との交流・協力関係を米国・中国・日本・ロシア並みに強化・拡大させるという経済政策のこと。ムン・ジェイン大統領曰く、「韓国経済の新たな突破口」だそうです。

また「外交・国防閣僚会議(2プラス2)」を新たに設置し、共同事業の戦闘機開発や防衛産業分野で両国が持続的に協力することにしました。

もし、インドンシアとの韓国型戦闘機「KFX」共同開発が頓挫すれば、ムン・ジェイン大統領が進める「新南方政策」にとって大きな打撃になるので、条件の見直しを求める再協議で、さらなる譲歩を行うかもしれないという予測も無くない話です。

 

そもそもKFXは、F-16程度の戦闘機を開発する計画だったのに・・・

では、インドネシア側がなぜ共同開発の条件が不利だと考えたのか?

その経緯を簡単に説明します。

出典:Pixabay

当初、KFXとは「F-16戦闘機」程度の戦闘機を韓国国内で開発しようという計画でした。

金大中政権時(2002年)に計画が立ち上がり、2005年頃にこの計画の妥当性を検討した結果、韓国単独の需要だけでは難しいという結果になり、国際共同開発を模索します。

要するに、韓国空軍が購入する数量だけでは、1機あたりの価格が高価(開発の回収のための上乗せ)になり、これでは国内開発する意味がないということ。

そのため国際共同開発という名ばかりの「KFXを購入してくれる国」を探して、KFXの生産数を増やす必要があるという話です。

そこで韓国が声を掛けたのがトルコとインドネシア。

トルコは結局、単独での戦闘機開発を選択肢し、韓国との共同開発を断りますが、インドネシアは韓国との共同開発の話に乗り、2009年に共同開発の覚書にサインします。

ここで大切なのは「KFXとは“F-16戦闘機”程度の戦闘機を開発する」という話だったと言うこと。

 

最初の話とは異なり、4.5世代機になったKFX

韓国は、インドネシアの参加でKFXの妥当性の確保が出来たとして、KFX開発計画を進めて行きますが、ここから迷走が始まります。

当時の政権、李明博大統領がこの計画に乗り気ではなく、中々計画に予算を与えません。そのため細々と研究だけが続けられて行きます。

一応、2010年にはインドネシアとKFX共同開発協定書の調印までは進みますが、予算のつかないのKFX計画は進みません。

出典:Pixabay

そして時が流れ、朴槿恵政権になり計画は動き出します。

朴槿恵政権時に次期戦闘機導入計画があり、紆余曲折の末にロッキード・マーティンのF-35導入を決定。

この時、韓国側はF-35導入条件に、KFX開発のための技術移転をロッキードに要求しました。一応、ロッキードはこの要求を受け入れますが、後に米国政府が介入し、大半の技術移転がダメになりました。

補足:韓国はF-35の技術移転の他に、通信衛星1基を無償で、さらにロッキード・マーティンの費用負担で打ち上げてもらう約束になっています。今年打ち上げ予定。

それでも、一部の技術がロッキードから提供されることになり、KFX計画が一気に動き出します。

当初、「F-16戦闘機」程度の戦闘機を開発するという目標は、いつの間にか第4世代機と第5世代機の中間程度の、第4.5世代機を開発するという目標に変わってしまいます。

インドネシアは、F-16のライセンス生産権を持っている韓国が、「F-16戦闘機」程度の戦闘機を開発すると言ったので共同開発の話に乗りました。それなのにF-35の技術を取り入れた第4.5世代機開発なんて話は聞いていません。

補足:韓国はF-16C/Dのライセンス生産権を取得し、サムスン航空(現在の韓国航空宇宙産業、KFXを開発しているのもこの企業)で140機を生産した。

米国がF-35の技術が入ったKFXをインドネシアに売る事を許可するのか? 技術移転を許可するのか? インドネシアでの生産が出来るのか? と計画を危惧する勢力がKFX共同開発の正式参加に抵抗しますが、結局、2015年に正式な契約に調印してしまいます。

契約内容は、インドネシアは開発費8兆8304億ウォンの20%を負担し、試作機1機、各種技術資料、インドネシア技術者の派遣、完成したKFXをインドネシアで50機生産するという内容です。

 

インドネシアが要求した再協議の狙い

いよいよKFXの開発が始まりました。が、直ぐに問題が発生します。

昨年(2018年)インドネシアは分担金の支払いをストップします。しかも韓国に派遣した技術者40人全てを引き上げさせました。

インドネシア側の説明によれば「派遣先の韓国航空宇宙産業(KAI)が、技術者に対して給与を支払わなかったため」と話し、韓国側は「インドネシアが分担金を支払わなかったので、技術者に給与を与えられなかった」と説明しました。

