軍事的雑学

大型の早期警戒管制機は時代遅れ? NATO、2035年までに「E-3 セントリー」廃止

NATO(北大西洋条約機構)は、2035年までに早期警戒管制機「E-3 セントリー」を廃止し、新しいプラットフォームに置き換える計画を発表した。

参考:NATO Secretary General Jens Stoltenberg at the NATO Industry Forum, Washington D.C.

もはや大型の早期警戒管制機は時代遅れか?

NATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は11月14日、2035年までにNATOが保有する米国製の早期警戒管制機「E-3 セントリー」を廃止し、新しいプラットフォームに置き換える計画を発表したが、この「新しいプラットフォーム」は、E-3のような大型の早期警戒管制機でなく、新しい技術を採用した全く別の手段になる。

出典:Public Domain 早期警戒管制機 E-3

現在、米国やNATOの早期警戒管制機「E-3 セントリー」は、ロシアの長距離空対空ミサイルR-37Mや地上に配備された防空システムで運用する「40N6ミサイル」の脅威に晒されており、従来通りの敵航空機探知や航空管制を前線に近い空域で実施するのが困難なると予想されているためだ。

極超音速(最高速度マッハ6.0)で飛翔する長距離空対空ミサイルR-37Mは、使い捨てのロケットブースターと連結すれば、最大400km前後の射程距離を持っていると見られ、このミサイルを戦闘機に搭載し運用すれば、その脅威の範囲は1,000kmを超える。

出典:Vitaly V. Kuzmin / CC BY-SA 4.0 ロシアの空対空ミサイルR-37

40N6ミサイルは、ロシアの防空システム「S-300V4」や「S-400」、最新型の「S-500」に接続して運用するよう設計されており、射程距離は400km以上、マッハ12以上(マッハ14という説もある)で飛翔し、水平線下の目標を迎撃するための自律的センサーやデーターリンクを備え、西側の早期警戒管制機や空中給油機など価値が高く、機動性の低い大型機を遠方から撃ち落とすことを狙っており、何らかの対策が求められていた。

NATOのストルテンベルグ事務総長は、早期警戒管制機「E-3 セントリー」の代わりとなる「新しいプラットフォーム」について、自律システム、人工知能、ビッグデータなど含む新しいテクノロジーを利用したものになると説明するにとどまり、具体的にどのようなシステムになるのかは謎だ。

海外メディアは、早期警戒レーダーシステムを搭載し自律飛行が可能な無人機や、地上配備型のプラットフォーム(要するにレーダー)、敵のレーダーに補足されにくい「ステルス早期警戒管制機」開発の可能性を挙げているが、どれも問題がある。

早期警戒レーダーシステムを搭載し自律飛行が可能な無人機は、E-3の無人機化であり、リスクの高い空域で活動し、万が一撃墜されても人的損失はないが、高価な機材が失われることに変わりがなく、地上配備型のプラットフォームは、センサーカバレッジの面でE-3より不利なのは明らかで、ステルス早期警戒管制機という案は、もはや奇跡でも起きない限り実現不可能だ。

敵機を探知するために強力なレーダーを使用する早期警戒管制機を、どのようにステルスさせるのだろうか?

結局、小型無人機に、早期警戒レーダーよりも小型で安価なレーダーを搭載し、数十、数百という数で大規模な早期警戒ネットワークを構築するのが最も現実的な手段だろう。

米空軍もE-3に頼らない早期警戒管制網の構築を実験中

米空軍は今後5年間の予算から約300億ドル(約3兆2,000億円)を削減し、将来の新しいプログラムへ投資するため、早期警戒管制機「E-3 セントリー」を含むレガシーな航空機を2023年までに廃止するかもしれないと報じられており、米国からもE-3が姿を消す可能性がある。

米空軍は次世代の早期警戒管制機を開発しておらず、その代わりにF-35や無人機をネットワークで繋ぎ、収拾した情報を高高度を飛行するU-2で中継、後方の司令部に伝達することで疑似的な「早期警戒管制網」の構築実験を行っており、恐らくE-3のような大型の早期警戒管制機は不要だと考えているのかもしれない。

出典:航空自衛隊 E-767 504号機

日本は現在、E-3に匹敵する大型の早期警戒管制機「E-767」と、米海軍が空母で運用している早期警戒機「E-2」を運用中で、国産の対潜哨戒機「P-1」をベースに早期警戒機を開発する構想があるが、米国やNATOの動きを見ると、日本も安価な無人機による「早期警戒管制システム」構築を行ったほうが良いのかもしれない。

幸い、日本は次世代戦闘機「F-3」の開発を行うので、無人機とF-3のセンサーで収拾した情報をネットワークで連結すれば、日本独自の疑似的な「早期警戒管制システム」を構築できるかもしれない。

 

※アイキャッチ画像の出典:Public Domain NATO軍の早期警戒管制機 E-3

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 11月 18日

    E-767が買えないところは航続距離が半分になりますが、E-737 AEW&Cにリプレースするのが順当でしょう。
    ただし、一部パーツの製造ラインが閉じているようなのでこの先安定して供給できるか不安なところはありますね。

    究極は無人機でしょうが、機体の運用上、電波を送受信し続けなければならないので電波妨害に脆弱ですし、自律飛行できても地上オペレーターに情報を送れなければ意味が薄いので、安価、大量生産できる機体でないと難しいでしょうね

    • 匿名
    • 2019年 11月 18日

    これって、擬似的にAWACSと同じレーダー波を発信する無人機とかを複数用意してAWACSには受信だけさせてマルチスタティック運用すれば発見されず撃たれる事もないのでは?
    そして電波発信用無人機自体にはステルス機を使い、狙われたら発信を止めればステルス化するし複数で運用するなら1機は止めても問題なく、広域に展開する複数のレーダー発信機をロシアが同時に全て迎撃出来るとも思えない上に貴重な大型ミサイルを無駄撃させて消耗も狙える。
    むしろ敵のAWACS狙いを逆手にとって腹に大型ミサイルを抱えた電子的に丸見えの敵機を七面鳥撃ちに出来るのでは?

