軍事的雑学

軍事的雑学|F-35Bを搭載すれば空母?米海軍が強襲揚陸艦の空母化をテスト中!

現在、米海兵隊は、フィリピン軍との共同訓練で「Lightning Carrier」という概念をテスト中だ。これは米海軍の強襲揚陸艦「ワプス」に、米海兵隊のF-35Bを10機以上搭載し、小型空母として使用できるのかテストしている。

通常、強襲揚陸艦にはF-35Bが6機程度しか搭載していない。もし強襲揚陸艦に搭載されたMV-22や、AH-1Z等、全ての回転翼機を降ろし、F-35Bを搭載すれば20機前後搭載できると言われている。

参考:US Amphibious Ship Tests New ‘Carrier’ Mode in Drills With Philippines

強襲揚陸艦の小型空母化は、良いアイデアに見えるが問題が多い

1つ目の問題は、強襲揚陸艦は特有の設備が無駄になる。

出典:public domain ワスプ級強襲揚陸艦

強襲揚陸艦の後部にはウェルドックがあり、ここにはLCAC-1級エア・クッション型揚陸艇が3隻搭載してある。さらに1個海兵遠征部隊(約1000名規模)を収容できるだけの施設やスペースがある。

もし小型空母として運用したとしても、このスペースにF-35Bが搭載出来るわけでもなく、ただのデットスペースになるだけで、4万tを超える強襲揚陸艦に20機程度のF-35Bしか搭載できないというのは、運用コスト的(人件費や燃料費)に無駄が多い。2万t程度の軽空母「カブール」の場合、F-35B12機に加え、各種回転翼機を8機搭載できる。

2つ目の問題は、正規空母に比べ、強襲揚陸艦は固定翼機の運用効率が良くない。

出典:public domain 空母ハリー・S・トルーマンの飛行甲板。

カタパルトとアングルデッキを装備した空母の場合、最大3機の発艦を同時にこなせる。カタパルトもない直線の飛行甲板を装備した強襲揚陸艦では、1機づつ発艦を行わなければならない。

仮に両者がF-35Bの発艦を3分毎に行えるとしても、9機の発艦に掛かる時間は、正規空母の場合は9分掛かるが、強襲揚陸艦の場合は27分も掛かることになる。

3つ目の問題は、米海兵隊はF-35BをSTOVL(短距離離陸・垂直着陸)方式で運用している

これは発艦する際、F-35Bに搭載されたエンジン「F135-PW-600」の排気口を斜めしたに下げ、胴体中央に装備されたリフトファンも併用し短距離離陸を行い、着艦はリフトファンを使用しながらエンジンの排気口を完全に下向きし垂直着陸を行うので、非常に限られたスペース・設備で運用するのは有能だが、F-35Bにとって一番負荷の掛かる運用方法で、作戦半径と搭載量に大きな影響を及ぼしている。

恐らく米海兵隊が強襲揚陸艦で運用しているF-35Bは、英国海軍のスキージャンプ台を使用した発艦・斜方降下着艦のF-35Bに比べて、兵器搭載量もしくは燃料搭載量が10%から15%ほど少なく、着艦する際には大量の燃料を消費するだろう。

 

海兵隊のF-35B運用は近接地上支援に特化している

そもそも米海兵隊は、米海軍の正規空母が制空海権を確保している前提で、強襲揚陸艦を上陸地点から数十km沖合まで接近させ、LCAC-1級エア・クッション型揚陸艇や、MV-22で上陸部隊を送り込み、これの部隊を空から支援するためF-35BやAH-1Zを運用している。

米海兵隊がF-35Bに求めているのは、近接地上支援だ。強襲揚陸艦の設備はそれに特化している。

出典:public domain 垂直着陸中のF-35B

F-35Bは空対空任務や、地上目標への攻撃任務にも対応出来るようには作られているが、それを効率よく、最適化した形で運用できるように強襲揚陸艦の方が出来ていない。

正規空母の補助として使用しても、海軍が正規空母で運用するF-35Cに作戦半径も兵器搭載量も劣る上、海兵隊のパイロットが日頃訓練(近接地上支援)している内容とは、全く異なる任務(制空任務、地上攻撃任務等)へ投入された場合、一体どれほどの効果を生むのか未知数だ。

最大の致命傷は、まともな航空支援機(E-2早期警戒機、EF-18G電子戦機等)の運用が出来ないこと。

現代の航空作戦において、航空支援が受けられないということは、非常に原始的な航空作戦に回帰することになる。

 

強襲揚陸艦のF-35Bを載せただけでは絵に書いた餅

結局のところ、軽(小型)空母と強襲揚陸艦はサイズ的にもデザイン的にも類似しているため混同しやすいが、これは全く別物だ。軽空母で有名なイタリアの「カヴール」や、英国の「インヴィンシブル(退役済み)」などは、STOVL機の性能を最大限発揮させるためスキージャンプ台を装備しているが、強襲揚陸艦にはそういった航空機の発艦・着艦を支援する装備が欠けている。

この程度の大きさで運用可能な航空支援機が殆どないというのも、軽空母や強襲揚陸艦の航空作戦を限定的にしてしまう要因だ。世界を見回しても、早期警戒ヘリが1機種あるぐらいで、これは英国が30年以上のフォークランド紛争中に、慌てて開発した「シーキングAEW」しかない。

出典:pixabay

現在、英国は新しく就役した空母「クイーン・エリザベス」のために、V-22「オスプレイ」をベースにした早期警戒機の開発を検討している。

もし米海軍が、強襲揚陸艦の小型空母化というコンセプトを実用的なレベルで実現させるには、現在建造しているアメリカ級強襲揚陸艦の設計を見直し、V-22「オスプレイ」をベースにした早期警戒機、電子戦機、空中給油機の開発が必要になる。

そうでなければ絵に書いた餅でしかない。

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain アメリカ級強襲揚陸艦

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 4月 16日

    空母打撃軍がお高すぎるんがねぇ…
    一つ揃えるお金で3、4つ遠征打撃軍が組めるなら、強襲揚陸艦で賄いたいって流れになるのは仕方ないネー

    • 匿名
    • 2019年 4月 19日

    小型空母と比べて強襲揚陸艦が鈍足というのも合成風力があまり得られないので大きな足かせになるな

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