元々、インドネシアは、韓国がライセンス権を持つF-16の技術を学びたいと思っていたのに、F-35の技術を取り入れたKFX開発にインドネシアが派遣した技術者が、まともに技術を学べなかったのではないかと予想されます。

そして今回の報道にあった契約内容の再協議要求、これまでの経緯を考えると話は見てきます。

インドネシア現地の「ガルド・ナショナル」が実際なんと言ってるのか?再交渉でインドネシアが要求すると報道された内容は以下の通り。

  1. 既存の契約条件(負担金以外の全項目)を維持しながら分担金の引き下げ。
  2. 分担金支払い期限を2031年まで延長
  3. インドネシアの技術者が129の戦闘機技術を習得出来るよう契約内容を修正
  4. 負担した分担金の割合に応じた知的財産権の確保
  5. インドネシアがIFXを輸出する権利の確保
  6. IFXを16機導入、残りは状況に応じて導入を決定する

最初の契約内容が不明なので確定的なことは言えませんが、分担金の引き下げ、より多くの技術移転・知的財産権・IFXを輸出する権利を要求、50機導入の約束を16機に削減と言った感じ。

特に注目されるのは、インドネシアがIFXを輸出する権利の確保。

元々、インドネシアが第3国にIFXを輸出するには、韓国政府の同意が必要という条件で合意していました。今回要求している「IFXを輸出する権利」とは、韓国政府の同意が必要ない権利の事を意味しています。

もしこれを認めれば、韓国は人件費の面で、インドネシアが製造するIKXに価格で対抗することが出来ず、もし海外輸出の可能性があっても全てインドネシアに持っていかれる事になります。

きっと再交渉の本丸は③と④の気がします。

“きちんと技術をよこせ!”と、インドネシアは言いたいのでしょう。

特に⑤と⑥は、交渉のための譲歩要員のような気がします。交渉の結果⑤と⑥の要求は取り下げるので、③と④を認めろという感じ。

果たして、再交渉の結果は・・・ 気になりますね(笑)

 

長くなりましたが、KFXに関する韓国とインドネシアの状況は、現在この様な感じになっています。

また動きがあれば記事にしてみようと思います。

 

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 3月 28日

    真面目に当初の予定通りやってりゃ、少しはマトモなモノが出来たろうし、日本にとっても脅威だったのに、バカだねー。

    記事お疲れ様です。

    • 匿名
    • 2019年 3月 28日

    LMが提供する通信衛星(※1)は「タダ」ではありません、FMCにおけるオフセット契約(※2)であり、有料です。 25%ぐらいまで許可されてます。要は発展途上国の政府が要求してるリベート対策です。
    この軍事津信衛星のお値段 21億3000万ドル(約2兆4900億ウォン)は上乗せして請求されます。

    F-16C/D Block50/52相当(概要は日本語wikiにもでてる)はノックダウン生産しましたが、生産できる権利は「機数」が設定されています。 インドのF-16(F-21)も設定されています。 また、どうもてもKD生産なので技術は・・・。
    このKDはサムスンの軍事部門がやりました。 だけど仕事が無くなるのでKFXを提案したって経緯があります。 周知の様に韓国の色々な企業がやっていた航空宇宙の事業はKAIに統合されました。

    インドネシアの件は別の見方をすれば
    1、失敗が判ったので、この交渉(インドネシアは80名のスタッフをKAIに派遣してる、ペーペーでも進行状況は判るでしょう)
    現在、Blcok1ではアメリカのミサイルが搭載されない事は確定、AESAレーダー、21の技術移転の状況は不明
    2、インドネシアへのアメリカの武器禁輸(テロ支援国家)が少し緩まり、持ってるF-16の改修をやってる(アメリカに発注)ので、2006年頃と状況が違って来ており、アメリカ以外からの武器輸入って保険の意味合いが違ってきてる。

    • 匿名
    • 2019年 3月 28日

    (※1)
    静止軌道の通信衛星、
    現在は軍事・民間(KT)で共用してる「ムグンファ5号」上で動かしてる
    ANASIS「衛星を利用した陸及びて及び空軍合同指揮統制用群通信システム」を動かす専用の衛星。 ムグンファ5号の軍事の通信はKaバンド・SHFバンドを計36本/軍用 ソウルの地下のKTの光回線の交換室が火事になった時に不通になった軍事通信システムです
    (※2)
    英語のwikiなどに載ってます
    FMC契約をした企業(この場合はLM)が相手国の企業(これは全く別の事業で良い)と行う事業がOffset事業

    • ななし
    • 2019年 3月 29日

    記事タイトル
    インドネシ「ア」が抜けてますよ!

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