      • me2
      • 2019年 11月 19日

      素晴らしいアイディアですね。
      これなら今すぐにでも実用化できそうですね。
      しかも敵のステルス機探知も出来るMIMO(マイモ)レーダーも実現できるかも知れません。
      実験機のX-2を改良してAESAレーダーの送信部と同期システム+自立航行システムを取り付ければ、無人のX-2がステルスレーダー送信端末になるでしょう。
      複数のX-2機で運用すればレーダー受信機を地上配備型にしたMIMOシステムだって可能に思えます。
      敵の攻撃は低価格の長距離ミサイルを別に開発し、敵に最も近い位置の移動ランチャーから誘導で飛ばせば良いでしょう。

    • 名無しさん
    • 2019年 11月 18日

    多数の無人機で早期警戒任務を行うことは技術的に可能だし、合理的だと思います

    • 匿名
    • 2019年 11月 18日

    ・レーダードームの大きさ(E-7676/E-3は全方向で同じ感度があるけど、韓国/豪州など買ったがアメリカ空軍は採用していないE-737)は横方向と前後方向で感度が違う
    ・解析機器の能力、ひいてはそれを動かす電力を考えたら、小型機/無人機の集合体で代替は無理では? 要求仕様を分割して、特化した探査能力だけを小型機/無人機で実現するっての有りだとは思うけど。

    E-737は・・・・
    アメリカ軍が採用していない兵器は購入してはいけないって常識がある(アップグレードパスが無い、自らがアップグレードを開発する必要があるから)
    豪州は2017年頃に独自に(勿論、アメリカの機器の会社と一緒に)アップグレードする事を発表してるけど、できるの?
    普通は(この手の、少数だけで運用する兵器では)、購入時にライフタイムをカバーできるだけの予備機器(737の機体部品では無く、搭載してる電子機器のほうね)を調達するのが常識だけど、韓国にはその常識が無く、いつもの韓国として予備機器をほとんど購入していない、生産ラインのランクが落とされて納期が2年とか、長期に変わって大騒ぎしてる、ラインが閉じてる(生産が無くなった)訳では無い、

    • 匿名
    • 2019年 11月 18日

    EU/NATOが導入したE-3はDRAGONって改修を受けてる 
    2016年~2024年頃
    この改修での運用は2035年を想定してる。
    E-10はキャンセルされた(解析機器はE-3のアップグレードなどで採用された)が、アメリカはE-3の後継機をどうするか? はそろそろ決めるとかなんとか・・・すべてはアメリカの開発意向によって左右されるのでは?

    • 匿名
    • 2019年 11月 18日

    ドローンの概念が拡がっていきますね、早期警戒ドローン、迎撃ドローン、攻撃ドローン、輸送ドローン

    • 匿名
    • 2019年 11月 18日

    川崎P-1を流用してE-1AWACS……という妄言は置いといて、第6世代戦闘機のグランドデザインが出来上がりつつある今、日本が単独のコンセプトを持つとは思えず、そうなるとF-3は無人機オプションとデータリンク、クラウドシューティングは既定路線でしょう。
    逆にそうなると、F-3自体に警戒・管制・電子戦機能を持たせる究極のマルチロールというのもロマンがありますね。F/A/E/R-3という……

    • 匿名
    • 2019年 11月 18日

    US-2の早期警戒機化って発想は駄目なんでしょうか?
    着水や低空飛行で、自由に地上基地になりそうですよね

    • 匿名
    • 2019年 11月 18日

    何だかんだいっても米国はKC-46エアフレームのAWACSを作ると思う

    • 匿名
    • 2019年 11月 18日

    警戒機は無人機で代替出来ても管制機は無理だろう
    結局のとこ予算がないから今後出てくるであろう無人機でなんとかお茶濁したいってだけに聞こえる
    まあ大規模な戦争以外じゃ指揮管制機なんていらんし戦争起こらんだろうって想定なんだろうけどさ
    地域紛争の小競り合いを主任務に軍再編していざロシアが攻めてきたらどうなるんだろうね…

    • 匿名
    • 2019年 11月 18日

    関連して気になるのが艦載機のAEWですね。
    イギリスのSTOVL空母用にオスプレイAEWが開発されるのかと思っていたらもうやめたそうで、この辺りの事情も関係しているかも知れませんね。

      • 全てF-35B
      • 2019年 11月 19日

      オスプレイにレーダーぶら下げて、FCS-3で処理するシステムが簡単につくれないかな。

      • 匿名
      • 2019年 11月 19日

      オスプレイには気密性が無くて与圧無理だからね、運用高度を上げるのは困難(つーことは、給油機とセットでもUS-2に劣る?)
      高度を上げれないと、いくら強力なレーダー積めても見通し線距離が稼げずに警戒範囲が狭くなる
      ということは、ヘリAEWと能力がほとんど変わらないということに
      そこらへんがキャンセルされた原因かと

    • 匿名
    • 2019年 11月 19日

    小型機は性能限られるし無人機=独立型じゃなければ掛かる人手が増えるんだから数でってのは今の次代に逆行してると思うがな。
    中央で管制やる機体を別に用意するならそいつは長時間浮いてる必要あるし大型機が無くなることは無いでしょ。 
    役割上これ以上増えないとかベース機は開発しないで民間流用ってなら理解できるけど小型機やドローンは万能じゃないよ。

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